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黎明媚態

露出系、羞恥系の18禁小説を書いています。関連の同人・版権作品のレビューも書きます。18歳以下の閲覧禁止。

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露出七つ道具『コート』1

 
 突然だけど、私は露出が好きだ。

 いきなり変態発言をされてドン引きなのはわかるけど、少しだけ話を聞いてほしい。そもそも私の露出癖は元々私が原因で発現してしまったのじゃないのだ。というのも、かつて付き合っていた男性が原因だった。
 その彼氏というのが、実際ひどい男で、女を性処理の道具程度にしか思っていないような男だった。『鬼畜』と呼ぶのがあれほど相応しい男もいなかっただろう。
 日常的に殴る蹴るは当たり前。気分が乗らないときに限って向こうはやる気で、酷いときには生理の時でも容赦なく犯してきた。オリモノの臭いに興奮するとか言う訳のわからない理由で、一番酷い日にも関わらず、その一日全裸で過ごしたこともある。当然オリモノは垂れ流しで、血混じりのそれが足を濡らすのがまたいい光景だとか。本当に訳のわからない性癖の持ち主だった。……まぁ、それはいまは置いておこう。聞いていて気持ちのいい話じゃないだろうし。
 まあそんな感じの最低人間だったからヤリ捨てられることも多かった。野外で置いていかれることは度たびだったし、ホテルで乱暴に犯された後に放置されたこともあった。服は無理矢理引きちぎられていたから、かなり際どい格好で帰らなければならなかったものだ。
 あの頃のことを思い返すと、よく警察に捕まらなかったと自分で自分に感心する。人間必死になればなんとかなるものだ。
 それはそれでそれとして、そんな風に過ごしていた私は、当然のように性癖が歪んだ。どう抗ってもそうなってしまうというのなら、それを少しでも嫌じゃない記憶に変えようとするのは、人間としての本能なら当然のことだった。
 そのため、私は乱暴に犯されたり、裸で外に放り出された時も、みじめで悔しくて辛いだけじゃなく、気持ちいい快感を覚えるようになってしまった。最初はもちろん感じてしまった自分自身を殴りつけたくなったものだけど、それからも何度も犯されている内にそれで良かったのだと思うようになってしまった。どうせ嫌な想いをするのなら少しでも気持ち良くなった方がいいと考えていた。
 そんな日々が終わりを迎えたのは、実にあっさりとした理由で、男がバイクで暴走中に電信柱に正面衝突して死んだからだ。
 あれだけ絶対的な力で私を縛りつけていたくせに、実にあっさりと彼は死んだ。その頃私は彼のことを人ではない化け物だと感じていたものだけど、そんなことはなく、彼もただの人間だった。
 かくして、私は晴れて自由の身となったわけだけど……ここで話は冒頭に繋がる。
 長い間、男によって異様な方法によって開発された私の身体は、極普通のセックスでは満足できない身体になっていた。悩んだ末に見出した活路が、露出という方法だった。普通にオナニーをするよりも、ただ裸になって外に出てみる。それだけが私の心臓を高鳴らせ、強い興奮へと導いてくれる。

 だから私は露出が好きだった。
 
 
 
 
~続く~ 
 
 
 


 有言実行。小説を書き始めました。
 まずは書きたかった『露出七つ道具』(あくまで独断のもの)を使った露出話です。
 今回はまだ導入部分なのでほとんど露出らしい露出は出てませんが、次からガンガン書いていく予定です。なお、七つ道具を全て今回の彼女が使うと言うわけではなく、道具ごとに主人公は代える予定です。

露出七つ道具『コート』2

 その日の夜も私はコート一着で外に飛び出していた。
 裸の上から羽織ったコートは、肌触りを吟味して買った特性のもので、滑るような肌触りはその他に何も着ていないのだということを私に思い知らせてくれる。
 だいぶ暖かくなってきたとはいえ、まだまだ肌寒い。コートの裾や隙間から入って来た風が全身を嬲るように通り過ぎて行き、それもまた異常な状態であるということを実感させてくれる一つの要素になっていた。
「……っ」
 我ながら吐き出す息が熱い。肌寒いはずなのに身体は火照っていて、その外気温が心地よいとさえ感じていた。手足は震えているのに、身体だけが妙に熱い。私はふらふらとした足取りで人が行き交う道を歩いていた。すれ違う人達は他人のことなんて全然気にしていないのか、私がどんなにふらついても、どんな顔をしていても興味がないようだった。それは安心できることのはずなのに、どこかさびしいと感じてしまう。
(私って……やっぱりマゾなのかなぁ)
 こんな格好で外に飛び出しておいて、いまさらと思うかもしれないけれど、私自身はあくまでノーマルのつもりだった。露出は確かに好きだけど、それはかつて付き合っていた男に半ば無理矢理植えつけられたようなもので、決して根っからの露出狂ではないと思っている。後天的にたまたまそういう要素を身につけてしまっただけの、ただの女であるつもりだった。
 ましてや、マゾなんてわけがない。いじめられたり痛めつけられたりすることは嫌いだ。侮辱されるのも、馬鹿にされるのも許せない。
 だから私は、あくまで普通の、ノーマルな人間であるつもりだった。
 結局、傍から見てそう見えてしまえば、全部同じなのかもしれないけれど。先天的に変態であるということだけは絶対に認められないことだった。
「……ふぅ」
 一つ息を吐いて足を止める。少し興奮し過ぎて意識が変な方向に飛んでいたようだ。私は気持ちを切り替えて周囲を見渡す。
 そこには極普通の日常が広がっていた。何の変哲も異変もない、ただの夜の町。そんな場所に一人コート一つの姿で立っているということに、ゾクゾクとした背徳感を覚える。
「さて……」
 私が足を止めたところは、ここまで大きな通りが連続して続いてきた、最後の突きあたりになっていた。私の露出散歩コースはここまでだった。ここから先は人気が少なくなるため、いつもここで引き返すことにしていた。周りに人がいないと詰まらないし、こんな格好での一人歩きは危険すぎるからだ。
 引き返すにしても、ただ引き返すのでは芸がない。だから私はここからいつも何かしら自分にギミックを施して帰ることにしていた。
 例えばコートの前を全部開けて行くとか、ワイヤレスのローターをあそこに入れて歩くとか、非常に目立つものを身につけて帰るとか、友達に電話して会話しながら帰るとか……色々だ。
 今回はより刺激のあることをしようと決めていた。
 私は建物の影に入ると、素早くコートをはだけてまずは片腕を抜いた。そして片手で外したボタンを全て留め直し、かなりきつかったけど、もう片方の腕も何とか袖から抜く。
 こうなると、私はコートと言う袋の中から頭だけを出しているような奇妙な体勢になる。こうなると私の両手は外に出せないけど、その代わりコートの中で自分の身体を自由に触ることが出来た。裸の身体を掌で撫でまわす。傍から見るとさぞ奇妙な様子になっているだろうけど、どうせ周りの人は私の姿なんていちいち確認しない。
 不自由な身体だけれど、身体を触るという意味では先ほどより自由を得た私は自分の家に向かって歩き出した。
 町は変わらずいつも通りの日常を過ごしている。
 
 
 
 
~続く~
 
 
 
 

