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黎明媚態

露出系、羞恥系の18禁小説を書いています。関連の同人・版権作品のレビューも書きます。18歳以下の閲覧禁止。

バスタオル一枚で異世界転移 1

 お風呂場を出たら、そこは薄暗い洞窟でした。

「いやいやいや、おかしいですよね?」

 私はバスタオル一枚だけ身に付けた姿で、そんな場所に立っている現実が信じられず、たったいま出てきたばかりの扉を振り返りました。
 そして、目を見開くことになります。

「お、大きい!? なんですか、これ!?」

 そこにあったのは高さ三メートルはあろうかという巨大な岩の扉で、見たこともない幾何学模様と文字が扉の周囲に彫られていたのです。
 どうみても、最近くたびれてきて開けづらくなった、我が家のお風呂場の扉ではありません。
 改めて周囲を見回して見ると、つるっとした岩肌も露わな洞窟が広がっています。私がいまいるところはドーム状の空間で、壁の一角にある扉の前に立っていました。

「あっちにも、扉がありますね……」

 その正面には、私が前に立っている扉とは別の岩の扉があり、扉と扉の間に挟まれる形で、ドーム状の空間の中心に台座、のようなものが見えます。
 壁もそうですが床も綺麗に磨かれているような状態で、完全な自然洞窟、というわけではないようです。
 お風呂上がりで火照った身体に、洞窟内の冷たい空気が触れてきます。

「うわ、ひんやりした風ですね……」

 このままでは湯冷めしてしまいそう、なんて頓珍漢な心配を思わずしてしまいました。
 まさかお風呂の中で寝てしまって夢でも見ているのでしょうか。それとも、立ちくらみで失神したとか?
 まず私はこの状況が夢であるという可能性を考えました。普通は誰でもそう思うと思います。夢かどうかを確かめるために頬をつねってみましたが、普通に痛かったです。

「いたた……夢、じゃないのでしょうか……?」

 どうやら夢ではなさそうです。
 それにしたところでこんな場所に移動している理由がわかりません。
 次に私は、目の前に見えている台座?のようなものの傍に行ってみることにしました。後ろの扉はどう考えても開きそうにありませんし、台座に何か文字が書いているというのは、ゲームなら鉄板です。

「……そう考えると、実にゲームっぽいですよね、この空間」

 私はゲームが好きです。女子らしくない趣味だと言われたこともありましたが、いまどきその考え方もどうかと思います。有名なファンタジー系RPGは大体プレイしています。クリアは……色々あってできていなかったりするのですが。要は下手の横好きという奴です。
 そもそも最近のゲームは属性やら耐性やら確率やら要素が多すぎです。こうげき、ぼうぎょ、すばやさくらいで収めておいて欲しいものです。
 現実逃避気味にそんなことを思いながら私は台座の前まで歩きました。

「うう……変な感じです……」

 その際、足下の冷たさに辟易しましたが、裸足で岩肌を歩いているにしては、一時的にひんやりとするだけで思ったより体温を奪われませんでした。
 明らかに空調設備などなさそうな洞窟ですし、実際にひんやりしている感じはするのですが、お風呂上がりだからそう感じるだけで、実際はそこまで寒くないのかもしれません。
 台座にたどり着き、その上を見てみます。
 台座にはまたも見たこともない文字が刻まれていました。

「……うん、読めませんね!」

 これではこの空間についてなにかしら書かれていたとしても読めません。詰みました。
 いえ、まだ諦めるのは早すぎます。
 台座の上には、腕輪のようなものが置かれていました。金色の金属のようなものでできていて、装飾などは一切ありません。リストバンドの金属版、という感じでしょうか。接合部があって、ちょっと力が必要ですが、その接合部同士を合わせるとぴったり筒状になるようになっているようです。直径が結構あるので、私だと二の腕辺りでぴったりになりそうな感じです。手首なら簡単に引き抜くことができそうです。

