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黎明媚態

露出系、羞恥系の18禁小説を書いています。関連の同人・版権作品のレビューも書きます。18歳以下の閲覧禁止。

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全身スーツイベント1

 裸を晒しているような感覚に、顔が熱くなる。
「やっぱりこれ……へんだよぉ……」
 半ば泣きそうになりながらわたしはその服?をつまんだ。それは肌に限りなく張り付くような形でまとわりついているタイツのような性質を持っていて、それが全身を覆っていた。体のラインがはっきりでている、どころかほとんど裸の状態と変わらないレベルの外見になっていた。首から上の部分には何もされてないけど、逆に首から上が普通だから余計になんだか首から下が変な感じがする。
 姿見に写ったわたしはそんな格好だった。
「や、やっぱりむりむり! こんなのを着て人前に出るなんて無理!」
 わたしはこの服を脱げないかどうか試してみたけど、それは全く叶わなかった。そもそも着るという表現を使ったけど、実際これを身につけた方法はスプレーの塗装みたいな感じだったからだ。あれはまるで自分が無着色のプラモデルになったような感覚だった。
 これを脱ごうと思うと、無理矢理破く以外に方法はない。けれど、割と強めに引っ張ったのにそれは全く破ける気配がなかった。
「うう……乗せられるんじゃなかった」
 わたしはこうなってしまった理由を思い返していた。

 そもそもは、この店で働いている友人の勧誘から始まった。

 
 

「アルバイト?」
 学校でその話を振られた時、私は首を傾げてしまった。その子は両手をあわせてわたしを拝んでいて、その澄んだ目でわたしを見つめている。
「そうなの! 今度の土曜日、イベントがあって……そこで働く人を確保してこいって言われちゃってるの! だからお願い、その日だけでいいから……来てほしいの!」
「それを……どうして私に?」
 わたしはまずそれが不思議だった。確かにこの子とわたしは友達だけど、そこまで深い間柄じゃない。むしろ彼女はよくつるんでいる友人が他にいるはずで、こういったお願いを持って行くならそっちが先じゃないかと思った。
 彼女は少し気まずげにいう。
「いや……それが、その、あの二人には断られることがわかってるから……」
「……二人に断られるようなことをわたしに頼むの?」
 何かイヤな感じだ。そう解釈することもできたのでわたしがうろんげな視線を向けると、彼女はますます申し訳なさそうに頭を下げる。
「なんていうか、その……ちょっとあれであれな服を着てもらうことになるから……あの二人は絶対いやがるんだよね……」
「あれであれな服ってなに……?」
 ますます胡散臭い話だ。わたしが半眼になると、彼女はほとんど平伏する勢いだった。
「お願い! 一日だけでいいから! 一日のお給料としては破格だと思うし!」
「……ちなみに何万円?」
 あり得ないことだと思いつつも、わたしはつい聞いてしまった。万なんてそんな額がでるわけない。言ったとしても一万円だろう。
「えっと……10万円+α?」
「……は?」
 何も言えなかった。あり得ない金額に目が眩む。
「基本は10万で、それにプラスして頑張った分だけ」
「……これは罠だ!」
 思わず叫んでしまった。注目を浴びて、慌てて彼女がわたしの口を抑えてくる。
「さ、騒がないで!」
「いや、いやいやありえないでしょなにそれまさか、ちょっとあれって……えっちい仕事なの?」
 言ってて恥ずかしくなってきた。彼女の顔も赤く染まる。
「ちちち、違うよ! それは決してメインじゃないよっ」
「メインじゃないってことは含むんじゃん! やだよ、絶対やだ!」
「写真撮影は厳禁だし、おさわりも厳禁だから大丈夫だってばぁ!」
「やだってば!」
「一日だけだよ!?」
「……うっ」
「一日我慢すればいいんだよ!?」
「……うぅっ」
「一日で翌日からうはうはだよ!?」
「ううぅっ」
 なぜだろう、いかにも危ないってことはわかっているはずなのに、その恐ろしいほどの魔力に抗いきれない。
 それくらい十万円という言葉は魔力を持っていた。
 