露出七つ道具『コート』3

 なるべく不自然に見えないように、コートの中に入れた腕を出来る限り身体に密着させる。どうしたって少しは不自然に見えてしまうけれど、少しはマシになったんじゃないかと思う。まあ、不自然というなら、そもそも両袖に腕を通していないのは傍から見てもバレバレだから、それがそもそも不自然なんだけど。
 そんな見る人が見れば明らかに異常な姿で、私は人の行き交う道を歩き続ける。さっきこの道を歩いてきた時よりも、こちらのことを見てくる人は多かった。それは明らかに不審そうな顔であったり、腕がないように見えることに対する驚きだったり、色々な感情が見えた。さすがにコートの中が全裸だということまでは気付かれないらしく、侮蔑の感情を滲ませる人はいなかった。
 そのことに安心すると同時に、なぜか私は不満も感じていた。不満を感じた自分自身に愕然とする。
 見つかりたいわけじゃない。蔑まれることなんて望んではいないはずなのに、かつての彼が向けてきたゴミでも見るかのような目が私の脳裏にフラッシュバックする。すると背筋が冷え、代わりにあそこがきゅっと引き締まって熱を帯びる。
(うわぁ……もう……ほんとやだ……っ)
 あの男とは綺麗さっぱり別れた。死別したのだからもう、あの男の影響に囚われる必要なんでないというのに、いまでも私の身体はあいつにされたことを覚えている。忘れられずに、捕えられている。全くイヤになる。いい加減解放して欲しい。ノーマルだった私を返して欲しい。
 こんなみじめな気持になる露出嗜好だって、あの男さえいなければ絶対開眼していなかったはずで。
 そんなことを考えていたせいで意識が散漫になっていた。前から歩いてきた人にぶつかってしまった。
「きゃっ」
 身体が傾いで倒れそうになるのをなんとか堪える。
 危ない危ない。こんな状態で転んだら完全に詰みだ。起きあがることもままならず、変態として捕まってしまうかもしれない。そう考えたらぞっとした。
「あ、すいませ……?」
 ぶつかってきた人が謝罪の言葉を口にしかけて、不自然なところで言葉を切る。私はそれを不思議に思ったけど、すぐその原因に気付く。ぶつかった拍子にコートの向きが変わってしまっていた。本来前を向いているべきボタンの部分が明らかに身体の真横を向いていて、どこからどう見てもぱっと見て不自然な姿になってしまっている。
 一瞬で頭の中が沸騰するかのような羞恥に駆られた私は、大急ぎでその場を離れた。跳ね回る心臓は爆発するんじゃないかってくらいの鼓動を奏でている。走りながらコートの向きを修正し、荒い呼吸を整えながら少し歩調を緩める。幸いさっきぶつかってきた人は追いかけては来てなかった。
 そのことにほっとすると同時に、いまさらながら危ないところだったという実感が湧いてきて身体が震える。そこまで寒いはずじゃないのに歯が噛み合わなくてカチカチと音を立てた。破滅しかけた恐怖に身が竦んでいる。
 はずなのに。
(うそ……)
 私が何気なく触れたあそこはじっとりと濡れていて、滑り気を持った液体がふくらはぎを濡らしていく。確かに私の心はすぐ傍に迫った破滅に怯えていたはずなのに。
 私の身体は、それをどこまでも快感として受け止めてしまっていた。
 
 
 
 
~続く~ 
 
 
 

露出七つ道具『コート』4

 破滅を想像して濡らすなんて、やっぱり私はマゾなのだろうか。私は自分で考えたことに落ち込む。
 結局あの男のせいだと言っているのは言い訳で、自分自身が元々持っている感情なんだろうか。
「はぁ……はぁ……」
 胸が苦しい。右手で胸を抑えると、そこからは痛いほど激しい鼓動が返って来た。
(こんな……こんなに……私は)
 興奮しているのだと触れるだけでわかる。それほどまでに鼓動は激しく高鳴っていた。コートの中が熱い。自分自身の熱気が籠って、汗が滲んで気持ち悪い。
(いっそ、脱いじゃえば……)
 そしたら正真正銘、どこからどうみても私は変態だ。こんな繁華街で裸を晒して歩くなんて、AVくらいでしかしないだろう。あれだってきっと出演料目当ての子が多いはずだ。自分から脱いでいるわけじゃない。そういう企画だから脱いでいる、たぶんそれだけ。私みたいに、何の対価も貰えないのにこんな格好で町中を歩いている女は、ただの変態だ。
 私は熱に浮かされた時のように、涙が浮かぶのを感じていた。胸の奥から後悔の念がこみ上げてくる。
 あの男に脅迫されていた頃から、きっと私はそうだった。変態じゃないと言いつつ、嫌がる素振りを見せつつ、きっと本当はそうされるのが楽しかったのだ。無理矢理されていることだからと、自分に言い訳をして、実はその行為によって与えられる快感を享受していた。初めは本当に嫌だったんだと思いたいけど、本当はそうじゃないのかもしれない。扉を開いたのは彼かもしれないが、私の中にきっと最初からこの衝動は眠っていた。
 あの男が死んだ後も、こんな格好で外に飛び出すのが何よりの証拠と言えるだろう。後悔が押し寄せてくる。どうしてこんなことをしてしまったのか、どうして私は自分からこの衝動に身を任せてしまったのか。もう二度とやるものかと、ふらつく足取りで街を歩きながら私は念じる。もう二度と、こんな馬鹿な真似はしないと。
 けれども、私はきっとまたこうして町に飛び出してしまうのだろう。
 それが何となくわかって、どうしようもなく哀しかった。哀しいはずのに、暗い悦びが消えてくれない。この快楽に身を任せてしまいたいという想いが強まるばかりだ。
 その証拠に、私の手はあそこと胸を触るのを止めようとしなかった。手を動かせばそれだけ周りから見て変になるのに、手が止まらない。柔らかな胸を乱暴に揉み、濡れたあそこに指を突き入れる。じわりと指先に感じる硬い乳首の感触と、さらに濡れて行くあそこの感触はそれぞれ別の感触は私がこの状況に興奮していることを端的に示す確かな事実だった。
 それらの感覚から意識を逸らすことも出来ず、私は二か所を弄ったまま、さらに歩みを進めていった。
 
 
 
 
~続く~
 
 
 
 

露出七つ道具『コート』5

「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
 荒い呼吸が耳に五月蠅い。それが自分の口から絞り出されているものだと気付いて、より深く羞恥が心を抉る。もうすれ違う人達の顔すら私の頭には入って来ない。誰か知り合いがいたかもしれない。それすらわからず、私はただ歩き続ける。あそこを弄る手は止まることを知らず、どこまでも私を高めて行く。
 ぐちゅっ。
 一際大きな水音がして、その音が周囲に聞こえはしないかと不安になる。けれどその不安を上回る喜びが私の頭の中を埋め尽くしていた。
(あぁ……もう……だめっ……)
 ふらついた私は街路樹の一つに身体を預け、そこでさらに手を激しく動かす。通り過ぎる人達がこちらを見て何か言っているような気もしたけど、もう気にならない。
 私はその場所で何度も絶頂に達した。ネオンサインだけじゃない別の理由で視界がぎらぎら光り、明滅し、解けて行く。何を考えているのか、何を想っているのか、わからないまま絶頂に達し続け、気付いたら私はその場にしゃがみ込んでいた。
 荒い呼吸を繰り返し、焦点の合わない視線を動かす。視界は何とか戻りつつあったけど、絶頂の余韻か微妙にぼやけていた。
 ふぅ、と一つ息を吐いた次の瞬間、自分が仕出かした行為に全身の産毛が総毛立つ。
(私、なにしてるの!?)
 こんな人気の多いところで、明らかな異常な行為をしてしまった。一気に身体の熱が冷め、身体が震える。
 恐る恐る周囲を窺って見ると、周りからは明らかにこちらを奇異な目で見る視線が、視線が、視線が、いっぱい私に対して向けられていた。
「ぅ、あぁ……っ!」
 私は震える足を叱咤して、ふらつく身体をなんとか振るい立たせ、その場を離れていく。走りながら腕の片方を袖に通し、とにかくその場から逃げて行く。
(私のバカ私のバカ私のバカ!)
 頭の中で自分を罵りながら走る。よくもまあ襲われなかった、いや、通報されなかったものだと頭のどこかで感心してしまった。最悪のケースもあり得たという恐怖に後悔の念が湧きあがって来る。
 恥ずかしくて、怖くて、けれど気持ち良くて、心が震えた。もう何がなんだかわからない。
 私はもう二度と露出行為なんてするもんかと思いながら自宅への道を急ぐ。一度物陰で立ち止まってコートをちゃんと着直した際、そのコートの下に隠されていた身体は熱しか持っていなくて、いやらしさ満点の状態になっていた。例え気のない人間であろうと、その身体を見せたら落とせるんじゃないかと思えるくらい、私の身体はすごい状態だった。
(あーあ……もう。女の魅力って、こういうのじゃなかったと思うんだけどなぁ……)
 これでは女の魅力というよりは、ただの変態女の痴態だ。
 幾分冷静になった私は、ようやく辿り着いた自宅のマンションに入りながら深く溜息を吐く。
 住民とは誰ともすれ違わないまま、自分の部屋まで辿りつけた。ラッキーだったな、と思ってコートのポケットから鍵を取り出す。
 その時だった。
「おや、あなたもいま帰りですか」
 ぞくりと背筋が泡立つ。隣の部屋の住民が丁度帰って来たところだった。私は一瞬で乾いた口の中に戦きつつ、その人に応える。
「あ、はい……こんばんは……」
 私より数歳年上であろうその男性は、いつも私のことを探るような目つきで見てくるから苦手だった。そんな人とこんな状態で遭遇してしまったことに嫌な予感しかしない。
 鍵を開けてさっさと家に入ってしまおう。そう思って部屋に向き直る。