「この腕輪を身に付けろ……ということでしょうか」

 ゲームではこういう場合、この腕輪が入場証みたいなものになっていて、装備すればいままで開かなかった扉が開く、というのが鉄板です。
 きっとこの腕輪もそういうことなのでしょう。得体の知れないものを身に付けるという恐怖もありましたが、いまのままではどうにもなりません。
 私は腕輪を左手首に巻き付けます。とはいえ、大きすぎてぶかぶかなのですぐすっぽぬけそうですが。逆にいつでも外せそうなので安心です。
 そう思った瞬間でした。
 急に腕輪が小さくなって、私の腕の太さにぴったり合う太さになってしまいました。
 びっくりして取り外そうとしましたが、接合部がどこにも見当たりません。いくらぴったり合うといっても、切れ目くらいは見えそうなものなのに。

「ひえっ!? な、なんですかこれ!?」

 思わず叫んでしまいました。
 それに対して返答はもちろんありません。都合良く腕輪が喋り出して応えてくれたりはしませんでした。
 なんとか腕輪を外そうとしてみましたが、指を入れる隙間すらありません。幸い手首を動かすのに支障はない位置で止まっていてくれましたが、金属のずっしりとした重さが腕にかかっています。
 思ったより重く感じないのは、あまりにぴったりしているせいでしょう。

「なんなんですか、ほんと……家に帰りたいです……」

 意味不明な状況に泣きそうです。そんな私の呟きにも誰の反応もありませんでした。
 私は仕方なく、私が前に立っていたのとは反対側の扉の前に移動しました。腕輪は気になりますが、どうやっても外せない以上仕方ありません。
 バスタオルが落ちないようにしっかりと巻き付けておきながら、恐る恐る移動します。大きめのバスタオルにしておいて良かったとつくづく思いました。ちゃんと胸の上からお尻の下まで隠せているので、まだマシです。

「せめて、着る物があれば……」

 ノーパンとノーブラの感覚はどうにもなりません。
 扉の前まで来て改めて扉を見上げます。それは本当に大きな扉で、大きな岩をそのまま切り取ったような、切れ目一つ無い巨大な一枚の岩からできているようでした。
 さっきの扉と同じく、幾何学模様と謎の言語が彫り込まれています。
 とりあえず腕輪を付けた手で扉に触れてみます。すると、腕輪が光り、扉が半透明になって、そして消えてしまいました。

「……嘘でしょう?」

 明らかに私の知るどんな技術でもできないことが目の前で起きました。腕輪が私のサイズに合わせて収縮したのは、まあ、理論がよくわからないのは同じでも、なんとなくできるかもしれないという気はします。
 けれど、確かに目の前にあったはずの扉が、忽然と消えるなんてことはありえません。ホログラムか何かだったのかもと思いましたが、私の手には岩の扉に触れた時の感触がはっきり残っています。気のせいではありえませんでした。

「魔法……? いやいや、そんな馬鹿な……」

 扉が消えた先は、階段になっていました。下へと続いています。暗くて奥までは見えませんが、階段の左右には燭台が等間隔に並べられていて、降りていくことはできそうです。
 私は念のため、一度後ろの扉も調べてみることにしました。
 RPGでは新しい場所に進む前に、いまいるところの細かな部分の探索は鉄板でしたし、今回の場合はそっちの扉が開けばお風呂場に帰れるかもしれません。
 物は試しに、と扉に触れてみましたが、残念ながら開きませんでした。どうやら先に進むしかないようです。

「……ええい、女は度胸です!」

 私は覚悟を決め、バスタオル一枚に、腕輪をひとつ追加した、頼りない装備で階段を降りていきました。
 これが私の長い長い――そして、恥辱に満ちた冒険の始まりだったのです。


つづく
 
 

バスタオル一枚で異世界転移 序章 2

 ひた、ひたと私が裸足で歩く足音が岩壁に反響して響いています。
 あんなわざとらしい空間や台座、扉、階段まである時点でわかっていましたが、この洞窟は自然の洞窟ではないようです。かといって、コンクリート造りの人工物とも違います。
 いわゆる、ダンジョンと呼ばれるもの……それに間違いないでしょう。
 細長いまっすぐな道が、時折枝分かれしながらも先の方まで続いています。