 
~続く~

全身スーツイベント2

「……危険は、ないの?」
「私が何回もやってていまこの通りだよ!」
「イヤな思いをすることは?」
「お客さんは皆会員の人で紳士ばっかりだよ! 変態かもしれないけど紳士だよ!」
「……ちょっと不安になった」
「途中で本気で無理だと思ったら抜けられるように交渉するから! イベント開始時に人数が揃ってないと見窄らしく見えちゃうんだよ!」
「…………うぅ……で、でも、や、やっぱり……」
「私を助けると思って! 藤原さんが大好きなジャンボスペシャルクリーミーパフェの権利譲るから!」
 学校近くのファミレスで、お一人様限定月一回しか注文できない幻のパフェの名前を出された。それは当然のことながら大人気で、その注文権を巡って血を血で洗う大闘争が起きたとか起きなかったとか。
「…………ね」
「え? なになに?」
「今回、だけだからねっ。途中で嫌になったら帰るからね!」
 わたしが半ばやけになってそう叫ぶと、彼女はきらきらと嬉しそうな顔でわたしにとびついてきた。
「わあい! ありがとう藤原さん!」
 あとから思うと、早まったかもしれない。
 けど、そんなに喜んでくれるんならいいか、とも思った。
 
 
 
 
「……ないわー」
 はっきりと経緯を思い出してしまったわたしは、我ながら乗せられた理由にがっくりとうなだれた。お金とパフェって。あまりにもあれすぎて自分ですらびっくりだ。
 こんな裸も同然の格好でお客さんの前に立つのかと思うと、いくらなんでも恥ずかしすぎる。
「やっぱり無理! いまからでもやめて……」
 そう呟いた時だった。
 急に全身がきゅう、と引き締められるような感じがした。
「う……!?」
 いままでも十分ぴっちりしていたはずのそれが、いままで以上に私の体を締め付け始める。わたしは突然生じた変化に驚くばかりだった。
「な、なにこれなんなのこれ……っ、うっ、うぁっ」
 ギチギチという音がしそうなほど着せられたスーツはわたしの体を締め付けてくる。さっきまでの感触はタイツに近かったけど、いまはラバーとかそういう素材の方が近い感覚だった。
 腕や足を曲げるだけでも重労働で、全身スーツの中で汗が滲むのがわかる。
「うわぁああ、なんなのこれ!」
 その叫び声を聞きつけてか、私をこの場所に引っ張ってきた友達がやってきた。
「藤原さん、どうかしたの? ……うわっ、さすが藤原さん! すっごく似合ってるよ!」
「ぜんぜん嬉しくないし! それよりなんなのこれっ、さっきまで柔らかいタイツみたいな感じかと思ったら……急に固くなって……!」
「ああ、それは時間経過と共にラバー素材みたいに固くなる不思議な材質なの。人体に害はないからあんしんしていーよ。実際、私もこうして何度も着てるけどぜんぜん問題ないし」
 彼女はわたしがいま着ているものと同じ素材で色違いのものを着ていた。当然彼女の体のラインは全裸のレベルで露わになっているのだけど、わたしと違って彼女は恥ずかしがる様子はなく、堂々としていた。
「はずかしいと思うからはずかしいんだよ! 一種の……ほら、衣装だと思えばはずかしくないよ!」
「どう考えてもはずかしいよ!」
 さすがにそれは断言できる。この格好ではずかしくないと言い切れるのはおかしい。
「まあ、ほら、結局は慣れだと思うし」
「……慣れたくないなぁ。っていうか慣れないからね!?」
 今日だけの約束だ。もう二度とこんな服を着たくもないから、絶対に今日だけにしようとわたしは心に決める。
 彼女は苦笑いを浮かべながらも、わたしの側に来るとわたしの手を取った。
「とにかく、そろそろイベント開始時間だからいくよー。ほらほら」
「えっ、ちょっと、わたしはもう無理だって!」
「大丈夫大丈夫ー。早くいかなきゃー」
 思いがけず強い力でわたしは控え室から引きずり出された。