「風邪を引かないようにお気を付けて」

 そんな言葉が横から投げかけられて、私はさらに背筋を駆け上がる悪寒に身を竦めた。ぱたん、とドアが閉まる音がする。
 なんとか横を向くと、そこには誰もいなかった。隣室の人はもう部屋に入ってしまったのだろう。
 私は奇妙な予感に身体の端から焼かれるような焦燥を感じていた。
 
 
 
 
~露出七つ道具『コート』 終わり~
 
 
 
 


 とりあえずこれで一区切りです。
 一区切りといいつつ、明らかに続きがあるわけですけどw
 このあと大方の予想通り、隣室の男性が主人公の露出行為に絡んできます。命令したり、コートを奪って先に行っちゃったり、車で遠くに連れて行って放置したり。
 その辺りも書きつつ、七つ道具の他の道具を使った話なんかも並行して進めていきたいと思っています。

露出七つ道具『コート』について

案外難産になったというか……コンセプトを決めずにとりあえず書き始めたので偉く軸がブレブレな話になってしまいました。
要反省です。

今回の主人公は非常にどっちつかずな子でした。割り切ってしまえばいいのに割り切れず、変態である自分を否定するせいで余計に苦しいことになるという……変態的な性癖だろうと、持っていることを認めてきちんと向き合えばきっといい気持になれるでしょうにねw
この先の話を書くときはそれを克服するか、あるいは完全に壊れるか……どっちか書けそうな方を書いてみようかと思います。

これからもぼちぼちマイペースに書いていきたいと考えておりますので、宜しくお願いします!
感想、御意見など頂けると嬉しいです。

露出七つ道具『ローター』1

 足下がおぼつかなくてふらふらする。
 私はいつものように、コート一枚の格好で歩いていた。最近は暖かくなってきたかと思いきや急に寒くなることがあるから、コートを着ていても不自然には思われないはずだった。
 暑くなったらどうしようという風に思いつつも、そもそもそんな時期まで露出を続けていたらそれこそ変態じゃないかと思ってしまう。相変わらず私は露出したいのか、したくないのか、どっちかずの半端ものだった。
「はぁ……はぁ……」
 私はなんとはなしにポケットに突っ込んだ手を動かし、『それ』のスイッチを押し込む。とたん、股の間から微弱な振動が駆け上がって来て、私の頭を痺れさせた。
「はふっ……はぁ……はぁ……」
 すぐにもう一度指先を動かしてスイッチを切る。私はもう何度もそんなことを繰り返していた。
 今日は普通にコートの袖に腕を通しているし、前ボタンもしっかりと閉じているから、周りに見た目で気付かれることはほとんどないはずだった。けれど、どうしても周りの視線を意識して、背筋が泡立つような恐怖心が滲んでくる。毎度毎度恐怖を感じるくらいならやめておけばいいのに、私の身体は全く言うことを聴いてくれず、いつもこんな格好で街に繰り出してしまう。
 我ながら、本当に馬鹿馬鹿しい話だった。
 その証拠に、しばらく何事もなく歩いていると、また私の指先が動いて勝手にスイッチを押し込んでしまう。
「あふっ……!」
 ぴりぴりと頭のてっぺんまで振動させられているような、そんな感触がする。股間のそれはどこまでも私の意識を高め、ひたすら快感によって脳を痺れさせていた。

 いま、私の股間には小さな『ローター』が埋め込まれている。

 有線のスイッチで動くローターをあそこの中に入れた上で、そのスイッチをポケットの中に入れていて、いつでもオンとオフを自由に変えられるようにしていた。
 ちなみに私はこういう、いわゆる『おとなのおもちゃ』と呼ばれる類のものをほとんど所有していない。以前付き合っていた彼が遺したものも忘れるために徹底的に捨ててしまったからだ。それからアダルトショップにも行っていない私の家にはこういった類のものは一つたりともなかった。インターネットで小さなローターくらいは買ったけど、それもなるべくばれる可能性を無くすようにワイヤレスのものだった。
 なのになぜ、有線のローターをアソコに入れてこんな風に外を散歩しているのかといえば――少々話は複雑だ。いや、起こったこと自体は単純なのだけど、どうしてそんなことになったのか、いまだに私はわかりかねている。
 ことは、私の家の郵便受けにこのローターが入っていたことから始まる。
 
 
 
 
~続く~
 
 
 
 

露出七つ道具『ローター』2

 ある日、私が会社から家に戻ると、郵便受けに見慣れない封筒が入っていた。
「……? なにこれ?」
 それは封筒にしては結構な厚みのあるもので、差出人の名前は書いていなかった。だがその宛先には『住良清海』という私の名前と住所が、シールのようなものにきっちりと印刷してきっちりと貼られていた。
「なにか頼んでたっけ……?」
 私はたまにネットショップで物を購入することがある。その一つかと最初は想った。注文して何か忘れているプレゼントか何かかと。けれども、よくよく考えてみればそういうところから送られてくるものに、差出人名が書いていないなんていうことはあり得ない。
 その封筒を持って家に戻った私は、とりあえず中身を確認するべく、封筒の口を開ける。
 いまから思えば不用心きわまりない話だけど、それまで不幸の手紙に類する物を受け取ったことのなかった私は、勝手に大丈夫だろうと思っていたのだ。
 結果として、封筒の中から出てきたものは私を混乱と驚愕の渦に叩き込むことになる。
「え……っ、これ、って……!」
 封筒の中から転がり出てきた物に、私の鼓動は激しく高鳴る。
 なぜならそれは、ピンク色の小さな球形のものと、それから延びるコードがつながった単純な形状のスイッチで構成された――ごくごく普通のローターだったからだ。
 私は掌に転がり出てきたそれを、思わず取り落としてしまう。落ちた拍子に動き始めたそれを呆然と見詰める。どうみてもローターだ。
 なんでこんなものが、と思わざるを得ない。
 震動するローターが床と擦れ合い、小さな音を立てている。
「……っ」
 しばし呆然とそれを聴いていた私は、慌ててそのローターを拾い上げ、スイッチを切る。周りに聞こえるような振動音ではなかったと判っているけど、それでも聞こえてしまったのではないかと思わず周りを見渡してしまう。部屋の周りは静かなものだった。
(ど、どうしよう……これ……どういうことなの?)
 私は思わず手に取ったそのローターをマジマジと見つめる。どうみても、何度見ても、ローターはローターだった。
 これをだれが私の郵便受けに入れたのか。一番気になるのはそこだった。ひょっとしたらひょっとして、私の露出行為を見ていたストーカーが仕掛けてきたものかもしれない。そうなるとこの瞬間も見られている可能性が高いわけで……。
 背筋を悪寒が駆け上がった。けれど同時に、私はどうしてだか高鳴る鼓動も感じていた。緊張や恐怖から来るものじゃない。いや、限りなくそれに近いけど、そうじゃない部分がある鼓動の高鳴りだった。
 私は嫌な予感を覚えながらも、そっと自分が履いているスカートの中に手を潜り込ませる。

 その場所は私の予想通り――かすかな湿り気を帯びていた。
 
 
 
 
~続く~
 
 
 
 

