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黎明媚態

露出系、羞恥系の18禁小説を書いています。関連の同人・版権作品のレビューも書きます。18歳以下の閲覧禁止。

露出小説 ~試し書き~

 今日は久々に小説を書いたので試しにアップしてみます。
 見にくいなどのご意見ご感想がございましたら、コメントでぜひお願いします。


~試し書き~


 表示されたそのお題を見て、私は固まった。

 たまたま見かけたそのサイトを半ばネタとして見ていた私は、そのボタン付きのお題メーカーといえるそれを見て、つい魔が差した。試しに押してみるだけなら、と押してみた。
 別に本気で実行するつもりはなかったし、いっそぶっとんだ変なお題が出るのを期待していた。
 私に示されたお題、それは。

 『真昼間に路上で下半身裸になってローター・バイブを使う』というものだった。

 最初見たときはあり得ないお題だと思った。
 真昼間という時間帯がまずあり得ない。そんな時間の路上はたくさんの人通りがあって、下半身裸になんてなれるわけがない。その上、ローター・バイブを使う――つまりは自慰をするということだろう――なんて無理だ。
 私は一瞬、


 人々の往来が激しい通りのど真ん中で、
 真面目に働くスーツ姿のサラリーマンや、
 賑やかに話ながら道を行く学生の集団、
 子供を連れている主婦なんかが行き交う場所で、
 そんな人達全員から訝しげな目を向けられ、
 蔑みの呟きに晒されながら、
 裸の下半身をさらし、
 皆によく見えるように足を開いて、
 ローターを持った手をあそこに近付けていく。


 そんな想像をしかけて。
 慌ててその想像を打ち消した。
 絶対無理。跳ね回る心臓を抑え、私は深呼吸を繰り返す。少し気を落ち着ける。出てきたお題は実行不可能だと考えた――けど、不意に私は気づいてしまった。
 『真っ昼間の路上』という指定は、『人通りが多い道』を意味しない。
 ほとんど使われていない道でもこの条件に当てはまる。
 そう、例えば裏路地だって立派な『路上』だ。
 そう考えれば、必ずしも実行不可能なお題じゃない。
 実行出来る――そう思った時、体の中が縮こまるような、胸の奥がきゅっと引き絞れられるような――そんな不思議な感覚がした。


 場所を選べば可能かもしれない。

 そう思った私は、翌日から出来そうな場所を探して町を歩いた。
 いつも使っている道は危険だから使えないとして、改めて探すとなると中々条件にあった場所は見当たらなかった。
 昼の住宅地なら仕事に出ている人も多いかと思ったけど、考えてみれば主婦の人は普通にいるし、小学生以下の子供もわりと予測できない行動を取る。
 見つかったらアウトなのだから、住宅地は危険が大きかった。子供に見つかるのは色んな意味で避けたい。
 限られた人しか来ないという意味では駐車場なんかはいいかも知れないけど、そこは路上とは言いがたいし……。
 私は暫く歩き回ったあと、完全に安全な場所はまずないと結論を出した。
 そういうところは理想ではあるけど、考えてみれば絶対に安全では意味がない気がする。
 こういうのは見られるか見られないかのギリギリのラインじゃないと、家の中で裸になるのと変わらない。
 見つかったら終わり、だけどだからこそ普通では絶対に味わえない快感がある。
 これはタブーを侵す快感なのか、それとも解放感を求めているのか、はたまた恥ずかしい姿を人に見られて感じてしまっているのか。
 私にはわからなかった。

 ただはっきりしているのは、私はそのお題を実行するために動いているということだ。



~試し書き終了~


 いかがでしたでしょうか。
 ブログで小説をあげるというのは中々際どいものがありますね……。
 読みにくいですし……やっぱり、どこかに投稿した方がいいでしょうか。
 もう少し考えてみたいと思います。
 ご意見、ご感想がございましたら、コメントでぜひお願いします。
[ 2013/04/04 22:07 ] 小説・短編 | TB(0) | CM(0)

レインコート露出1


 雨の日はいい。
 皆傘で顔が隠れているし、水たまりを警戒して俯いて歩くから視界も狭くなっている。雨粒が大きければ自然と視界は煙り、遠くが見えにくくなる。
 だから、わたしがこんな格好で歩いていても誰も気にしない。ドキドキする心臓を服の上から抑えながら、わたしは雨の町中を歩いていた。

 わたしは、半透明なレインコートを着ただけの姿で歩いていた。

 足元は素足にサンダルのため、肌の露出は限りなく多い。傘も透明なビニール傘を選んだから、私の顔はほとんど隠れていないだろう。サングラスだけがわたしの素性を隠してくれる唯一の防壁だ。わたしの身体は服を着ているはずなのに、透明なせいで全くなにも隠せていなかった。湿気でレインコートが肌に張り付いて気持ち悪いと同時に、自分の状況を嫌でも実感させられる。もう死んでしまいそうなくらいに恥ずかしかった。


続く



超短くて申し訳ないです。

レインコート露出2

 誰かが見ようと思えば全てが晒されてしまう危険を感じつつも、わたしの体は決して止まってはくれなかった。ぱしゃり、ぱしゃりと必要以上に水たまりで音を立てながら歩く。まだ誰もわたしの異常な格好に気づいていない。気づかれないように人から距離を置いて歩きながらも、わたしは気づかれたいという欲求が高まるのをじっと黙って感じていた。
 半透明なレインコート越しでもいいから、熱い眼差しを向けて欲しかった。その視線のみがわたしをどこまでも高ぶらせてくれるのだから。どうせなら半透明のものも脱ぎ捨てて、直接視線を全身で感じたかったけど、さすがにそれはリスクが大きすぎる。いまくらいのレベルがなんとか出来るギリギリのラインだ。
 いっそレインコートを脱ぎ捨ててしまいたいという欲求にあらがいつつ、わたしは慎重に歩を進めていた。
 今日はレインコート一枚で出歩くことが最終目的ではなかった。もう一つ、こんな雨の時にしか出来ないことがあって、今日はそれをしようと思っていた。
 その舞台となる場所へと向かって歩いている。歩いているだけなのに、レインコートが肌に張り付いて刺激を与えてくるせいですっかり高ぶってしまっていた。
(ああ……もう……どっかで発散しようかな……)
 体が疼いて冷静な判断ができなくなりつつあった。こんな状態で居続けるのは非常に危険だ。身バレをしてしまうのも、こういう状態の時が一番多いのだから。
 本当は寄るつもりはなかったのだけど、目的地にたどり着くまでの途中にあったバス停で少し発散していくことにする。
 バス停にはベンチがおいてあるけど、屋根がないタイプのところだったため、誰かが座っているということもなく、あたりに人気もなかった。
(ここならいける……)
 わたしはそこのベンチに腰掛ける。冷たい感触がお尻から伝わってきた。その感触がもう気持ちよくて、恍惚とした表情で空を見上げる。


~続く~

レインコート露出3

 わたしはベンチに普通に座った体勢から、大きく股を開いてレインコートの裾の間から手を入れ、股間に触れた。そこはもう雨の湿気とか色んなもので湿っていて、指先に熱い感触を与えてくる。じわりとした熱さはわたしがこの上なく興奮してしまっている確かな証拠だ。
(向こうから私を見てくれないかな……)
 ベンチがあるこちらの道はそんなに人通りが多いところじゃないけど、四車線ほどある大きな道の向こう側の歩道には結構人がいる。その人達がわたしの方を見れば、明らかにおかしな格好でベンチに座っているのがわかるはずだ。視線を向けてもらえることを期待していたけど、残念ながら皆あくせく動いていてこちらに意識を向けようと言う気さえ感じられない。
 ちょっと残念に思いつつ、わたしは片足をベンチの上にあげ、さらに大胆な格好になってみた。ちなみに目の前の道路は結構車の通りが多く、一台くらいこっちに気付いてもおかしくなかったけれど、特に速度を変える車は見られなかった。雨のせいで視界が悪いし、気付かれなくても仕方ないのかもしれないけど、すぐ傍を車が通過していくのはぞくぞくする感覚だった。
 時刻表を見た限りではまだ次のバスが車でには時間がある。
 わたしはここで一度いってから、先に進むことにした。