「うう……何も出てこないでください……」

 私はバスタオル一枚の格好でそうぼやきました。
 モンスターに出会いたくもありませんが、普通の人にも出会いたくありません。
 とにかくまずは身体を隠せるものが欲しいと思いました。できれば衣服。いっそカーテンみたいな大きな布でも構いません。
 しかし、洞窟の中にそんな都合のいいものは存在しません。ダンジョンというからにはもっと色々あっていいと思うのですが。
 友好的な人に出会えれば服くらい貸してもらえるかもしれませんが、問題はそうでなかった人に出会った場合です。

「危ない人に出会いませんように……」

 私はそう祈りながら歩いていました。
 そうして、歩き出して暫く経った頃。
 誰かに出くわすこともなく、私は延々通路を歩いていました。
 最初はおっかなびっくり背中を丸めて歩いていましたが、さすがにこうも何も起こらないと警戒する気も失せてきます。
 バスタオルがはだけないように気をつけつつも、普通に歩くようになっていました。
 やがて私は、同じ場所をぐるぐる回っているのではないかという気がしてきました。

「目印も、何も作れませんしね……」

 この洞窟、小石のひとつも落ちていないのです。
 そのおかげで足に怪我をせずに済んではいますが、結果として壁や床に印を付けることもできず、延々と歩くことしかできませんでした。
 結構な距離を歩いたとは思うのですが、本当に前に進んでいるのかどうか。
 私が不安に思いだした頃、ようやくいままでとは違う雰囲気の場所に着きました。
 なにやら道に像が置いてあるのです。思わず身を竦めつつ、それに近付きます。

「何でしょうか、これ……?」

 それは変わった石像でした。
 ヘビと人を混ぜ合わせたような姿をしています。ゲーム風にいうと……リザードマン、というものだと思います。
 普通に服のような物を着ていますし、剣や盾といったもので武装しているようにも見えます。ただ、それらは全て石で出来ており、精巧な石像という風情です。
 は虫類の表情はわかりにくいですが、なにやら何かに気づいて驚いているような印象を受けます。
 そんな石像が、道なりに軟体も置かれていました。

「んん……? これは何を示唆しているのでしょうか……?」

 気味悪く思いながら、リザードマンの像たちの横を通り、さらに先に進もうとしました。
 その時です。
 周囲の壁や天井に、大きな目玉のようなものがいくつも出現したのは。
 これでもホラーには耐性がある方ですが、さすがに突如周囲に現れた目玉の群れには心臓を鷲づかみにされたような衝撃を受けました。

「きゃあああああああ!!!」

 悲鳴をあげてしゃがみこみ、どれほど意味があるかわからないまま、両手で頭を抱えて縮こまります。
 ぎゅっと目をつぶって、これから起きる何かに耐えるつもりでした。
 しかし、いつまで経っても何も起きません。恐る恐る目を開けて、腕を退けてみます。
 目玉は気のせいなどではなく、周囲の天井や壁に現れたままでした。
 じっとりとした視線を私に向けてきています。

「な、な、なんなんですか……?」

 そう呼びかけたところで、目玉だけのそれが応えてくれることはありません。
 ただ、じっとこちらを見つめてくるだけです。私はしばらくその場にへたり込んでいましたが、目玉たちが何もやって来る様子がないとわかると、少し冷静さを取り戻すことができました。
 いまだに心臓はバクバク鳴っていますが、身体の震えは止まりました。
 ゆっくり立ち上がり、少しはだけてしまったバスタオルの裾をきちんと直します。

「な、何もしてこないでくださいよ……?」

 恐る恐る、再び道を進み始めます。目玉たちの視線が私の移動に合わせて動きました。
 あまりの異常さに意識する暇もありませんでしたが、歩き出してしばらくすると、その視線の多さに、居心地の悪さを感じ始めてしまいました。
 ほとんど裸同然で、異形のものからとはいえ、視線を浴びせかけられる状況。
 こんな格好で人前に出たことなんてもちろんなく、私は針のむしろに立たされているような心境でした。
 ちくちくとした感覚すら感じるくらいです。