露出七つ道具『ローター』3

 そしていま――私は郵便受けに入れられていたローターをあそこの中に入れ、そのスイッチをポケットの中に隠して歩いていた。
 ポケットに入れているとはいっても、当然有線である以上、そこからコードがあそこに伸びている。ぱっと見はわからないだろうけど、明らかに異常であることは明らかだ。
 前にもこうしてローターを入れて膣に入れて歩いたことはあるけど、その時とは全然違う。
「はぁ……はぁ……」
 歩くたび、伸びているコードが太ももに触れておかしな気分になる。言ってしまえばそれだけの違いなのに、意識する度合いが全然違った。
(……っ)
 一瞬力が抜けかけて、足元がふらつく。私は慌てて体勢を立て直して、膣に意識を集中させた。じゃないとぽろりと落としてしまいそうだったからだ。コードで繋がっているからこそ、もしも抜けたら明らかにおかしなそれがぶら下がることになる。それだけは避けなければならなかった。
 ちなみに、いま私は人気のない住宅街を歩いていた。前回のことがあって駅前への道は行きづらかったということもあるし……もしも、私を見張っているストーカー的な存在がいるのなら、こういうところに来れば存在を確かめられると思ったからだ。
 誰かがついてくればすぐにわかる――そう思っての道のりだったけど、想像以上に周りは静かだった。
 暗い街並みは完全に夜の風情で、人気がほとんどない。寝静まっている時分だから仕方ないのかもしれない。
(……襲われたらどうしよう)
 ふとそう思った。ストーカーじゃなくても、変質者がもしもいたら。
 いまさらながら私は危険なところに足を踏み入れてしまっていることに気付く。
 やっぱり人気の多い道に戻ろうか、とそう思った時だった。

 カツン、カツン。

 そんな靴音が響いたのは。思わずびくりと身体を震わせて周りを窺う。かなり遠くの角をサラリーマンのような人が曲がって来たようだった。
 私は焦る。かなりその人は歩く速度が速かった。このまま普通に歩いていたら追い付かれてしまう。かといって走るのも不自然過ぎる。
 どうするべきなのか、混乱した頭ではすぐに答えが出せない。
 私は混乱するまま、すぐ傍にあった自販機に近づく。明るい場所にいれば襲われることはないかと思ったのだ。ここなら遠くからでもよく見える。警戒するかもしれない。
 さらにジュースを選ぶ振りをしてやりすごそうというわけだ。これなら通り過ぎるまで待っていても不自然じゃない。
 だけど、それはまさに諸刃の剣だった。
(あ……っ、しまった、あかるすぎ……っ)
 俯いた視線にまぶしいくらいの素足が見える。靴は履いているけど、コートの下は裸なのだ。コートの丈はロングというほど長くはない。丸見えになるレベルじゃないにせよ、かなり肌の露出が激しくて目立つ。暗い中、光に照らされていればそれはなおさらだった。
 気付かれてしまう。
 焦る私に構わず、サラリーマンの足音はどんどん近付いて来ていた。
 
 
 
 
~続く~
 
 
 
 

露出七つ道具『ローター』4

 ぴたり、と。
 近づいて来たサラリーマンの足音が私の真後ろで止まった。心臓が壊れそうなほど激しく波打つ。視線が私の身体に向いているのが背中越しにも感じられる。男の人の、無遠慮な視線が体中を舐めて行く間隔に、私は嫌悪感を感じつつも、何もすることが出来なかった。
「――おやぁ?」
 胡乱げな声が投げかけられたと思った瞬間、いきなりコートのお尻側の布が持ち上げられ、裸のそれが外気に触れる。
「…………っ!」
 思わず上がりそうになった悲鳴は、口を覆ってきた男の手に吸いこまれた。
「おっと。悲鳴はあげない方がいいぞ。こんな格好でいるのは、お前の意思だろ?」
 声が、出ない。
 男の手は口から外れているのに、私の身体は全く動かなかった。
 口から離れた男の手は、私の身体を無遠慮に触っていく。ただでさえ緊張していた身体はその刺激に思わず震えてしまう。
「上も何も着てないな……コート一枚か。露出狂だな」
 お尻側のコートをめくっていた男の手が、するりと服の中に入って来て、前の穴に入っていたローターのそれに触れる。
「ぁっ」
「おやおや、前にはおもちゃ入りか。これはまた随分とレベルの高い変態なことで」
 揶揄するような口調。私の羞恥は、恐らく男の思うとおりに、煽られ、燃え上がる。
 男の手は、びっしょり濡れている私の秘部をまさぐっていた。
「ははっ、もう濡れまくってんじゃねえか、変態女」
 耳に当たるその声は、私という存在を見下し、貶し、貶め、人間としての尊厳も何も認めていない、まさに人間以下の存在に向けられる侮蔑が込められていた。
 罵倒でしかないはずの、その侮蔑の言葉を聴いた瞬間、私の乳首は痛いほどに固くなり、あそこの奥がきゅうと締めつけられるような感覚がした。全身が熱に浮かされたように熱くなり、視界がぐにゃりと歪む。それは、非常に強い快感を覚えてしまったがゆえの減少だった。
「う、ぁ……っ」
 喉の奥が押しつぶされたようで、出そうと思った声が全然出ない。悲鳴をあげるあげないの前に、高まり過ぎた快感で気が狂いそうだった。
 男の囁きが耳に入り込んでくる。
「犯してやるから――コートを脱いじまいな」
 その悪魔の囁きとも言える命令に、私の身体は――

 かつん、と足音が私の背後を通り過ぎる。

 その音に、思考が揺らぎまくっていた私は意識を現実に取り戻す。
 私が茫然としている間に、サラリーマンは私の背中を通り過ぎて、どんどん離れて行っていた。
(ゆ、ゆめ……?)
 昼ではないけど、白昼夢と同じような物だったのだろう。妄想に意識を完全に浸してしまっていた私は意識を取り戻すことが出来た。
 通り過ぎたサラリーマンの背を見る。妄想の中と違い、その人は振り返ることすらなく、そのまま歩いて住宅地に消えて行った。
 ぶわっ、と今更ながら汗が噴出して、凄いオーガニズムが襲ってきた。
「っ、うあぁ……っ!」
 上がりそうになる絶頂の悲鳴を、両手で抑えて押し殺しつつ、私は目の前の自販機に倒れ込むような形で凭れかかり、そのまま座りこんだ。
 ただの妄想のはずだったのに、私の身体はそれに反応して感じ切ってしまっていた。絶頂し続けているような、異様な感覚に捕らわれて動けない。
 もう周りのことなんて気にする余裕もなく、私はコートの前面を大きく開いて、M字開脚で全てをさらけ出しながら、自販機の灯りに照らされながら、オナニーに耽った。
 
 
 
 
~続く~
 
 
 
 

露出七つ道具『コート』5

 自動販売機に背中を預けたまま、私は一心不乱にオナニーに耽る。もうすっかり濡れそぼったそこは、まるで熱いバターのようなとろけた感触で私の指を包み込んでいた。中に入っているローターが、指に押されて動いてさらに大きな快感を生み出す。
「んぁっ、はぁっ、ふぁぁっ」
 どこまでも高まっていく感触に声が止まらない。唇を噛みしめて声を殺すけど、完全には止まってくれなかった。私の中に入っているローターは小さなもので、振動も大したことはないはずのものだったのに、その振動によってまるで私の全身まで震えているようだった。それくらい、私はその振動を意識していたし、その場所のことを意識していたのだ。
 誰かが通りかかるかもなんて危惧も、その時の私の頭にはなく、ただ、うずくあそこをかき回したいという想いしかなかった。そしてその解き放つ快感のすさまじさは言葉では言い表せないほどで、大声をあげて喘がなかっただけ、私はまだ理性を遺していたのかもしれない。
 何度も何度も、自分の指でイってはまた快感が高まり、再びイって快感に流される。無限ループにも似た何かに私は完全に捕らわれていた。
 その終わることがないと思われた快感の渦は、疲弊しきった私の身体が落ち着くことでようやくの終着を迎える。
 終わりにたどり着いてしばらく、私は一歩もその場から動けなかっった。かなり危ない格好をしているという自覚はあったけど、快感にとろけきった頭では何も考えられなかった。
 余韻に浸っていたのがどれくらいの時間だったのか、腕時計すら持たない私にはわからなかったけど、ようやく動ける程度に回復した私は、まだ震える足を奮い立たせてその場から離れる。
 足腰ががたがたで、とにかく家に帰りたかった。