~続く~

レインコート露出4

 外でオナニーするというだけでも興奮するというのに、今のわたしの格好は裸よりも恥ずかしいものだ。変に透けているせいで余計に恥ずかしいような気もする。けど、これを脱ごうという気にはなれなかった。わたしは恥ずかしい思いをするためにこんな格好で家を飛び出して来たのだから、この格好をやめるのは本末転倒と言える。
 わたしは道の向こう側の人達を見詰めながら、そっと口を開いてお決まりの文言を口にした。
「みなさん、わたしはこんな格好を見られて興奮する、露出狂の、変態です……どうか……変態のオナニーを見てください……」
 本当は叫んでしまいたい自分がいたけど、それを抑える気持ちの方が強くて、わたしは誰にも聞こえない声量で宣言を行う。
 もちろんその声が道の向こう側の人達に聞こえることはないのだけど、何の関係もない人達に向かってそんな宣言をしてしまったという事実だけで、わたしの心臓は壊れそうなほどに早鐘を打ち、体温が一気に上がったような気がした。
 わたしが指先で自分の秘部に触れてみると、そこはさっきよりもずっと濡れていて、宣言するだけで自分がより強く感じてしまったことを自覚させられる。
 そしてわたしは宣言通り、オナニーを開始した。
 
 
~続く~

レインコート露出5

 指を入れて掻き回す。ただそれだけの行動なのに、指先からは熱い感触が伝わって来て、秘部から飛び出した愛液はベンチを濡らす雨に紛れてすぐにわからなくなる。
 これをするなら雨じゃない日にした方が、自分がオナニーした痕跡がはっきり残ってよかったかもしれない。自分の愛液が雨水に紛れてしまうことを、何となく残念に思った。それは今度実行することにして、いまの快感に没頭する。
「ん……っ、ふぅ、……っ」
 普段わたしはオナニーする時でも、もっと言えばセックスの時でも、こんなに声をあげたりはしない。けれどこ、こうして露出している時だけは、異様なほど気持ち良くて、声を上げてしまう。わたしは生粋の露出ッ子なのだろう。
 それを恥ずかしいと思ったことはあまりない。性癖なんて自分ではどうしようもないものなのだ。自分を把握するという意味では、こうして割り切って没頭してしまっている方がよほど潔い。見られる恥ずかしさとはまた別モノだし、このことに関して恥ずかしがる必要なんて何もないとわたしは考えていた。
「ふぁっ、あっ……あっ」
 女性器の全体を擦るように掌を当てて動かし、指先で股の下を刺激する。秘部と肛門の間に存在する僅かなスペースが個人的にはじわりと感じられるいいところだった。オナニーを覚えたての頃は、机の角に擦りつけたり、椅子の背中や低い柵などにまたがって刺激を加えていたからそのせいで開発されているのかもしれない。
 わたしはオナニーを続けながら、さらに気持ちよくなるべく、穴の中に指を深く挿しこんだ。
 あそこが強く収縮し、差し入れた指を強く締めつける。
 
 
~続く~

レインコート露出6

 指を使って奥まで刺激を与えていると、快感がさらに一段階上のレベルに高まっていることを感じた。
 こうして中を触るのはいまに始まったことじゃないけど、こうして身体の中を触っていると自分がいけないことをしている自覚が強くなって、さらに興奮は高まっていくのだ。
 人差し指と中指で穴の中を刺激しながら、親指でクリトリスを擦りあげる。内と外から同時に挟みこむように刺激を加えると、それだけでいってしまいそうになるほど気持ちいい。体を仰け反らせて、胸をビニールのレインコートに擦りつける。そのほんのわずかな刺激が絶妙な快感になった。自分の汗と雨の湿気のおかげで摩擦が余計に強くなっているのだろう。体を丸めて、また仰け反る。それを繰り返すだけでも十分に気持ち良かった。傍から見たら明らかに変な動きをしていたと思うけど、そんなことは気にならない。
「~~ッッ!」
 頭の中で快感が弾けて、気持ちいい心地に陥る。一つ息を吐くと、さらに心地よくなれる気がした。
 けれど、あえてわたしはここでオナニーを切りあげて、乱れたレインコートの裾を直し、バス亭を離れる。バス亭だからいずれバスが来るのは確実だったし、今回の目的はここでオナニーをすることじゃなかったからだ。こんなところで力尽きてしまうわけにはいかない。
 わたしは少しだけふらつく足を叱咤して、目的の場所へと急いだ。
 雨はまだ降りやみそうもなく、わたしはそれに乗じる行為を出来るよう、急いで目的の場所へと向かった。

 目的の場所とは極普通の、公園だ。


~続く~

レインコート露出7


 大雨が降り注ぐ時にわざわざ公園にやってくるような物好きな人はそうそういるものじゃない。実際わたしがその公園にたどり着いた時も、人っ子一人いなかった。いつもであればまだ子供達が遊んでいるであろう時間帯だけど、雨が降り注ぐ音以外、何の音もしなかった。
(狙い通り……ってところね)
 わたしはいったんそこで傘を閉じて、その傘を公園の入り口の柵にひっかけながら公園の中に入った。どちらにせよ透明だったのだから、視界を遮るようなものにはなっていなかったはずだけど、それがあるのとないのとでは精神的にかなりの差があった。
(うー……誰も来ないでよ……)
 くるわけがないとは思うけど、万が一誰かが来たら逃げ場はない。開けた視界が少し不安だった。でも、同時にわたしは誰かに来てほしいような気もしていた。誰かに見られるというのも、興奮するものだ。
 わたしはそんな自分の破滅を望んでいるような思考を振り払いながら、公園の中を歩いていく。そして、目的の遊具の傍にやってきた。どんな小さな公園だろうと、これだけはあるだろうという典型的な遊具。
 滑り台だ。
 わたしは一応念のため周りを再度確認し、誰もいないことを確認して、意を決してその遊具によじ登る。さすがに子供用に作られているだけあって、いい大人のわたしが上るには小さすぎたけど、なんとか滑り台の丈夫にたどり着く。わたしはその時、公園の中でもっとも高い位置にいた。滑り台の上でたっていると、まるでステージか何かに乗せられているような、そんな高揚感がおそってくる。
「……っっ!」
 どくん、どくん、と心臓が高鳴る。隠れる場所がないどころか、たとえば公園の外からでも自分がここに立っていることはわかるはずだ。雨で視界が悪いとはいえ、明らかにおかしなシルエットが見えることだろう。
 わたしはその絶望的なまでに開けたステージで、思い切ってレインコートを脱ぎ捨てた。そこからぱっとレインコートを地面に向かって投げ捨てる。わたしは全裸で滑り台の上に立ち、雨粒を全身で受け止める。雨粒がさらされた肌の至る所を叩いて、わけがわからなくなる。乳首に雨粒が当たる感触は、それだけで十分な快感になった。
 予定の行為はまだ終わらない。
 わたしは足を踏み外さないように慎重に立ち位置を調整し、滑り台の斜面のすぐ傍に仁王立ちになる。体の正面を斜面に向けて、立ったままできる限り腰を前に突き出す。それはあそこを前に向かって見せつけているような姿勢で、それだけでも恥ずかしかった。
 さらにわたしは両手を頭の後ろで組んで、肘を開き、何一つ隠さないおおっぴらな格好を取る。ぶるり、と体が震えた。
 そしてわたしは、最後の締めにかかる。下腹部に力を込めてーー勢いよく放尿した。結構我慢していた甲斐があって、わたしの出した尿は曲線を描いて前に飛び、滑り台の斜面に当たって流れていく。子供たちが遊ぶ大事な場所で人間として最低な排泄行為をしている。その事実がわたしをさらなる快感のステージに引き上げてくれた。
「ひぁ、ぁぁぁっ、ぁっ、ぁぁぁっ!」
 シャアアアア、と勢いよくでる黄色い尿が広がっていく。そもそも女性がたったまま排尿するということ自体が異常なのに、わたしは全裸で、しかも滑り台の上なんているとんでもないところでそれをしてしまっているのだ。
 背徳感と解放感で頭がどうにかなりそうだった。放尿している間、ずっと絶頂し続けていたような気さえする。
 終わった後、わたしは力が抜けてその場に座り込んでしまった。荒い呼吸を繰り返しなんとか落ち着かせて、滑り台の上から降りる。雨は変わらず降り続いているから、きっと排尿した痕跡もすべて洗い流してくれるはずだった。
 わたしは地面に落ちて泥だらけになっていたレインコートを回収しようとしたけど、汚れたそれをまた着る気分にはなれなかった。
(ま、いっか! なんとかなるでしょ)
 どうせ見られれば一緒だという気持ちになっていたわたしは、レインコートをそのままおいて、傘も回収せず、帰路についた。
 この公園から家までは片道十五分くらい。距離は結構ある。
 わたしはその道筋にさらなる快感が待っていることを期待して、その足を公園から一歩踏み出した。
 