 そして、イベントが始まる。


~続く~

全身スーツイベント3

 引っ張り出された先は、綺麗なバーのような空間だった。
 あまりこれまでの生活では縁の無かった……映画でよく大人がお酒を飲むシーンで使われていたような、大人びたバーのイメージ。少し暗めに落とされた照明、微かに甘い匂いが立ちこめている。
 広い部屋の各所にはソファや机がが置かれていて、そこにたくさんの人が座っていた。どの人もなんだか落ち着いた感じの人達で特に粗野な人やウルサいひとはいなくて、どの人もただ目の前に置かれたお酒を楽しんでいるという風情だった。
 わたしがそのよく知らない雰囲気に圧倒されている間に、手を引かれてカウンターらしい場所の前に連れていかれた。
「マスターっ、お待たせしました!」
 マスターと呼ばれたカウンターの中にいた人が彼女とそれに連れられてきたわたしを見て優しい笑顔を浮かべる。
「やあ、美里ちゃん。ご苦労様。藤原さんも今日はよろしくね。そのスーツ似合ってるよ」
「え……あ……その……はぁ……」
 わたしは何を言えばいいのかわからなくて、ただマスターの視線から逃れたくて、胸と股間を両腕で隠しながら応じる。そうしていたら、いつのまにか背後に回っていた友達の美里がわたしの両腕を取って隠させないようにする。
「ひっ、み、美里っ」
「隠しちゃだーめ。見えてないから大丈夫だって。ぽっちだって見えてないし」
「そ、そんなこと言ったって……」
 美里の手を外そうとわたしが苦心していると、近くに寄ってきた女の人がいた。
「初々しいですこと」
 朗らかな口調でそういう女の人の格好を見て、わたしは言葉を失った。
 その人は、裸だったからだ。
「ふぇ!?」
「あ、ママさんだー。だいじょーぶだよ、ほらよく見てみて」
「……え?」
 いたずらが成功したような、にこやかな笑みでママさんと呼ばれた女の人は笑っている。
 そう言われてよくよく見直してみると、ママさんは裸じゃなかった。着ているのはわたしたちが着ているのと同じスーツなんだけど、色が肌色なのだ。じっくり見れば裸じゃないことがわかるけど、逆に言えばじっくりみないと裸じゃないことはわからない。
「うふふ。その反応もうぶでいいわね。最初は美里ちゃんもそんな反応だったのに……」
 片手を頬に当ててわざとらしいため息を吐くママさん。美里はくすくすと笑う。
「さすがにもう何度も見てたら慣れますよー」
「そうね。ごめんなさい。別に意地悪をいうつもりはなかったのだけど……」
 ママさんは美里に対してそういってからわたしを改めてみた。思わず背筋が伸びる。
「藤原さん、だったわね? ごめんなさいね驚かせて。この店ではちょっと刺激的な驚きを、がテーマなの。裸かと思うと一瞬どきっとするでしょう?」
「……は、はぁ……確かに、驚きました」
 そういうものだと思わないとやってられない。わたしはよく考えることを放棄した。
 ママさんはわたしに対して仕事内容の説明を始める。
「今回の全身スーツイベントは難しいことは何もしなくていいの。ただ、お客様のテーブルに行って、お酒をお次したり話し相手になったりするだけでいいの」
「……そ、それだけなんですか?」
「ええ。お客様に対しては色々な禁止事項を設けているけど……女の子に触っちゃだめとか素性を探らないとか……女の子の方には禁止事項は一つだけ」
「な、なんでしょう?」
 イヤなことを言われても我慢しろ、とかかなとわたしは思ったけど、ママさんはこともなげにいった。
「逃げないこと。イヤなことはイヤって言っていいし、質問も答えたくないなら答えなくていい。ただ、その場から逃げないこと。向こうは女の子の恥じらう姿を見たいのだから、体を隠すのも質問に答えないのもあり。だけどお客様の前からいなくなっちゃ意味がないからね」
「……な、なるほど」
 そうはいったものの、本当はよくわからなかった。それの何が楽しいのかと思ってしまう。大人ってよくわからない。
 その説明が済んだあと、ママさんに連れられて今度は店の中で一番高いステージのような場所へと連れて行かれた。