 翌朝。
 私は体中の筋肉痛で呻いていた。さすがに絶頂に達しすぎたらしく、普段使わない筋肉が悲鳴を上げている。
「あー……まあ、今日が休みでよかった……」
 家で倒れていても誰も問題にしない日だ。これがもし普通の平日だったりした日には、私は相当大変な目にあっていたことだろう。まさか露出オナニーのしすぎで筋肉痛になったなんて言えないし。
 そんなこんなで私が身体を休ませつつ、自宅でくつろいでいると、不意に玄関の方から郵便物が来た音がした。ここのマンションは別に古いというわけじゃないけど、最近のマンションなら必ずある郵便を受けとるための郵便ポストのスペースが無く、ドアに手紙を直接入れるためのポストがある。オートロックじゃないということでセキュリティ的には問題があるけれど、新聞や郵便物をいちいち一階まで取りに行かなくていいので重宝していた。
(……? 朝刊はとっくに取ったし……郵便がこんなに朝早く届くわけないわよね)
 なんとなく不思議に思いつつ、私は悲鳴をあげる身体に鞭打って玄関まで来た郵便物を確認しにいく。
 ポストを開けて中身を確認してみると、メッセージカードを入れるような、白い封筒が入っていた。
「……? なにこれ」
 割と重さが感じられるそれを取り出した私は、表と裏を確認してみた。
「あれ……? 宛先も差出人も、書いて、ない……?」
 この時点で、何か嫌な予感は感じていた。
 私はおそるおそる封筒を開けて、中身のものを取り出してみた。
 予想以上に沢山入っていたその中身は――

 私の、露出している姿だった。

 それを理解した私の思考が止まる。息が止まる。心臓が止まる。
 取り落とした大量の写真は、全て私の痴態を映し出しているものだった。
 マンションを出るコートを着ている私、繁華街を不自然なコートの状態で歩く私、歩いているらしく服の裾がはためいて危ういところまで見えている私、ピンク色のコードがポケットからあそこに伸びている私。
 そして、自動販売機にもたれかかりながら、オナニーに耽っている私。
 私の全てが暴き出されていた。
 足下に写真が散らばる中、私はただひたすらに呆然と立ちすくんでいた。
(そうだ、忘れていたけど、あのローターのことといい、間違いない)
 呑気と言われても仕方ない。私を客観的に撮っている写真を見たことで、私はようやく確信することが出来た。

 私を見ている人がいる。
 
 
 
 
~露出七つ道具『ローター』 終わり~
 
 
 

露出七つ道具『サングラス』1

 私の家に、露出していた時の写真が届けられてから数日ーー私は普段通りの生活を過ごしていた。
 正直、もう人生が終わったような気持ちでいたために、喜ばしいことのはずなのに、気持ち的には拍子抜けだった。周りに自分の性癖が知られたということもなさそうで、いつもの日常がすぎていく。
 写真が確かに存在している以上、自分の妄想ということはないはずだ。確かにあの時、私を撮った人がいるのだけど、その人は一向に私の前に現れる気配も、なにかを要求してくる様子もなかった。
 宙ぶらりんの気持ちで過ごすのは精神的によくなかった。いっそ、その写真を撮影した人が目の前に現れてくれれば……と思ってしまう。けれど、実際そうやって現れられたら人生が終わってしまうのと同義だろうから、いまの方がいいのかもしれないけど……そんな風に考えては悶々とする日々を過ごしていた。
 いずれにしても、なにかしらの結果は出て欲しい。
 
 
 そんな風に悶々と過ごしていたある日、わたしは電車を乗り継いで遠くの町へ来ていた。
 相変わらず素肌の上にコートを一枚羽織っただけの姿だったけど、今回私はもう一つアイテムを装備していた。
 それは、目元を隠すサングラスだ。人は人を認識する時、目元でかなりの要素を決めていると聞く。それならば、こうして目元を隠してしまえば、素性が知れる可能性は激減すると考えられた。いまのいままでそれをしていなかったのは危険だったとしかいえないけれど、こうしてサングラスというアイテムを装備した以上、より過激な露出に挑戦してみたいと思うのは至極当然な思考だろう。
 そこで私は、確実に人に見られてしまうであろう露出に挑戦することにした。わざわざ遠くの町まで出てきたのも、それが理由だ。確実に見られてしまう以上、下手に住居から近いところで行動に起こすわけにはいかない。ある程度離れる必要があった。
 私はその目的の場所の近くまで来て、いまさらながら激しく心臓が高鳴っているのを感じていた。ここまでは春先にコートということ以外は不自然にならないようにつとめてきた。けれど、ここからは違う。
 辺りはすでに薄暗く、露出のために必要なシチュエーションは整っている。
 今回の計画はこうだ。コンビニの外でコートを脱いで裸になり、手に財布だけ持って店内に入る。そして雑誌、飲み物、おにぎりを買って外に出てくる。これだけのことだ。その三つを選んだのは基本的にこの三つがおいてある場所は店内をぐるりと一周しなければ取れないものだから。だけど、冷静にやっていけばそんなに長い時間はかからない。早ければ一分以内で出て来ることが可能だろう。仮に警察に通報されたとしても、その前に逃げ出すことが出来るはずだ。
 バカなことをしているとは思う。なんでそこまで考えて露出行為をしなければならないのか、頭の冷静な部分が自分を責めているのがわかる。けれど、どうしてもやめられなかった。
 私は元彼のせいでこういう性分になったと疑ってはいなかったけれど、ことここに至ってしまえばもう認めてしまわざるを得ない。私は露出という変態行為をして快感を得る変態であることを。
 それが元彼に植え付けられた性癖であるにせよ、そうでないにせよ、いまの私は確かに変態なのだと。
 認めてしまっていた。
 思い切って認めてしまったためか、私は少しは気持ちが楽になっていた。いまはただ、純粋に気持ちよくなることへの探求心しか自分にはない。
 私は周囲を見渡し、コンビニの中もこっそり確認し、タイミングを見計らってコートを一気に脱ぎ捨てた。
 
 
~続く~
 
 

露出七つ道具『サングラス』2

 脱ぎ捨てたコートを、同じく脱いだサンダルの上に置いて、コンビニの看板の裏に隠し、私は身体にサングラス、手に財布だけを持った出で立ちでコンビニの入口へと向かった。素足を通してコンクリートのざらざらした感触が感じられる。心臓がドキドキ跳ねまわってうるさい。頭に反響しているみたいで、いまにも意識が飛んでしまいそうだった。
 聞いた話じゃ、露出っ子の中には財布すら手に持たず、コンドームに入れた小銭を財布代わりにして身体の中に突っ込んで、会計の時にコンビニ店員にそれを取り出してもらうなんてことをする人もいるみたい。とてもそんなことを真似は出来ないけど、いつかはそんなこともしてみたいような、そんな危険な衝動があるのを、私は密かに感じていた。
 私がコンビニの入口の前に立つと、ドアが勝手に開いて大きな音を鳴らす。その音にリターンしたくなる身体をなんとか抑えて、私はコンビニの中に足を踏み入れた。
「いらっしゃいませー」
 やる気のないコンビニ定員の声が聞こえてくる。どうやら品出しをしているらしく、カウンターの中に店員がいなくて、すぐに見られることは避けることが出来たみたいだった。これは幸運だと思いながらも、どこか残念に思う気持ちも存在していて、私は顔に熱が集中するのを感じる。
(と、とにかくいまは計画を実行することだけを考えて……っ)
 こんなところでいつまでもじっとしているわけにはいかない。いつ誰が来るかもわからないし、遠目から見ても私の姿は丸見えのはずなのだ。何事かと集まって来られたらそれこそ大変なことになる。
 私はコンビニの中に入って、まずは入口脇の雑誌コーナーに近づく。そこは外から見える位置にあることが多く、この店も例にもれずにそんな場所にあった。雑誌が置いてる台でいくらかは隠れるとはいえ、外からは足先から頭のてっぺんまで丸見えだ。いまは中より外の方か暗いので、私の姿がガラスに映りこんでいた。サングラスだけを身に付けた裸の女の姿が見える。私はそれが自分自身だというのにぞくぞくとした興奮が高まるのを感じていた。
 自分から視線を何とか引き剥がし、買う雑誌を物色する。
(……ファッション誌……もおかしいよね。何も着てないのに)
 そんな風に考えてしまったからだろう。私の視線は成人向けコーナーに向いた。その中で、露出、というキーワードが含まれていた雑誌を手に取った。
(やっぱり……私が……いや……露出狂が買うなら、これよね)
 ドクンドクンと心臓が高鳴る。姿からしてアウトなのだけど、もうこんな雑誌まで買うなら、完全に変態でしかない。
 私は余計に高まる鼓動を感じながら、次の目的である飲み物を買うべく、店の奥へと向かった。
 ここではそんなに悩む必要はない。アルコールにしようかと思ったけど、いまさらお酒の力で酔うまでもなく、私は十分露出に酔っていた。
 だから普通のお茶を手に取った、のだけど。
 そこで予想外の、いや、予想はしていた事態が起きた。