 
 
 
~『レインコート露出』 終わり~
 

 
 

露出感染1

 全ての始まりは、学生の頃出会った露出狂だった。

 ある日、塾に行っていて帰りが夜遅くになった時があった。もちろん犯罪に巻き込まれないように自分としては注意していたつもりだった。なるべく明るい道を通っていたつもりだし、人が多そうな道を選んでいた。
 けれど、家に着くまでにはどうしても少し人通りの少ない道を歩かなければいけなくて、そこだけが心配だった。けど、そこは明るいから大丈夫だと思っていた。
 それが、間違いだった。
 あの人が前から歩いてきた時、私はすぐに違和感に気付いた。そのときの季節は夏だったのに、その人は暑そうなコートを着ていたからだ。極普通の茶色いコート。丈は膝くらいまであって、そのデザインを見た私はますます奇妙な印象を抱いた。なぜなら、その人が来ていたのは男物のコートだったからだ。アンバランスにもほどがあるコーディネートだった。
 いまから思えばあからさまに不審な姿で、本来ならそんな人を見た瞬間逃げなければならないレベルだ。
 とはいえ、その当時の私は夜道や不審者が危険といっても、それが具体的にどういう存在のことをいうのかわかっていなかった。だから、その人についても変だなとは思ってもそれがイコールで不審者だとは思わなかった。
 その人と私との距離が縮まる。その人は前髪を不摂生と思えるほど伸ばしていて、顔はよく見えなかった。
 すれ違う寸前、その髪の奥からその人の目が私を見たのがわかった。
「お嬢ちゃん」
 柔らかな声音の女の人だった。
 呼びかけられた私は、つい立ち止まってしまった。いまでこそなんて危険な行為なんだと思うけど、その時はまだそこまで危機意識がしっかりしていなかった。
「なに?」
 だから、相手に対してそう答えてしまった。
 相手は口元だけでふっと笑うと、一歩、こちらとの距離を詰めてきた。
「わたしの、からだを、みてほしいの」
 そういってコートの前をがばりと開いたその人は、コートの下に何も身につけていなかった。街灯に照らされた肌色が目に眩しい。
 当時私は滅多に他の人の裸なんて目にすることはなかった環境にあった。学校の行事で旅行するようなものも、全て悪天候だとかで中止になっていたし、家族と一緒に入るような歳でもなかった。
 だから、突然人の裸を目にして、私の思考は完全に止まった。
「どう?」
 その人はそんな私に対してそう問いかけてきた。私は完全に思考停止状態で、何を言えばいいのか全くわからない。
「……え? ええ? ど、どう……?」
 私はホントにどう答えたらいいのかわからなかった。
 その女の人は私が混乱していて、悲鳴をあげないと理解したのか、悠々と距離を詰めてくる。その分だけその人の身体がよく見えるようになって、私は戸惑いを強めるばかりだった。
「わたしのからだ……キレイかしら?」
 そういえば、「わたし綺麗?」って問いかけてくる女の人がいるとかいう都市伝説があったなぁ、とか思っていた。つまり私の頭は現実逃避してしまっていたのだ。
 私はそんな状態で、とりあえず汚いとは思わなかったので頷いた。同じ性別のはずなのに、何か自分のそれとは違うものをその人の身体からは感じていた。
 それはいまから思えば大人の色香というものだったのかもしれない。
 その私の反応を見たその人は、にこやかに笑うと、そっとコートを脱ぎ落してしまい、それを簡単に畳んでしまう。つまり隠すものが一切なくなって、その人の全てが私の前に晒されていた。
 あっけに取られている間に、その女の人は私の胸にそのコートを押しつけるようにしてきた。
「ありがと。これは、お礼よ」
 思わず受け取ってしまって、私が立ち直る前にその女の人は私に背を向け、その場からさっさと歩き去ってしまった。素っ裸で、みようによっては間抜けな姿だったはずなのに、妙にその時の女性の姿は格好よく見えた。
 そして、私の元にはその女の人が着ていたコートだけが残ったのだ。

 始まりは、そんな出会いからだった。


~続く~


この作品はピクシブの方で頂いたメッセージから着想を得ています。
リクエスト……という扱いになるのかもしれませんが、果たしてその望みに応えられているのか……疑問ですw
[ 2013/07/01 21:49 ] 小説・短編 露出感染 | TB(0) | CM(0)

露出感染2

 そして、私はいまとあるビルの屋上に来ていた。
 吹き付けてくる風は強く、暑い空気を一蹴してくれる。それが火照った身体には心地よかった。私はマスクを取り外し、新鮮な空気を吸い込む。息が熱くて、湿り気を帯びたそれはあっという間に屋上の風に吹き散らされた。マスクを大事にポケットに入れる。この暑くなってきた時期に、やっぱりコートは暑すぎた。いくらそれ以外に何も身につけていないとはいえ、コート一枚だけでも十分暑くなる。
 私はその時、そのコート以外に何も身につけていなかった。
 なんでそんな状態になったのかといえば、なんでだろう。正直自分でもあまりわからない内にこうなってしまったというのが正しい気がする。
 私は顔を隠す為にかけていたサングラスも外して、コートのポケットに入れる。いまさらだけど、よくこんないかにも怪しげな状態でビルの中に入れたものだ。一応飲食店のフロアもあるから外部から人が入ることもあるだろうけど、入り口に警備員は立っていた。呼び止められていたら確実にアウトだったけど……スルーしてもらえた。
 コートの袖口や裾から入ってくる空気に身体を撫でられ、その異様な気持ちよさに身体を震えさせた。
 決して寒いわけではないのに、震える指先を駆使して、なんとかコートのボタンを外し始める。
 私は自分がこうなってしまった原因のことを思い返していた。
 そもそも、このコートから全ては始まったのだった。


 幼いあの日、女性の露出狂に遭遇して、コートを渡されてしまった私だったけど、それからすぐには何もしなかった。コートは処分に困って、家族には内緒でこっそり部屋に持ち込み、クローゼットの奥に詰め込んでいた。
 けれど、それから時々見てしまったあの人のことが脳裏によぎることになってしまった。たとえばあの人と同じ年代の女の先生を見た時。服の下にはあの人と同じような身体があるのかと思うとドキドキした。先生を見ていて顔が赤くなっていたのか、風邪なのかと心配されたこともあった。あの道を行くときはもちろん思い出さずにはいられなかったし、お風呂に入るために裸になる時も思い出した。脱衣所で裸になるのは当たり前だけど、あの人は普通にその辺の路上で裸になっていた。その上、唯一彼女が持っていた着る者も私に渡してしまっていて、あのあとどうやって帰ったのか子供ながらに心配したものだ。
 あの人のことをことあるごとに思い出していた私は、いずれは忘れてしまうと思っていたけど、ぜんぜんそんなことはなく、むしろ時間が経つに連れ、あの時見たその人の記憶は徐々に全く関係ないところでも再生されるようになってしまった。
 たとえば何気なくリビングのソファに座ったとき。あの人ならこうやってくつろぐ時も裸なんだろうかと思った。薄暗い路地を通りかかった時、あの人はこういうところで裸になっているんだろうかと感じた。薄着ファッションという言葉を見かけて、あの人なら裸がファッションだから究極の薄着ファッションかなと思った。
 そんな風にところ構わずあの人のことを思い返すようになってから、その想像の姿がその人ではなく、自分のものになるのにはそう時間はかからなかった。
 なにせ裸を見たといっても少しの間だけだったし、あのときの記憶自体は時間が経つに連れて徐々に薄れて行っていた。
 だから、一番想像しやすい自分自身の身体で想像するようになるのは必然だった。
 ここで裸になったら、から始まって、皆に見られたら、見られざるをえない状況になったら、どんな気持ちになるか。そんな脳内シミュレートだけを続ける日々だった。そしたらなぜか男の子にも告白されることがあった。なんでも大人っぽいとかなんとか言われたけど、別に誰かとつき合いたいわけではなかったので全部断った。
 そうしているうちに、私はあの時あの人からもらったコートを引っ張り出すようになっていた。