~続く~

全身スーツイベント4

 そこに立つと店のどこからでも見えるようになっているらしく、普段の簡単なショーや演奏会などではこのステージが活用されるらしかった。
 そのステージの上にはすでに十数人の女の子達が集まっていて、はずかしそうにしている人はいても、わたしのように体を隠そうとしている人はいなかった。そのことから皆ある程度慣れている人達なのだと察する。
「皆お待たせしたわね。そろそろイベントを始めるわよ。あと、今日助っ人に来てくれた藤原さんよ。真面目ないい子だから困ってたら助けてあげてね」
 元気よく女の人達が応える。
「ふ、藤原です。よろしくお願いします」
 とりあえず皆に挨拶をしてから、わたしは美里の手を引く。
「どうしたの?」
「どうしたの、じゃないわよ……! いっぱい人いるじゃないっ。これなら別に人手不足とか……」
「あ、いやいや! 違うんだよほんとに足りなかったの! うちはテーブルが16席あって、このイベントの時は全部の席が埋まるのね? で、藤原さんがOKしてくれなかったら、私を含めて15人しかいなくて、一つのテーブルが確実に余っちゃうの。それってだめじゃない?」
「……そう、かもしれないけど……っていうか、それだとわたし途中でイヤになっても抜けられないじゃない」
「途中で抜けるのはいいの。お客様が加減を間違えて女の子を逃がしちゃったって扱いになるから。でも最初から足りないのは店側の問題でしょ?」
 納得いくような、いかないような。
 でもまあいまさら言っても仕方ないし、ここで話が違うと言って帰れるようならそもそもこんな風に流されてきていない。
 覚悟を決めるしかないみたいだった。
「ほらほら、そこの二人遊んでないで並んで並んで」
 ステージの上で並んでいた人に促されて、わたしと美里は列の端に並ぶ。
 それほど待つという感覚もなく、いきなりステージにスポットライトが当たった。ぱっと体を照らされて思わず両腕で体を守ってしまう。スポットライトの明かりが強くてまるで無数の視線が突き刺さっているような感覚だった。顔をあげられない。
「みなさん、本日はおこしいただきありがとうございます。今宵は心行くまで……」
 ママさんが落ち着いた調子で挨拶を続けている。わたしはその時間が一刻も早く過ぎ去ることを望んでいた。
 挨拶も終盤にさしかかったというところで、わたしの側にママさんがやってきた。
「今日のために、新しい女の子に来てもらっています」
 わたしのことだと思った。店中の視線がわたしに集中するのがわかる。わたしはますます顔があげられなくなった。
「ごらんの通り、まだこの店の雰囲気にも慣れていない子ですので、ご自分のテーブルにこの子が来た際には、ぜひともお手柔らかに、優しくしてあげてくださいませ。……ご挨拶はできそう?」
 わたしはそうママさんにこっそり問いかけられ、慌てて首を横に振った。ここでこうして立っているのだけでも精一杯なのに、何か喋るなんてできそうにない。幸いママさんは強要しなかった。
「ご挨拶は皆さんのテーブルに回った時にさせていただきたいとのことです。……それでは、禁止事項に気をつけて、当イベントをお楽しみください」
 そう言ってママさんが一礼し、他の皆も一礼する。元々俯いていたけど、わたしも慌てて頭を下げた。
 穏やかな拍手が店内に満ちる。
 そしてイベントは始まった。
 