 店の入り口が開いて、新しい客がコンビニに入って来たのだ。
 
 
~続く~
 
 

露出七つ道具『サングラス』3

 それは予想していたはずの出来事だったはずなのに、私は思わず身を縮めてその場にしゃがみ込んでしまった。
(うそっ、ほんとに入ってきた……っ)
 焦りが興奮を覚ましてしまう。こんなところでうずくまっていても意味がないというのに、私はすぐにその場から動き出せなかった。
 幸い、入ってきた人はさっき私がいた雑誌コーナーで立ち読みをし始めたようで、こちらに来る様子もこちらに気づく様子もない。
 ほっとすると同時に、このままだと店から出るときに絶対その人に見られてしまうことを悟る。
(元々、絶対見られるつもりだったけど……まさか、こんな……)
 見られる。見られてしまう。
 動揺で薄らいだ興奮が少し戻ってきた。その興奮に身を任せ、私は意を決して立ち上がる。さっきよりもずっと心臓がどくんどくんと高鳴って、自然と足を内股にしてしまう。
(だめ……っ、こんなんじゃ……!)
 私は意識して普段通りの姿勢を保つ。もちろん手で隠すのなんてもっての他。
 右手に雑誌、左手にペットボトルを持って、体の横に伸ばして、その位置を保つ。
 いま、私の体を隠すものは何もない。胸を張って、背筋を伸ばして、ふらつく足取りで店内を少しずつ移動する。
「はぁっ……はぁっ……」
 呼吸が荒くなって、その呼吸音で立ち読みをしている人に気づかれてしまうんじゃないかと焦った。店内にはBGMも流れているし、気付かれることはないだろうと思っても、意識してしまう。少なくとも自分自身の耳には十分うるさかった。
(残り……おにぎり……はやく……買わないと……)
 なんとか体を動かしておにぎりのコーナーに向かう。
 このとき私はすっかり忘れていた。
 最初店員がカウンターにいなかったわけを忘れていた。見えない位置で品出しをしているはずのコンビニ店員がいるはずの事実を。すっかり忘れていたのだった。
 コンビニ店員は、棚の角を曲がってすぐの位置、棚の下の方の品物を補充していた。棚の前にしゃがみこんで、手際よく商品を棚に入れている。
 そのとき、私は完全にその人のことを失念していて、まさか棚を曲がってすぐそこにいるとは思わなかった。完全に虚を突かれた。
「あっ……」
 思わず手で体を隠しそうになるのを咄嗟に堪えたけど、驚いた際に声が出るのは止められなかった。
 そのかすかだけど確かな声に、その人はもちろん反応する。

 何気なくこちらを向いて、その眼が私を捉えた。
 
 
~続く~
 
 

露出七つ道具『サングラス』4

 その店員は、一瞬何が起きたのかわからなかったみたいだった。
 目が軽く見開かれていて、体の動きは止まっている。完全に虚を突かれた状態だ。それはそうだろう。誰だって、いきなり目の前に裸の女が現れたらびっくりするに決まっている。
 店員は改めて「いらっしゃいませ」を言おうとしていたらしく、口を半開きにした状態で固まっていた。
 私は私で、いきなり見られてしまったことで身動きが取れなかったのだけど、彼よりも先に動き出すことが出来た。
 あくまでも何気ないふりをしてその彼の傍を通り過ぎる。何気ないふりをしているけど、心臓の方は破裂寸前の状態だった。いつ爆発してもおかしくないだろう。それくらい鼓動が速く、大きく、強くなっていて、体中が心臓になってしまったんじゃないかって思うくらいに心臓が暴れていた。
(……っ、くぁ……これ……が……っ)
 自分の望んでいたこと。人に見られるという最高の快楽。
 店員はどう感じただろう。変態が現れたと思っただろうか。迷惑な客だと思っただろうか。ラッキーと思っただろうか。警察に連絡しようと考えているだろうか。
 そんなことを考えるとますます興奮が高まってきて、頭の中が沸騰しそうなほどになっていた。足を前に踏み出しているのかすら定かじゃなくなるほど、私の意識はぼんやりとしている。
 私はほとんど惰性で、おにぎりのコーナーにたどり着く。種類なんて見てられない。適当に目の前にあったおにぎりを掴む。
(あっ……視線、感じる……っ)
 たぶんさっきの店員がこちらのことを見ているのだろう。背中にチリチリとした感覚があった。穴が空くほどとは言わないけど、よほど凝視されているのだろう。私はその視線を感じながらレジに向かう。
 レジの前に立つと、いよいよ自分を隠すものは何もなくなった。店内のどこからだって見えるだろう位置で私は店員が来るのを待つ。さっきの店員が放心してたらどうしようかと思ったけど、幸いすぐにレジに入ってきてくれた。正面に彼が立つ。
「い、いらっしゃいませー」
 学生バイトだろうか。大学生くらいの彼は、私の方にちらちら視線を向けながらも、職務を忠実にこなしていた。
 私はサングラスをかけていることを生かし、手元の財布をイジるふりをして、上目遣いでこっそり彼の様子をうかがった。彼は私の視線が財布に行っていると思ったのか、さっきよりもあからさまに私の方を見ている。その興味深そうな視線に、私は興奮の炎がさらに燃え上がるのを感じていた。
 もっとレベルの高い露出っ子なら、この上さらに彼に協力してもらってあからさまな変態露出プレイをするのだろうけど、いまの私には彼の視線から逃げないように達続けるだけで精一杯だった。
「745円に、なります」
 視線を、感じる。それがとても気持ちよかった。
 私はわざと小銭入れの中から小さなお金を探して、きっちり745円を支払った。少しでも長く彼の視線を感じていたかったからだ。
 袋に商品を詰めてもらっている間に、私は背後に人の気配を感じた。さっき雑誌のところで立ち読みをしていた人が私の背後に並んでいるらしい。不意打ちだったからこっちはその視線が気になってしまって気が気じゃなかった。目の前の店員は顔が見えているから戸惑っていることが確かだけど、後ろに立っている人はどういう顔をしているのかわからないのだから。呆れているのかもしれないし、嫌悪しているのかもしれない。それすらわからない人の視線が背中から向けられている。
 いきなり二人もの人に思いっきり見られてしまったことで、私はどうにかなってしまいそうだった。
 だけど、それで終わりじゃなかったのだ。
 またコンビニの入り口が開いて、

 ぞろぞろと、複数の男性が入ってきたのだから。
 
 
~続く~
 
 

露出七つ道具『サングラス』5

 まさかそんなに一度にたくさんの人がやってくるとは思わなかった。
 近くの会社の業務が終了したのか、それとも何か他に原因があるのかはわからない。けれど、それだけたくさんの人がやってきたという事実に、私は本気で狼狽してしまう。
(やばい、やばい……一番恐れてた状況に……!)
 私が一番気をつけるべきだと思っていたのは、複数の男性グループだった。一人でなら何もしてこないかもしれないけど、複数仲間がいると下手をすれば私を襲おうとするかもしれないから。
「……うぉ!?」
「どうしましたせんぱ……うぉう!?」
 私の姿を見て、入ってきたばかりの人たちが声をあげる。明らかに会社帰りと思われ、かっちりとしたスーツを身に纏っていた。
 その様子を見た私は、切り抜けられるかもしれないと感じる。至って真面目な会社員という感じだから、こっちが油断さえ見せなければ……厄介者に触れようとはしないはず。
 意を決して私は会計の終わった商品を手に取り、あえて堂々と彼らに向かって歩いていった。体を隠すことはせず、いかにも慣れた露出狂だとアピールするかのように、堂々と歩く。サングラスで顔はわからないはずだし、この対処がきっと正解のはずだった。
 案の定、入ってきたばかりの彼らは怯むばかりで、こちらに何かをしようとする人はいなかった。ただ、その視線だけが興味深そうに私の体を見つめている。その視線に感じてしまいながらも、私はなんとか彼らの横を通り抜けることに成功する。
 コンビニのドアを開き、急いで明かりの届かない裏側へ避難する。幸い、誰かが追いかけてくる気配はなかった。
(お、終わった……っ)
 どくんどくんと跳ね回る心臓を押さえて私は荒い呼吸を繰り返す。たくさんの人に見られてしまった。視線がいまでも私の体を撫でているようにも感じる。
(やばい……っ、もう、我慢出来ない……!)
 このままここでオナニーに興じてしまいたかった。このままここで、どこまでも高まりたかった。
 けど、ここでやっていたらさっきの人たちがやってくるかもしれない。速く逃げないと、せっかく何事もなく逃げられたのに、意味がなくなってしまう。
 私は自分の欲望にあらがいながらも、店の看板に向かう。私が脱ぎ捨てたコートとサンダルがそこにはある。それを回収して、速く逃げなければならない。
 けれど、それは叶わなかった。