~続く~
[ 2013/07/02 22:51 ] 小説・短編 露出感染 | TB(0) | CM(0)

露出感染3

 それを引っ張り出した時にはずいぶん時間が経っていたから、残り香も何も残っていない。ただの男物のコートという感じだった。けれどそれを引っ張り出して、改めて眺めてみた瞬間、あの時の衝撃が戻ってきた。まるでそれを身につけたあの人が目の前にいるように。コートの前がぱっと開かれて露わになった綺麗な肢体がはっきりと脳裏によぎった。
 私はそのコートをとりあえず椅子の背もたれにかけて、自分が着ていた部屋着を脱いでいった。どうしてそうしたのかはわからない。私は自然とそんな行動を取っていた。ショーツもブラジャーも脱ぎ捨てて、全裸で立つ。自分の部屋で裸になることなんて普通はない。下着姿まではあるけど、それにしたってすぐに服を着てしまう。裸のまま、部屋の中でじっとしているなんて経験はなかった。ほんの少しみじろぎするだけで自分が全裸でいることを深く自覚させられて、つらいというか、変な気分にさせられる。
 私はそっと手を伸ばして、壊れ物でも扱うような気分であのコートを手に取った。ずっしりと重く感じられる。
 それを広げて、その袖に腕を通していく。素肌に直接すこしざらついたコートの裏地が触れて、ぞくぞくする快感が膨れ上がる。背中にそれが達すると、それはさらに強まった。背中が大きく開いたドレスでも着ない限り、この場所の肌に直接上着が触れることはない。ゆえに、そこに本来上着であるはずのコートの布地が直接触れる感覚は、私にとって未知のものだった。その未知の感覚は当然その先も続く。
 腰、胸、お腹、お尻。
 あらゆるところに未知の感覚は生じ続け、私はコートを着るというただそれだけのことでおかしな気分になってしまっていた。
(うわ、ぁ……これ……やばいよ……)
 コートの前を留めて見ると、それは本当にまずい感覚だった。裸の身体をすっぽりと包み込まれている安心感というべきか、なんとも表現しがたい感覚が全身を包み込んでいる。軽く身をよじると胸の先端がコートに刺激されて甘い快感を膨らませる。そこだけではなく、全身を撫で回されているような感覚があった。
(ふっ……う……っ……へんな、こえ、でちゃ……ぅっ)
 不自然に身体を跳ねさせながら、私は部屋の中を軽く歩いてみた。室内、それも自分尾部屋だというのに、まるで雲の上を歩いているような、そんな不思議な感覚が私を包み込んでいた。
(これ……すご……っ)
 当時、私はまだ自慰というものをきちんとやったことがなかった。けれど、そのときの気持ちよさは自慰のそれ以上に強烈で、気持ちよかったことは覚えている。そのせいで私の中でオナニーは露出のことだと自然と認識してしまい、危うく女友達の中で知らず知らずの内に変態をカミングアウトしてしまうところだった。さすがに自覚してからはそんなことを周りにいうつもりもなくなっていたけど。
 ともあれ、コートを初めて着てみた私にとって、そのときの快感はすさまじいものだった。部屋の中でこれなのだから果たしてこの状態で外に出たらどうなるのだろうと何気なく想像をした。
 もちろんすぐに外に飛び出していくなんてことは出来るはずもなく、その日は想像だけで初めてのオナニーを自然と行ってしまった。


 そしてそれから。
 私は徐々に露出の魅力にとりつかれていった。最初はノーブラノーパンから始まって、自然と露出度の高いタンクトップやキャミソールを好んで身につけるようになって、オナニーをするときは必ずベランダなどの外に出てやるようになっていった。
 そして、ある夏の日、田舎のバス停で人もバスも中々来ないバスを待っていた時のこと。
 蒸し暑さに耐えかねて着ていたワンピースを脱ぎ、外で全裸になってしまったのだった。その時はノーブラかつノーパンだったので、本当に一枚脱げば裸になってしまった。
 その時の開放感は、なんとも表現しがたい。ただ、新しい扉が開いたような、そんな心地よさを感じるばかりだった。


~続く~
[ 2013/07/03 20:00 ] 小説・短編 露出感染 | TB(0) | CM(0)

露出感染4

 一度外で裸になってしまえば、理性が歯止めをかけられなくなるのは必然だった。
 私はいつもどこでなら裸になれるか、一番気持ちよくなれそうかということを考えるようになった。ちょっとした死角があればそこで裸になった時のことを考える。
 本当に裸になれるか、裸になったとして、どれくらい楽しめそうか、そんなことばかり考えていた。正直このままじゃいけない、と考えないわけじゃなかったけど、それ以上に露出の魅力にとりつかれた私は、露出がしたくて堪らないのだった。
 いろんな場所で露出に挑戦した。人通りの少ない路地では、あの人を思い返してしまったし、公園では裸のまま色んな遊具で遊んでみたりした。自転車で全裸サイクリングをしたこともある。あれは開放感がダントツだった。そんな感じで私は露出を続けていた。
 奇跡的に人に見つかることはなかった。ギリギリで遭遇しかけたことはあるけど、はっきり見られたことはない。それがついていることなのか、それでないのかはまた別の話になるけど、とにかく私はたまたま人に見つかることもないまま、徐々に行為をエスカレートさせていっていた。
 そして、衝動に促されるまま、ついに私はそのビルにコート一枚でやってきてしまったのだった。
 どうしてここで露出をしようかと考えたかについては、色々と事情はあるのだけど、やっぱり私がいける中でもっとも高かったから、ということが大きかった。どうせなら一番開放感の感じられるところで、というわけだ。
 実際はそのビルの対面にもう少し大きなマンションなんかもあったりするのだけど、さすがにそこはセキュリティが厳しくて入り込めなかった。マンションだと屋上を風さしていることも多く、そういう意味でもあきらめるしかなかった。
 私は風の吹き付ける屋上で、前を開いたコートをはためかせながら、全身で風を感じて心地よい快感に身を浸していた。
 そしていよいよ、私はコートを脱ぎ始めた。そんなに手こずることはない。すでに簿tんは外しているのだから、あとはもう袖から腕を抜くだけだ。
 肩を滑らせ、一度肘の辺りで落とすのを留める。外気に晒される背中と肩がはっきり感じられるようになった。
 そして、最後は一思いにばっさりと服を脱ぎ落とした。
 この外で全裸になる瞬間の感覚は何度やっても色あせることがない。私がはまってしまうのも、仕方ないと想う。
 私は全裸のまま、少し屋上を歩いた。


~続く~
[ 2013/07/04 20:00 ] 小説・短編 露出感染 | TB(0) | CM(0)