 
~続く~

全身スーツイベント5

「おお、先ほどの新人さんですな。舞台の上ではわかりませんでしたが、実に可愛らしい! 俯いておられるのはもったいないですぞ!」
「ど、どうも、ありがとうございます……」
 そのいかにも紳士風な男の人は上機嫌でわたしをそう誉めてくれた。
 けど、男の人の視線が自分に向けられていると思うと、わたしは体を隠す手をどけられなかった。
「えっと……藤原、と申します。今日は友達……友人の、美里の紹介で……」
 恥ずかしいやら緊張するやらでわたしはつっかえつっかえ自己紹介をする。本名を名乗るのは危険じゃないかと思ったけど、会員の選定はきちんとしていると言われると何も言い返せない。実際美里も本名でやってるって話だったし、それを信じることにしていた。
 わたしが自己紹介を続けようとすると、その紳士さんは朗らかに手を横に振った。
「ああ、そんなに固くならなくてもよいですぞ。自由に、楽にはなしてくださればよろしいのですよ。そんなことを気にする者はこの店におりませんからな」
「え、あ、はい……」
「ほら、ご覧なさい」
 そういって紳士が示したテーブルでは、美里が快活に笑いながら大学生くらいの男の人の隣に腰掛け、まるで猫のようにその体を男の人に擦り付けていた。
「……!?」
 行動にもびっくりしたけど、その言葉使いにもびっくりした。
「全く、美里ちゃんは甘えん坊だねぇ」
「ふふふー。だってお兄ちゃんが頼もしいからー。安心するんだものー」
 まるで本当の兄と妹のように、二人はじゃれあっている。逆に本当に兄と妹だったらこんなに仲良くはないかもしれないけど……それは問題じゃない。
 大事なのは、関係性がどうみても客と店員のそれじゃないってことだった。
 あっけに取られていると、紳士さんがおもしろそうに笑ってみせる。
「いやぁ、美里嬢のあれは少々行き過ぎではありますが、ああいう態度を取られたからといって、喜ぶ者はいても怒る者はおりませんぞ」
「そ、そうなんですか……」
 あんなに密着して恥ずかしくないのかな、とわたしは思ってしまう。
「ところで、藤原嬢」
「は、はいっ」
 紳士さんに呼ばれて思わず背筋が伸びた。何を言われるのかとどきどきしてしまう。
 そんな緊張が伝わってしまったのか、紳士さんはわたしを安心させるように笑ってみせる。
「そう構えずともよいですぞ。可能ならば、で構わないのですが……腕で体を隠すのをやめる、というのは可能ですかな?」
 その視線がわたしの腕をなぞる。わたしはそれだけでぞくぞくとするものを感じた。
「……え……あ、ぅ…………」
「頑張ってくださると、私としてはとても嬉しいのですがな……」
「……ぅ、う……」
「初めての方にそうたくさんのことは望みませんぞ。今回に限っていえば、体を隠さず、両腕を後ろに回すだけで構いません」
「……そ、れは」
「この店の会員証に誓って、それ以上は求めないとお約束しましょう」
 わたしは迷っていた。この人達はいわば全身スーツを着た私たちを見に来ているわけであり、それを期待しているわけだ。
 それなのに、わたしがいましているように腕で隠すというのは、その期待を裏切る行為である。あくまで店員という立場で言えば、わたしのやっていることはお客さんに対する裏切り行為なわけである。それを考えれば、紳士さんのいう通り、体を隠すのをやめるのが誠実な行為であるようには思う。
 けれど。
 それ以上にこの格好が恥ずかしくて、その姿を晒したくないと考えるのも、わたしの本心なのだった。
「……っ、うー……っ」
 喉が震える。顔が赤くなるのがわかる。きっといまわたしはものすごく赤い顔になっていることだろう。
 わたしが動けないでいる間も、紳士さんはわたしを急かすことなく、自然体で待ってくれていた。その紳士的な態度に、応えなければならないと思う。
「……、が、がんばり……ます……」
 わたしはちゃんと服を着てる。ちょっとえっちぃ感じの、全身スーツだけど、着てることは着てる。そう、スキューバダイビングなんかをしていると思えば……恥ずかしく、ない。
 そう自分自身に言い聞かせて、わたしはゆっくりと両腕を解いて、思い切って腕を背後に回す。体の前面が、全て紳士さんの視界に晒された、はず。わたしは脚が震えて膝が崩れそうになるのをなんとかこらえた。かっと全身が熱くなるのを感じる。
 どんな風に見えているかなんて、想像したくなかった。
 紳士さんはしばらくわたしの体を眺めた後、優しい笑顔で口を開いた。
「美しいですよ。藤原嬢。何ら恥じることのない、美しい肢体です」
 そっと柔らかな声で発された賛辞を受け、わたしは恥ずかしいながらも頑張ったかいはあったかな、と恥ずかしさでうまくまとまらない頭でぼんやりと思った。