 確かにそこに置いてあったはずのコートがなくなっている。

 心臓が凍り付く。私は夢なら冷めて欲しいという気持ちを込めてもう一度見てみたけど、そこにコートはなかった。
(うそ……っ、誰かに、持っていかれ……た……?)
 コンビニの中での露出に気を取られていて、まさかこんなことが起きるとは思ってもいなかった。最悪の事態に目の前が真っ暗になる。
(電車になんて乗れないし……このまま、家、まで歩いて……? 何時間かかるの……?)
 そもそも道なんてわからない。帰れるかどうかも怪しい。私はその場で気を失ってしまいそうなほど、絶望感に包まれた。人生が破滅していく感覚に包まれる。
 その時、ふと、サンダルの下になにやら紙が置いてあるのを見つけた。もちろんさっき私が脱いだ時にはなかったものだ。嫌な予感を覚えながらも、私はそれを手にとって見てみる。
(『露出狂の君にさらなる楽しみをプレゼントしよう。私の指示通りに動けばコートを返してあげよう』……やっぱり……いたんだ……)
 写真が郵便受けに投函された時からわかっていたことだけど、やはりあの写真を撮った人間がいた。そして、私の思っていた通り、その人がついに直接私に命令を下してきた。
 私は恐怖を感じながらも、さらに興奮が高まるのを感じた。どうしようもなく私は変態なのだと、まざまざと感じさせられた気分だ。
 観念した私は、手紙の続きに目を通す。

 そこには、私をさらに辱めるような命令が書かれていた。
  
 
~露出七つ道具 『サングラス』 終わり~
 

露出七つ道具『手錠』1

 顔もわからない誰かからの命令――それを私は実行せざるを得ない状況になっていた。
 コートを奪われて、何も着る物がない現状では、とりあえずはその誰かからの命令を実行してコートを返してもらわなければならない。
 だから、多少無茶なことでも実行しなければならないということはわかってる。
 けれどさすがにその命令をすぐに実行する勇気はなかった。
 私の脱ぎ捨てたサンダルの下に残されていた手紙には、こんな命令が書かれていた。

 『看板の裏にかけてある手錠を後ろ手にかけ、コンビニから真っ直ぐ南に降りた先にある公園に迎え』

 看板の裏に飛び出した釘に引っ掛けるようにしてその手錠はあった。
 まさか本物ではないと思うけど、かなり重くてがっしりした作りをしていて、容易なことでは壊れそうにない。
 鍵は一緒に置かれていなかったから、これをかけてしまったらいよいよ自分の力では外せないということだ。これを掛けるということは外してもらうために脅迫者とコンタクトを取らなければならないということだ。いまならまだ、なんとか自力で逃げることも可能かもしれない。けれど、それは分の悪すぎる賭けだった。
 こうして悩んでいる間にも、人が近くを通りかかるかもしれない。さっきコンビニ内ですれ違った人達が出てくるかもしれない。
 迷っている時間はなかった。


~続く~

露出七つ道具『手錠』2


 ふらつく足取りではろくにスピードが出せない。
 私は転ばないように細心の注意を払いながらも、少しでも早く前に進んでいた。ジャラジャラという鎖の音がうるさい。その鎖を手で掴むと少しはマシになった。
 ほっと一息を吐きながらも、安心している暇はない。とにかく急いで一歩でも前に進まなければならなかった。

 私は裸にサングラスとサンダル、そして、後ろ手にかけた手錠だけの姿で町中を歩いていた。

 結局、私はあの手紙を書いた謎の人物に言われる通り、後ろ手に手錠をかけてしまっていた。つけてから気づいたのだけど、手首に当たる部分には少し柔らかいスポンジみたいな物が仕込まれていて、手首が傷つかないようになっている。どうやらSMプレイ用の手錠のようだった。
 その手錠によって私は身体を隠すことも出来ず、背筋を伸ばし気味にして歩かなければならなかった。ちなみに、コンビニで買った商品などはもったいなかったけど捨てて来ている。財布も小銭のみを入れた安物だったので一緒に捨てた。指示が書いて合った紙も破いて捨ててある。
 つまり、私は本当にいま身一つに手錠をかけた状態で歩いている。
 本当はそこまでする必要はなかったのかもしれないけど、そうしてしまった。私は本当にバカというか、変態だと思う。
 思えば、こうして完全に全裸で町を歩くのは初めてかもしれない。なんだかんだでコートは着ていたし、脱ぎ捨てることがあっても、それはさっきのコンビニ内露出のように特定の場所の中だけで、こうして全裸のまま移動するということはなかった。
 そんな初めての全裸露出歩行が、まさか手錠をかけた状態で行うことになるとは思わなかった。
(うぅ……幸い、人通りはそんなにないみたいだけど……)
 向かっている方向は住宅街なのか、暗くなってからは一気に人通りが減るみたいだった。正直不審者が現れそうで怖かったのだけど、考えてみれば自分も明らかに不審者だ。住民などに見つかって通報されたりしないよう、周りを見渡し、聞き耳を立てながら私は歩みを進めた。
 カツカツと自分のサンダルが地面を叩く音がやけに大きい気がして、気が気じゃなかった。
(……痴漢に見つかったらどうなるんだろう)
 そんなことを考えてしまう。いま私は手錠を後ろ手にかけた状態で、抵抗が出来ない状態だ。全裸である以上、大声を出して人を呼ぶということも出来ない。
 痴漢に抱きつかれて、声も出せないまま、抵抗も出来ないまま、執拗に犯され続けるのだろうか。
 その想像をしてしまった私は、いまさらながらとんでもない行為を自分がしていることに気づかされてぞっとした。そんな風に犯されるなんてまっぴらごめんだ。
(早く……早く……っ)
 足を少しでも早く進めようとすると、バランスを崩して倒れそうになる。慌てて体制を立て直しつつ、私は急いで見えてくるはずの公園を目指した。
(けど……公園にたどり着いたとして……どうなるんだろう)
 コートと鍵がおいてあるんだろうか。それとも、脅迫者が現れた私を犯すんだろうか。
 出来ればこのまま私に干渉してくることなく、消えてくれればいいのだけど、そんなに甘くはいかないだろう。
 私は絶望的な気分になりながらも、身体の奥が火照るのを感じていた。本当に私の身体はどこまでも変態だった。こんな絶体絶命な状況でも興奮できるというのだから。
 そうしてようやく私は指示されていた公園にたどり着いた。
 公園に来て、どうすればいいのかと思ったけど、入り口の傍に白い紙がおかれているのを見て、慌ててその近くにしゃがみ込んで内容を確認する。
『公園の男子トイレに迎え』
 そこで待ちかまえているんだろうか。
 私はいよいよ脅迫者と対面することを覚悟する。後ろ手で取りづらかったけど、紙は回収して近くのゴミ箱に捨てておいた。もしもあれを知らない人が見て、男子トイレに来たら大変だ。
 公園の中は静かなものだった。木々のざわめきが不吉なものを感じさせる。
 ここの公園は割と広く、背の高い木が沢山植えてあるから視界は悪い。周りから見られる心配はないけど、夜になると鬱蒼としていたかなり危険な感じがした。
「……っ」
 生唾を飲み込んで、公園の中に入り、トイレを探す。
 生い茂った木々に埋もれるようにしてそのトイレはあった。一応定期清掃は入っているみたいだけど、どうしても汚れた場所であるという感じは否めない。
 私は周囲を警戒しながら、トイレの中に足を踏み入れた。外から見たイメージよりは綺麗な様子だった。小さな明かりが灯っていて、中を辛うじて見渡せる。こういうトイレには付き物の虫もいなかった。ちょっとほっとする。虫は苦手なのだ。
 私は意味もなく足音を忍ばせてトイレの中を歩き始めた。
 入ってそうそう、視界の端を人影が過ぎった気がして、思わずそちらを見て。