露出感染5

 屋上は遮るものが何もなくて、その風の通り抜け具合は半端なものじゃない。
 それは裏路地などの少し閉鎖された空間と比べても当たり前の真実で、その開放感と心地よさにはただひたすら気持ちよさだけがある。
 興奮に体を震わせながら私は屋上のフェンスに両手をかけてみた。転落防止は大事だと思うけど、これのせいで若干視界が悪い。風の通り抜けに支障はないからまだいいけど、いつかはもっと開放感のある場所で露出したいものだった。
 私は屋上から見える道路を眺める。何事もないかのように、あくせく人々が歩いていて、少し見上げた先にこんな裸の女の子がいることなんて気づいていないようだった。ちょっとだけ見上げればそれが見えるのに、なんて損をしているのだろう。
「……私を、見て」
 ぽつりと呟く。もちろん声は下まで届かない。
「私……変態の露出狂なの……っ」
 大きく足を開いて秘部を強調しながら、少しだけ大きな声で呟いてみる。どくんどくんと心臓が大きく高鳴った。じわりと熱があそこからわき上がって全身を駆けめぐる。
「……だれかっ、私を見てっ!」
 かなり大きな声で叫ぶ。誰にも届かないのはわかっている。だけどこんな開けた空の下、どうしようもない変態発言をしてしまっているという事実に、私の興奮はどうしようもなく高まってしまうのだ。
「はー、はー、はー……」
 心臓の鼓動が高まりすぎてうるさい。大きく脚と腕を広げているせいで、風があそこや脇の下を撫でていく。こそばゆい。ぞわぞわと快感が頭まで駆けめぐって体が震える。
「っ……!」
 ひときわ強い風が体を打ち、まるで全身をなで回されているような快感に浸された。
「うあっ、あああああああっ」
 生じる快感が強すぎて、私は体を細かく痙攣させる。思わずしゃがみ込んで、自分で自分の体を抱きしめながら悶絶した。その抱きしめるという行為で、ますます自分が裸であることを強く意識してしまい、頭の奥がびりびりと痺れた。
 なんとか立ち上がり、ふらつく足取りで屋上の縁を歩いていく。フェンスという不純物があっても、その開放感による気持ちよさは尋常なものではなかった。
 屋上の縁を軽く二周する頃には、頭の中が沸騰してしまっているかのような状態だった。もちろん、まともな思考など望むべくもない。
 気持ちよさのあまりその場で倒れてしまいそうになった私は、ふらつく体を支えるためにフェンスを掴む。何気なく視線をあげた先に、いま自分がいるビル並の高さがあるマンションが見えた。もしもそこから誰かがこちらをみていれば、私の姿は丸みえだろう。
 いまのいままで気づかなかった事実。
 人に見られていたかもしれない。いまも見られているかもしれない。その事実に私の理性の箍は簡単に外れてしまった。
 マンションに向けて、見せつけるようにオナニーをする。見られてしまってもかまわない。むしろ気づいて欲しいという思いを込めて私はひたすらオナニーに没頭した。
 何度絶頂に達しても私の興奮は冷めることを知らず、ひたすら立ち上っていくような快感の渦に翻弄され続けた。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
 さらに強い快感を求めて、私の体は勝手に動く。
 屋上に来てすぐ脱ぎ捨てていたコートを、私は掴んで、くるくると丸めてしまう。風の方向を見極め、背中から風が当たるような位置のフェンスの前に立った。
 これからやろうとしていることは、まさに一世一代をかけた露出行為だ。決して後戻り出来ない興奮が待っている。耳の奥で心臓の鼓動が反響してとにかくうるさかった。
 ひときわ強い風が吹いた瞬間。

 私は丸めたコートを高く放り投げていた。

 丸めたコートは思ったよりも高く飛び、軽々フェンスを飛び越える。徐々に丸まりが解けながら地面へと向かって落下し始めて。広がって、風に乗って飛んでいく。
 私は素っ裸で屋上に取り残された。
 それを自覚した瞬間、いろんな気持ちが吹き出して、最高の絶頂に達した。膝がガクガク震えて立っていられない。屋上にへたりこんで、私はただただわき上がる快感に身を浸していた。
 その後、私は。




 ふわり、と風に吹かれて地面に向けて落下したコートは、ちょうど裏路地にある非常階段の手摺りに引っかかった。
 パタパタと風にはためきながら暫く揺れていたコートだが、風が収まると同時にその動きもなくなる。
 日が暮れて、コートが夜の闇に包まれつつあった時、その裏路地に現れた人影があった。しきりに周囲を見渡しながら、歩き回るその人影は、明らかに何かを探している風だった。
「おかしいなぁ……たしか……この辺に落ちたと思うんだけど……」
 小さく呟く声は、まだ若い女性のものだった。しきりに周囲を探す彼女は、なにを考えているのか、妙に熱っぽい目をしていた。
 そのとき、何の運命のいたずらか、先ほど上から落ちてきたコートの、ポケットに入れられていたサングラスがそこからこぼれ落ちた。かしゃんという音がして、何かを探していた女性はびくりと肩を竦ませる。サングラスが落ちた音のした方に視線を向け、その目がコートを捉えた。
「……っ」
 声もなく女性がそのコートに走り寄る。手を伸ばせば触れそうな近くで、女性は緊張で喉をならした。
「これ、が……」
 実はこの女性、夕刻にビルの屋上で展開されていた不振な女の痴態の一部始終を見ていた。そのあまりに刺激的で倒錯的なショーに見ていた女性の心臓は高まりっぱなしだった。
 その女は最後に最初着ていたコートを屋上から投げ捨て、その後屋上から消えてしまったが、見ていた彼女にはいつまでもその女の姿が見えているようだった。
 いてもたってもいられなくなった彼女は、あの女が投げ捨てたコートを求めてここに来てしまったのである。
 そしていま。彼女の目の前にはそのコートがある。
(……これをたった一枚着た姿で……あの人は……)
 どくん、と心臓が高鳴る。
 震える指先を、そのコートに伸ばした。
 
 
 
 
~『露出感染』 終わり~
 
 
 
 
[ 2013/07/05 20:00 ] 小説・短編 露出感染 | TB(0) | CM(0)

全身スーツイベント1

 裸を晒しているような感覚に、顔が熱くなる。
「やっぱりこれ……へんだよぉ……」
 半ば泣きそうになりながらわたしはその服?をつまんだ。それは肌に限りなく張り付くような形でまとわりついているタイツのような性質を持っていて、それが全身を覆っていた。体のラインがはっきりでている、どころかほとんど裸の状態と変わらないレベルの外見になっていた。首から上の部分には何もされてないけど、逆に首から上が普通だから余計になんだか首から下が変な感じがする。
 姿見に写ったわたしはそんな格好だった。
「や、やっぱりむりむり! こんなのを着て人前に出るなんて無理!」
 わたしはこの服を脱げないかどうか試してみたけど、それは全く叶わなかった。そもそも着るという表現を使ったけど、実際これを身につけた方法はスプレーの塗装みたいな感じだったからだ。あれはまるで自分が無着色のプラモデルになったような感覚だった。
 これを脱ごうと思うと、無理矢理破く以外に方法はない。けれど、割と強めに引っ張ったのにそれは全く破ける気配がなかった。
「うう……乗せられるんじゃなかった」
 わたしはこうなってしまった理由を思い返していた。

 そもそもは、この店で働いている友人の勧誘から始まった。

 
 

「アルバイト?」
 学校でその話を振られた時、私は首を傾げてしまった。その子は両手をあわせてわたしを拝んでいて、その澄んだ目でわたしを見つめている。
「そうなの! 今度の土曜日、イベントがあって……そこで働く人を確保してこいって言われちゃってるの! だからお願い、その日だけでいいから……来てほしいの!」
「それを……どうして私に?」
 わたしはまずそれが不思議だった。確かにこの子とわたしは友達だけど、そこまで深い間柄じゃない。むしろ彼女はよくつるんでいる友人が他にいるはずで、こういったお願いを持って行くならそっちが先じゃないかと思った。
 彼女は少し気まずげにいう。
「いや……それが、その、あの二人には断られることがわかってるから……」
「……二人に断られるようなことをわたしに頼むの?」
 何かイヤな感じだ。そう解釈することもできたのでわたしがうろんげな視線を向けると、彼女はますます申し訳なさそうに頭を下げる。
「なんていうか、その……ちょっとあれであれな服を着てもらうことになるから……あの二人は絶対いやがるんだよね……」
「あれであれな服ってなに……?」
 ますます胡散臭い話だ。わたしが半眼になると、彼女はほとんど平伏する勢いだった。
「お願い! 一日だけでいいから! 一日のお給料としては破格だと思うし!」
「……ちなみに何万円?」
 あり得ないことだと思いつつも、わたしはつい聞いてしまった。万なんてそんな額がでるわけない。言ったとしても一万円だろう。
「えっと……10万円+α?」
「……は?」
 何も言えなかった。あり得ない金額に目が眩む。
「基本は10万で、それにプラスして頑張った分だけ」
「……これは罠だ!」
 思わず叫んでしまった。注目を浴びて、慌てて彼女がわたしの口を抑えてくる。
「さ、騒がないで!」
「いや、いやいやありえないでしょなにそれまさか、ちょっとあれって……えっちい仕事なの?」
 言ってて恥ずかしくなってきた。彼女の顔も赤く染まる。
「ちちち、違うよ! それは決してメインじゃないよっ」
「メインじゃないってことは含むんじゃん! やだよ、絶対やだ!」
「写真撮影は厳禁だし、おさわりも厳禁だから大丈夫だってばぁ!」
「やだってば!」
「一日だけだよ!?」
「……うっ」
「一日我慢すればいいんだよ!?」
「……うぅっ」
「一日で翌日からうはうはだよ!?」
「ううぅっ」
 なぜだろう、いかにも危ないってことはわかっているはずなのに、その恐ろしいほどの魔力に抗いきれない。
 それくらい十万円という言葉は魔力を持っていた。
 