 イベント終了後、わたしは控え室で燃え尽きていた。
 最初の紳士さんだけじゃなく、あとのお客さん達もみんな紳士的な人達ばかりだった。それは認める。
 けど、だからといって恥ずかしさがなくなるわけじゃなく、散々羞恥心を煽られて刺激されてわたしは疲れ果てていた。
「藤原さんお疲れっ! いやー、すごいよ! 藤原さん大人気! みんな口々にあたしに『連れてきてくれてありがとう』っていうんだもん! もう鼻が高かったよ!」
「……ああ、そう……」
 嬉しそうなところ美里には悪いけど、わたしはその言葉に応じる余裕がなかった。いろんな意味で疲れ果てていた。
「ママさんからも、また是非にっていわれたんだけど……その話は今度にしよっか」
 断るつもりだったけど、そう美里に言われてしまうと、わたしはそれでいいかと思った。さっさと家に帰って寝たいというのもあったし。
「そうね……早く帰りたいんだけど、美里。この服どうやったら脱げるの?」
「ああ、それなら」
 美里は控え室の一角に置かれていた瓶を手に取った。その中身を片手の上に出しながらわたしに近づいてきたかと思うと、いきなりその手を私の首筋にすり付けてくる。冷たい液体の感覚が首筋をぞわりと襲った。
「ひゃっ!? な、なにす……っ」
 いきなり液体が塗られた部分が熱くなって、それまでぴっちりと肌に張り付いていたスーツが緩む。
「この液体使えば脱げるよ。肩口辺りまでこれで広げればあとは多少強引に脱いでいけばいいから」
 頑張ってね、と美里は言って部屋を出ていった。気を使ってくれたのかもしれない。
 わたしは緩んだ首筋の部分をつかんで、ひっぱってみる。ぐぐっと広がって、脱げそうな気がした。
「えっと……こう、やって……っ」
 肩を抜くようにすくめながら、なんとか抜け出ようとやってみる。
 なんとなく蛇の脱皮のようだと思った。
 何とか両腕を引き抜き、腰までスーツをずりさげる。裸の上半身に当たる室内の空気が鋭敏に感じられた。
(うぅ……もうなんだかなぁ……)
 なんとなく、感覚が研ぎ澄まされているような感じがした。蒸れていたからかもしれない。
 わたしはそのままスーツを脱いでしまおうとして、股間の辺りまでずり下げたとき、異常に気づいた。
「え……?」
 脱ぎかけたスーツと、わたし自身の股間。

 その間を、透明な、液体が、糸を引いていた。

 わたしは決して知識の豊富なほうではないけど、それが何なのか知らない訳じゃない。
「これ……って……」
 気持ちよくなった時に出るはずのもの。それが糸を引いているということは。
「……うそ、でしょ?」
 あの姿で男の人の前に出て、話をして、見られて……感じてしまっていたということになる。
 わたしはしばらく中途半端にスーツを脱ぎかけた状態のまま、動けなかった。

 それは、わたしが見られることで感じてしまった、初めての経験だった。
 
 
~全身スーツイベント 終わり~
 
 
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