 鏡に映った自分自身の姿を見た。


~続く~

露出七つ道具『手錠』3

 白い肌をこれでもかと露出して、サングラスで目を隠し、後ろ手に回した両手を、無骨な手錠で繋がれている女。
 固くなった乳首をぴんと主張し、火照った身体を示すように肌は少し赤みがかっていて、あそこからは膝にまで到達する勢いでテカテカ光る愛液を垂れ流している。
 どこからどう見ても変態。
 変態としか形容できない姿。
「ふっ、く……あぁ……っ」
 ゾクゾクと快感が背筋を這い上がってきて、頭が痺れる。身体全体で淀んだトイレの空気を感じる。手が自由に使えたならば、ここで自慰を初めてしまっていてもおかしくない。
 鏡の中の自分に目が釘付けになっていた私は、ふと、その鏡が設置された洗面台の上にまたも紙がおかれていることに気づいた。
 今度はどんな命令が待っているのかと、その紙を確認する。
『奥から二番目の小便器で用を足すこと。立ったままで行え』
 場所の指定がトイレだったから、そう言われると覚悟していたけど、いざ言われると、改めて心臓が鼓動を立て始める。
「……ここで……? しろって……」
 男の人がやるように、立ちションをしろというのだろうか。女の私に対してひどい命令だった。
 それでもいまの私に命令を無視する選択肢はない。私は奥から二番目の小便器に近づいた。どうして奥から二番目と指示があったのか不思議だったけど、よくよく観察してみると、明らかに公園にあるような小便器には似つかわしくない機械がその小便器には設置されていた。
 それは、どうやら小型カメラのようだった。それによって私の痴態を撮影しようという魂胆なのだろう。また脅しに使えるような材料が増えてしまうのかと想ったけど、もはやそんなことを考えても意味はない。すでにもう遅い。
 だから、私は素直に小便器に近づき、男の人がそうするように仁王立ちになって腰をそれに向けて突きだした。
 そして、力を込めて、放尿をし始める。
 ここまで全裸で移動してきたせいか、その勢いは中々のものだった。一本の線になって放出した尿が小便器へと注がれていく。
「ふああ……」
 排泄の快感はいつだってあるけども、露出しながらのそれの開放感はかなりのものだった。気持ちよすぎて想わず声が出てしまう。
 案外うまく出来たと想うけど、出し続けるに従って尿は勢いを失い、最終的に私の足を伝って床に向かって垂れ落ちる。
 ちょっと気持ち悪い。拭ってしまいたかったけど、後ろ手に拘束されている状態じゃそれもままならない。
 これで一応指示は終わったはずだけど、次はどうすればいいんだろうか。さっきの紙をもう一度見てみたけど、そこにはそれ以上のことは何も書かれていない。
「……どうしよう」
 他に指示が書かれた紙がないかと探してみる。すると、一番奥の個室の壁に紙が張ってあった。指示があったことに少し安心する。
 指示があったことに安心するなんて、ちょっとなんだか微妙な気持ちになるけども。
 とりあえずその指示に目を通した。
『トイレ内で待機すること』
 その指示を理解して、私は少し顔をしかめた。
(待機しとけって……こんなところで?)
 垂れ流してしまった尿をふき取ることも出来てないからかぶれそうだ。何より誰が来るかもわからないところでそんなに長時間待たされるとは想っていなかった。
(どうしよう……手は自由にならないし……)
 もしも手が自由であればオナニーでも出来るけど、後ろ手に手錠をかけている現状ではそれもままならない。
(でも……従うしかないよね)
 手錠を外さないといけないし、コートも返してもらわないといけない。
 私はとりあえず待ってみることにした。どれくらい待てばいいのかわからないけど、そんなにものすごく長時間、ってことはないはずだと信じる。立ちっぱなしというのも疲れるので、洋式便器の蓋の上に腰掛ける。比較的綺麗で助かった。
 数十分は経過した頃だろうか。
 不意に、トイレの外で大きな音がした。嫌な予感を覚えた私は、咄嗟に個室のドアを音を立てないように閉めかけて、やめた。ドアの影に隠れて外から見えないようにする。
 その数秒後、どやどやとやかましく、数名の男の人がトイレに入ってきた。


~続く~

露出七つ道具『手錠』4


「あー、やばい漏れる漏れる」
「ビールの飲み過ぎっすよー、やっさん」
 酔っているのが明らかな陽気な声で、男の人たちが騒がしく言葉を交わしながら用を足し始める。
 扉の影に隠れた私は、必死に息を殺さなければならなかった。
「にしても毎度接待ばっかで大変だよな」
「やっさんはお酒好きだからいいじゃないっすか。俺なんて苦手なのに飲まされて大変なんすからねー」
「このあとどうしますー? 二次会行きます?」
「キャバクラでもいくか? 何ならもっとやばいところでもいいぞ!」
「いや、さすがにやばいっしょ!」
 げらげらと品無く笑う男の人たちの会話が恐ろしい。もしも裸の女がいるってことに気づかれたら……それは、想像するのも恐ろしい。回されてしまうんじゃないかと想ったらあそこが熱くなるのを感じた。
(……っ! れ、レイプ願望なんてないはずなのに……!)
 私は自分自身の身体の反応に戸惑う。飛び出して見てもらいたいという欲求が膨れ上がるのを感じていた。それを理性で必死に押さえつけながら、私は男達の会話に耳を澄ます。
「いっそ、その辺に女落ちてないかなー」
 どんな会話の流れだったのか、いきなりそんなことをいう男がいて、私は真剣にビビった。心臓が締め付けられるほどの恐怖を感じる。
「何言ってんだおまえ」
「だってそうじゃないっすか? 駅前で痴女騒ぎがあったこともあったじゃないですか」
「あー、なるほどなー。でもそんな痴女なんてやりマンだろうし、俺は見つけたとしてもやりたくないけどな」
「俺はそういう女の方が燃えるなー。いねえかなそのへんに」
 まさにその辺にいる私は生きた心地がしなかった。
 ドアを閉めなくてよかった。もしもドアを閉めていたらあからさまにそこに誰かいるってことになって、酔っぱらい特有のノリで絡まれていたかもしれない。

 どんどんどん、と個室のドアがノックされる。
「入ってるのは誰ですかー」
 げらげら笑う男達。私は答えることが出来ない。答えたら声で女がいるとわかってしまうからだ。
「答えがねーなー。鍵しまってるよな?」
 どん、とひときわ大きな音がして、天井にあった隙間から男が顔をのぞかせた。
 目と目が、合う。
「きゃあああ!!」
 想わず悲鳴をあげてしまってから、それが致命的な間違いだったことに気づく。
「うわっ、まじで!? ほんとにいたよ痴女!」
「え? まじかよ!」
「おい、もう鍵壊しちまえ!」
 所詮公園のトイレの鍵程度、男達が本気を出せば簡単に破壊されてしまった。
 ドアを押しのけて、男達が迫ってくる。
「いやあああ!! 来ないで! こな……むがっ」
 男達の手が私の口を無造作に押さえる。
「おお、中々いい女じゃねーか」
「おいおい、見ろよこの女! 手錠なんかしてるぜ!」
「マジモンの変態じゃねえか!」
「裸で男子トイレにいたってことは犯されたかったんだろ?」
「安心しろよ、俺達が朝まで可愛がってやるよ!」
 そしてろくな抵抗も出来ないまま、私は男達に――

 大きな水音がして、私は我に返った。
 どうやら洗面所で手を洗っていったらしい。男達の声が遠ざかっていく。


~続く~
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プロフィール

夜空さくら (旧HN:黒い月)

Author:夜空さくら (旧HN:黒い月)

はじめに
当ブログは露出・羞恥系の18禁小説ブログです。関連の同人誌・版権物のレビュー、個人的な語りなども書きます。18歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。

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定期談話会『創作の集い』を毎月第2土曜日20:00から行っています。
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