 
~続く~

全身スーツイベント2

「……危険は、ないの?」
「私が何回もやってていまこの通りだよ!」
「イヤな思いをすることは?」
「お客さんは皆会員の人で紳士ばっかりだよ! 変態かもしれないけど紳士だよ!」
「……ちょっと不安になった」
「途中で本気で無理だと思ったら抜けられるように交渉するから! イベント開始時に人数が揃ってないと見窄らしく見えちゃうんだよ!」
「…………うぅ……で、でも、や、やっぱり……」
「私を助けると思って! 藤原さんが大好きなジャンボスペシャルクリーミーパフェの権利譲るから!」
 学校近くのファミレスで、お一人様限定月一回しか注文できない幻のパフェの名前を出された。それは当然のことながら大人気で、その注文権を巡って血を血で洗う大闘争が起きたとか起きなかったとか。
「…………ね」
「え? なになに?」
「今回、だけだからねっ。途中で嫌になったら帰るからね!」
 わたしが半ばやけになってそう叫ぶと、彼女はきらきらと嬉しそうな顔でわたしにとびついてきた。
「わあい! ありがとう藤原さん!」
 あとから思うと、早まったかもしれない。
 けど、そんなに喜んでくれるんならいいか、とも思った。
 
 
 
 
「……ないわー」
 はっきりと経緯を思い出してしまったわたしは、我ながら乗せられた理由にがっくりとうなだれた。お金とパフェって。あまりにもあれすぎて自分ですらびっくりだ。
 こんな裸も同然の格好でお客さんの前に立つのかと思うと、いくらなんでも恥ずかしすぎる。
「やっぱり無理! いまからでもやめて……」
 そう呟いた時だった。
 急に全身がきゅう、と引き締められるような感じがした。
「う……!?」
 いままでも十分ぴっちりしていたはずのそれが、いままで以上に私の体を締め付け始める。わたしは突然生じた変化に驚くばかりだった。
「な、なにこれなんなのこれ……っ、うっ、うぁっ」
 ギチギチという音がしそうなほど着せられたスーツはわたしの体を締め付けてくる。さっきまでの感触はタイツに近かったけど、いまはラバーとかそういう素材の方が近い感覚だった。
 腕や足を曲げるだけでも重労働で、全身スーツの中で汗が滲むのがわかる。
「うわぁああ、なんなのこれ!」
 その叫び声を聞きつけてか、私をこの場所に引っ張ってきた友達がやってきた。
「藤原さん、どうかしたの? ……うわっ、さすが藤原さん! すっごく似合ってるよ!」
「ぜんぜん嬉しくないし! それよりなんなのこれっ、さっきまで柔らかいタイツみたいな感じかと思ったら……急に固くなって……!」
「ああ、それは時間経過と共にラバー素材みたいに固くなる不思議な材質なの。人体に害はないからあんしんしていーよ。実際、私もこうして何度も着てるけどぜんぜん問題ないし」
 彼女はわたしがいま着ているものと同じ素材で色違いのものを着ていた。当然彼女の体のラインは全裸のレベルで露わになっているのだけど、わたしと違って彼女は恥ずかしがる様子はなく、堂々としていた。
「はずかしいと思うからはずかしいんだよ! 一種の……ほら、衣装だと思えばはずかしくないよ!」
「どう考えてもはずかしいよ!」
 さすがにそれは断言できる。この格好ではずかしくないと言い切れるのはおかしい。
「まあ、ほら、結局は慣れだと思うし」
「……慣れたくないなぁ。っていうか慣れないからね!?」
 今日だけの約束だ。もう二度とこんな服を着たくもないから、絶対に今日だけにしようとわたしは心に決める。
 彼女は苦笑いを浮かべながらも、わたしの側に来るとわたしの手を取った。
「とにかく、そろそろイベント開始時間だからいくよー。ほらほら」
「えっ、ちょっと、わたしはもう無理だって!」
「大丈夫大丈夫ー。早くいかなきゃー」
 思いがけず強い力でわたしは控え室から引きずり出された。

 そして、イベントが始まる。


~続く~

全身スーツイベント3

 引っ張り出された先は、綺麗なバーのような空間だった。
 あまりこれまでの生活では縁の無かった……映画でよく大人がお酒を飲むシーンで使われていたような、大人びたバーのイメージ。少し暗めに落とされた照明、微かに甘い匂いが立ちこめている。
 広い部屋の各所にはソファや机がが置かれていて、そこにたくさんの人が座っていた。どの人もなんだか落ち着いた感じの人達で特に粗野な人やウルサいひとはいなくて、どの人もただ目の前に置かれたお酒を楽しんでいるという風情だった。
 わたしがそのよく知らない雰囲気に圧倒されている間に、手を引かれてカウンターらしい場所の前に連れていかれた。
「マスターっ、お待たせしました!」
 マスターと呼ばれたカウンターの中にいた人が彼女とそれに連れられてきたわたしを見て優しい笑顔を浮かべる。
「やあ、美里ちゃん。ご苦労様。藤原さんも今日はよろしくね。そのスーツ似合ってるよ」
「え……あ……その……はぁ……」
 わたしは何を言えばいいのかわからなくて、ただマスターの視線から逃れたくて、胸と股間を両腕で隠しながら応じる。そうしていたら、いつのまにか背後に回っていた友達の美里がわたしの両腕を取って隠させないようにする。
「ひっ、み、美里っ」
「隠しちゃだーめ。見えてないから大丈夫だって。ぽっちだって見えてないし」
「そ、そんなこと言ったって……」
 美里の手を外そうとわたしが苦心していると、近くに寄ってきた女の人がいた。
「初々しいですこと」
 朗らかな口調でそういう女の人の格好を見て、わたしは言葉を失った。
 その人は、裸だったからだ。
「ふぇ!?」
「あ、ママさんだー。だいじょーぶだよ、ほらよく見てみて」
「……え?」
 いたずらが成功したような、にこやかな笑みでママさんと呼ばれた女の人は笑っている。
 そう言われてよくよく見直してみると、ママさんは裸じゃなかった。着ているのはわたしたちが着ているのと同じスーツなんだけど、色が肌色なのだ。じっくり見れば裸じゃないことがわかるけど、逆に言えばじっくりみないと裸じゃないことはわからない。
「うふふ。その反応もうぶでいいわね。最初は美里ちゃんもそんな反応だったのに……」
 片手を頬に当ててわざとらしいため息を吐くママさん。美里はくすくすと笑う。
「さすがにもう何度も見てたら慣れますよー」
「そうね。ごめんなさい。別に意地悪をいうつもりはなかったのだけど……」
 ママさんは美里に対してそういってからわたしを改めてみた。思わず背筋が伸びる。
「藤原さん、だったわね? ごめんなさいね驚かせて。この店ではちょっと刺激的な驚きを、がテーマなの。裸かと思うと一瞬どきっとするでしょう?」
「……は、はぁ……確かに、驚きました」
 そういうものだと思わないとやってられない。わたしはよく考えることを放棄した。
 ママさんはわたしに対して仕事内容の説明を始める。
「今回の全身スーツイベントは難しいことは何もしなくていいの。ただ、お客様のテーブルに行って、お酒をお次したり話し相手になったりするだけでいいの」
「……そ、それだけなんですか?」
「ええ。お客様に対しては色々な禁止事項を設けているけど……女の子に触っちゃだめとか素性を探らないとか……女の子の方には禁止事項は一つだけ」
「な、なんでしょう?」
 イヤなことを言われても我慢しろ、とかかなとわたしは思ったけど、ママさんはこともなげにいった。
「逃げないこと。イヤなことはイヤって言っていいし、質問も答えたくないなら答えなくていい。ただ、その場から逃げないこと。向こうは女の子の恥じらう姿を見たいのだから、体を隠すのも質問に答えないのもあり。だけどお客様の前からいなくなっちゃ意味がないからね」
「……な、なるほど」
 そうはいったものの、本当はよくわからなかった。それの何が楽しいのかと思ってしまう。大人ってよくわからない。
 その説明が済んだあと、ママさんに連れられて今度は店の中で一番高いステージのような場所へと連れて行かれた。


~続く~

全身スーツイベント4

 そこに立つと店のどこからでも見えるようになっているらしく、普段の簡単なショーや演奏会などではこのステージが活用されるらしかった。
 そのステージの上にはすでに十数人の女の子達が集まっていて、はずかしそうにしている人はいても、わたしのように体を隠そうとしている人はいなかった。そのことから皆ある程度慣れている人達なのだと察する。
「皆お待たせしたわね。そろそろイベントを始めるわよ。あと、今日助っ人に来てくれた藤原さんよ。真面目ないい子だから困ってたら助けてあげてね」
 元気よく女の人達が応える。
「ふ、藤原です。よろしくお願いします」
 とりあえず皆に挨拶をしてから、わたしは美里の手を引く。
「どうしたの?」
「どうしたの、じゃないわよ……! いっぱい人いるじゃないっ。これなら別に人手不足とか……」
「あ、いやいや! 違うんだよほんとに足りなかったの! うちはテーブルが16席あって、このイベントの時は全部の席が埋まるのね? で、藤原さんがOKしてくれなかったら、私を含めて15人しかいなくて、一つのテーブルが確実に余っちゃうの。それってだめじゃない?」
「……そう、かもしれないけど……っていうか、それだとわたし途中でイヤになっても抜けられないじゃない」
「途中で抜けるのはいいの。お客様が加減を間違えて女の子を逃がしちゃったって扱いになるから。でも最初から足りないのは店側の問題でしょ?」
 納得いくような、いかないような。
 でもまあいまさら言っても仕方ないし、ここで話が違うと言って帰れるようならそもそもこんな風に流されてきていない。
 覚悟を決めるしかないみたいだった。
「ほらほら、そこの二人遊んでないで並んで並んで」
 ステージの上で並んでいた人に促されて、わたしと美里は列の端に並ぶ。
 それほど待つという感覚もなく、いきなりステージにスポットライトが当たった。ぱっと体を照らされて思わず両腕で体を守ってしまう。スポットライトの明かりが強くてまるで無数の視線が突き刺さっているような感覚だった。顔をあげられない。
「みなさん、本日はおこしいただきありがとうございます。今宵は心行くまで……」
 ママさんが落ち着いた調子で挨拶を続けている。わたしはその時間が一刻も早く過ぎ去ることを望んでいた。
 挨拶も終盤にさしかかったというところで、わたしの側にママさんがやってきた。
「今日のために、新しい女の子に来てもらっています」
 わたしのことだと思った。店中の視線がわたしに集中するのがわかる。わたしはますます顔があげられなくなった。
「ごらんの通り、まだこの店の雰囲気にも慣れていない子ですので、ご自分のテーブルにこの子が来た際には、ぜひともお手柔らかに、優しくしてあげてくださいませ。……ご挨拶はできそう?」
 わたしはそうママさんにこっそり問いかけられ、慌てて首を横に振った。ここでこうして立っているのだけでも精一杯なのに、何か喋るなんてできそうにない。幸いママさんは強要しなかった。
「ご挨拶は皆さんのテーブルに回った時にさせていただきたいとのことです。……それでは、禁止事項に気をつけて、当イベントをお楽しみください」
 そう言ってママさんが一礼し、他の皆も一礼する。元々俯いていたけど、わたしも慌てて頭を下げた。
 穏やかな拍手が店内に満ちる。
 そしてイベントは始まった。
 
 
~続く~

全身スーツイベント5

「おお、先ほどの新人さんですな。舞台の上ではわかりませんでしたが、実に可愛らしい! 俯いておられるのはもったいないですぞ!」
「ど、どうも、ありがとうございます……」
 そのいかにも紳士風な男の人は上機嫌でわたしをそう誉めてくれた。
 けど、男の人の視線が自分に向けられていると思うと、わたしは体を隠す手をどけられなかった。
「えっと……藤原、と申します。今日は友達……友人の、美里の紹介で……」
 恥ずかしいやら緊張するやらでわたしはつっかえつっかえ自己紹介をする。本名を名乗るのは危険じゃないかと思ったけど、会員の選定はきちんとしていると言われると何も言い返せない。実際美里も本名でやってるって話だったし、それを信じることにしていた。
 わたしが自己紹介を続けようとすると、その紳士さんは朗らかに手を横に振った。
「ああ、そんなに固くならなくてもよいですぞ。自由に、楽にはなしてくださればよろしいのですよ。そんなことを気にする者はこの店におりませんからな」
「え、あ、はい……」
「ほら、ご覧なさい」
 そういって紳士が示したテーブルでは、美里が快活に笑いながら大学生くらいの男の人の隣に腰掛け、まるで猫のようにその体を男の人に擦り付けていた。
「……!?」
 行動にもびっくりしたけど、その言葉使いにもびっくりした。
「全く、美里ちゃんは甘えん坊だねぇ」
「ふふふー。だってお兄ちゃんが頼もしいからー。安心するんだものー」
 まるで本当の兄と妹のように、二人はじゃれあっている。逆に本当に兄と妹だったらこんなに仲良くはないかもしれないけど……それは問題じゃない。
 大事なのは、関係性がどうみても客と店員のそれじゃないってことだった。
 あっけに取られていると、紳士さんがおもしろそうに笑ってみせる。
「いやぁ、美里嬢のあれは少々行き過ぎではありますが、ああいう態度を取られたからといって、喜ぶ者はいても怒る者はおりませんぞ」
「そ、そうなんですか……」
 あんなに密着して恥ずかしくないのかな、とわたしは思ってしまう。
「ところで、藤原嬢」
「は、はいっ」
 紳士さんに呼ばれて思わず背筋が伸びた。何を言われるのかとどきどきしてしまう。
 そんな緊張が伝わってしまったのか、紳士さんはわたしを安心させるように笑ってみせる。
「そう構えずともよいですぞ。可能ならば、で構わないのですが……腕で体を隠すのをやめる、というのは可能ですかな?」
 その視線がわたしの腕をなぞる。わたしはそれだけでぞくぞくとするものを感じた。
「……え……あ、ぅ…………」
「頑張ってくださると、私としてはとても嬉しいのですがな……」
「……ぅ、う……」
「初めての方にそうたくさんのことは望みませんぞ。今回に限っていえば、体を隠さず、両腕を後ろに回すだけで構いません」
「……そ、れは」
「この店の会員証に誓って、それ以上は求めないとお約束しましょう」
 わたしは迷っていた。この人達はいわば全身スーツを着た私たちを見に来ているわけであり、それを期待しているわけだ。
 それなのに、わたしがいましているように腕で隠すというのは、その期待を裏切る行為である。あくまで店員という立場で言えば、わたしのやっていることはお客さんに対する裏切り行為なわけである。それを考えれば、紳士さんのいう通り、体を隠すのをやめるのが誠実な行為であるようには思う。
 けれど。
 それ以上にこの格好が恥ずかしくて、その姿を晒したくないと考えるのも、わたしの本心なのだった。
「……っ、うー……っ」
 喉が震える。顔が赤くなるのがわかる。きっといまわたしはものすごく赤い顔になっていることだろう。
 わたしが動けないでいる間も、紳士さんはわたしを急かすことなく、自然体で待ってくれていた。その紳士的な態度に、応えなければならないと思う。
「……、が、がんばり……ます……」
 わたしはちゃんと服を着てる。ちょっとえっちぃ感じの、全身スーツだけど、着てることは着てる。そう、スキューバダイビングなんかをしていると思えば……恥ずかしく、ない。
 そう自分自身に言い聞かせて、わたしはゆっくりと両腕を解いて、思い切って腕を背後に回す。体の前面が、全て紳士さんの視界に晒された、はず。わたしは脚が震えて膝が崩れそうになるのをなんとかこらえた。かっと全身が熱くなるのを感じる。
 どんな風に見えているかなんて、想像したくなかった。
 紳士さんはしばらくわたしの体を眺めた後、優しい笑顔で口を開いた。
「美しいですよ。藤原嬢。何ら恥じることのない、美しい肢体です」
 そっと柔らかな声で発された賛辞を受け、わたしは恥ずかしいながらも頑張ったかいはあったかな、と恥ずかしさでうまくまとまらない頭でぼんやりと思った。


 イベント終了後、わたしは控え室で燃え尽きていた。
 最初の紳士さんだけじゃなく、あとのお客さん達もみんな紳士的な人達ばかりだった。それは認める。
 けど、だからといって恥ずかしさがなくなるわけじゃなく、散々羞恥心を煽られて刺激されてわたしは疲れ果てていた。
「藤原さんお疲れっ! いやー、すごいよ! 藤原さん大人気! みんな口々にあたしに『連れてきてくれてありがとう』っていうんだもん! もう鼻が高かったよ!」
「……ああ、そう……」
 嬉しそうなところ美里には悪いけど、わたしはその言葉に応じる余裕がなかった。いろんな意味で疲れ果てていた。
「ママさんからも、また是非にっていわれたんだけど……その話は今度にしよっか」
 断るつもりだったけど、そう美里に言われてしまうと、わたしはそれでいいかと思った。さっさと家に帰って寝たいというのもあったし。
「そうね……早く帰りたいんだけど、美里。この服どうやったら脱げるの?」
「ああ、それなら」
 美里は控え室の一角に置かれていた瓶を手に取った。その中身を片手の上に出しながらわたしに近づいてきたかと思うと、いきなりその手を私の首筋にすり付けてくる。冷たい液体の感覚が首筋をぞわりと襲った。
「ひゃっ!? な、なにす……っ」
 いきなり液体が塗られた部分が熱くなって、それまでぴっちりと肌に張り付いていたスーツが緩む。
「この液体使えば脱げるよ。肩口辺りまでこれで広げればあとは多少強引に脱いでいけばいいから」
 頑張ってね、と美里は言って部屋を出ていった。気を使ってくれたのかもしれない。
 わたしは緩んだ首筋の部分をつかんで、ひっぱってみる。ぐぐっと広がって、脱げそうな気がした。
「えっと……こう、やって……っ」
 肩を抜くようにすくめながら、なんとか抜け出ようとやってみる。
 なんとなく蛇の脱皮のようだと思った。
 何とか両腕を引き抜き、腰までスーツをずりさげる。裸の上半身に当たる室内の空気が鋭敏に感じられた。
(うぅ……もうなんだかなぁ……)
 なんとなく、感覚が研ぎ澄まされているような感じがした。蒸れていたからかもしれない。
 わたしはそのままスーツを脱いでしまおうとして、股間の辺りまでずり下げたとき、異常に気づいた。
「え……?」
 脱ぎかけたスーツと、わたし自身の股間。

 その間を、透明な、液体が、糸を引いていた。

 わたしは決して知識の豊富なほうではないけど、それが何なのか知らない訳じゃない。
「これ……って……」
 気持ちよくなった時に出るはずのもの。それが糸を引いているということは。
「……うそ、でしょ?」
 あの姿で男の人の前に出て、話をして、見られて……感じてしまっていたということになる。
 わたしはしばらく中途半端にスーツを脱ぎかけた状態のまま、動けなかった。

 それは、わたしが見られることで感じてしまった、初めての経験だった。
 
 
~全身スーツイベント 終わり~
 
 

奪衣術1

 何事も極めるところまで行きつくと、魔法と見間違う技術になる。
 
 俺は町中を歩きながら、ターゲットを求めて道行く人物を見定めていた。
 そんな俺の前から、その彼女にとっては不幸にも、非常に情欲をそそられる人間が歩いてくる。
 学生だろうか。清純そうな制服に身を包み、真面目そうな身だしなみをしている。メールかなにかを打っているのか、スマートフォンに視線を落とし、前を見ている気配はない。余談だがこの手のタイプの人間を見るたびに危なくてハラハラする。いつか事故を起こしかねないことを注意してあげるのが優しさだろうか。とはいえ、いまの世の中下手に声をかけることも出来ない。
 そんな風に考えながら、俺はその子と触れあう寸前の距離ですれ違う。

 その瞬間、俺と彼女の間に一陣の風が吹いた。

 そのまま彼女とすれ違い、数秒。
「……?」
 俺は振り返りはしなかったが、なんとなく彼女が足を止めたのがわかった。
 そして次の瞬間。
「ひゃっ!?」
 彼女が小さな悲鳴をあげた。それに反応したという体で、俺は彼女の方を振り替える。彼女は立ち止まり、内股になって胸の前に腕をかざしていた。
 微かに後ろを向きかけた顔は一瞬で赤くなっている。周りの通行人はそんな彼女を奇妙な顔で眺めている。
 俺はそれに合わせて表情を変えつつ、内心では愉悦に満ちた笑みを浮かべていた。
(そうそう……そういう顔が最高なんだよ)
 恥ずかしくて仕方ないという顔。うっすらと涙が溜まり、頬が赤く染まっている。
 彼女は慌てて周囲を見渡していたが、求めるものがないことを知ると、スカートの裾を気にする素振りを見せつつ、胸の前に鞄を抱えて去っていった。
 その場所から十分離れ、周囲に誰もいないところまで移動する。
 そこで俺はポケットの中に突っ込んでいた手を外に出した。

 掴んでいた、ブラとショーツの二枚の布切れと共に。

 彼女とすれ違う一瞬で、抜き取ったのだ。
 どうやってか、などという無粋なことは聞かないで欲しい。世の中には信じられない秘技を持つ人間がいるとだけ言っておこう。
 俺はこの秘技を使って、女子から服を奪うことを得意としていた。
 
[ 2013/10/28 20:01 ] 小説・短編 奪衣術 | TB(0) | CM(0)

奪衣術2


 奪衣術の有効射程はかなり短い。
 具体的に距離を計ったことはないが、警戒心の高い人間なら不自然に思う程度の距離にまで近付く必要がある。
 道端ですれ違い様にそれをする時はそれが不自然でないようにルートを計算する必要がある。
 逆に言えば。
 密着せざるを得ない状況下でならば、俺はこの能力を遠慮なく発揮することが出来るのだ。


 俺はある朝、満員電車に乗っていた。
 ラッシュ時の混雑は非常に苦しく、大変だが、俺にとっては稼ぎ場であり、同時に狩り場でもあった。
 周囲の男女問わず利用客から、こっそり100円と1000円を頂戴する。俺の奪衣術は、こういう応用の仕方も出来るのだ。財布ごと盗むのが一番手っ取り早いが、さすがに大ごとになる。
 その点、100円や1000円なら、記憶違いと考える人間が大多数だし、わざわざ警察に届け出たりはしまい。
 まあ、こんなのはついでだ。真の目的は別にある。
 それは、いま俺の背後にいる女。
 恐らく会社員なのだろう。スーツに身を包んでいて、けだるそうにしている。
 女性専用車両に行けばいいと思うが、タイミングが合わなかったのか何なのか、満員電車に乗り込んでしまったのだと思われる。
 最近は痴漢冤罪事件も多いからか、周りの男性達はその女性に背を向けて、吊革に手を伸ばしている。
 もちろん俺も背中を向けているのだが、こういうシチュエーションになるのを待っていたのだ。
 俺は不自然じゃない程度に身体を斜めにする。俺とその女性は丁度背中合わせに立っていたのだが、これで少し俺が彼女の方を振り返るような状態になった。
 こっそり息を整え、チャンスを窺う。
 電車がカーブに差し掛かり、ぐらりと全体が揺れる。

 その瞬間、俺は動いていた。

 窮屈な車内でどうやったのかは企業秘密だ。
 結果だけ言うと。
「……? ……!?」
 全裸になったその女性会社員は、驚愕のあまり上げそうになった声を必死に押し殺していた。
[ 2013/10/29 20:00 ] 小説・短編 奪衣術 | TB(0) | CM(0)
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定期談話会『創作の集い』を毎月第2土曜日20:00から行っています。
⇒ 『創作の集い』概要