「うう……恥ずかしい……」

 目玉だけということで不気味さが先に立ち、多少は羞恥も軽減されていましたが、やはりじろじろ見られるのは恥ずかしいです。
 私は急ぎその道を通り抜けることにしました。
 やがて目玉の通路が終わり、ようやく目玉たちの視線から逃れることが出来ました。
 恐る恐る後ろを振り返ると、目玉がゆっくりと瞼を閉じるように、再びただの壁になってしまったところでした。

「な、なんだったんでしょう……とにかく、無事抜けられて良かったです……」

 安堵の息を吐き、私はさらに先へと足を進めます。
 やはり何もない通路が延々と続いていました。
 私の歩く音だけが通路に響いています。そろそろ、部屋とかあってもいいと思うのですが。
 そんな私の祈りが通じたのか、小さなドアがあるのを発見しました。あの石作りの巨大なものではなく、私の力でも開けられそうな、木製の小さなドアです。
 石で出来た洞窟に、木で出来たドア。一昔前RPGかというような雑な作りでした。

「やっぱり、何らかのゲーム世界、なんでしょうか……?」

 最近流行の小説では、主人公が遊んでいたゲームと瓜二つの世界に紛れ込んでしまう、というのが多いらしいですし。
 でも私は腕輪を装備してダンジョンに潜る、というゲームをやった覚えがないのです。
 やったことがあれば、そのゲーム知識を持ってどうすればいいのかわかったのかもしれませんが。わからないものは仕方ありません。
 私はとりあえずその部屋に入って見ることにしました。
 着る物があればいいなぁ、という期待を込めて。
 扉は思ったよりも簡単に開いてしまいました。私は軽く押しただけのつもりだったのですが、思った以上の勢いで開いてしまいました。
 結論から言うと、部屋の中に服はありました。ただし――

「……ギギ?」「ギャギャ?」「ギー、ギー?」

 中身付きで。
 それも、その中身とは素敵な王子様でも頼れる騎士様でもなく。
 その醜悪な顔で、生の肉を喰らっている化け物たち――RPGの序盤で出てくる王道の敵、ゴブリンたちだったのです。

つづく

バスタオル一枚で異世界転移 序章 3

 全力で逃げました。ええ、それはもう全力で走りましたとも。
 そんなに詳しくない私にだってわかるんです。あれは確実に話が通じない相手だと。
 バスタオル一枚の格好で、全力疾走することになるとは思いませんでした。
 裾がはためいてかなり危ないところまで丸見えになっている自覚はあります。
 普通なら、恥ずかしさのあまり燃えるように頬を熱くしていたことでしょう。
 けれどもその時の私には――血の気が引く感覚しかなかったのです。

「「「ギャギャギャギャッ!!!」」」

 だって後ろから引き潰れたカエルの鳴き声よりも、醜い怒号が飛んでいるのですから。
 あれに追いつかれた時、自分がどうなるかなんて考えたくもありません。
 私の脳裏には、彼らが涎を垂らしながら噛み砕いていた生肉の姿が過ぎります。
 その肉が自分の足やら胸やらになっている光景が、はっきりと予想できるのです。
 とにかくいまは逃げるしかありません。人生でこれほど必死になったのは初めてです。
 それでもバスタオルだけは無くさぬよう、胸のあたりの部分を握ってはいましたが。

「ギーッ!!」

 鋭い声と同時に、肩に衝撃が走ります。体勢を崩しかけましたが、なんとか耐えました。
 思わず背後を振り返ると、ゴブリンたちが拳大の石をこちらに向けて投げつけています。
 かろうじてそれを避けながら、肩に当たった衝撃はそれだと理解しました。
 幸いそれほど威力はないのか、軽い衝撃だけで済みましたが危ういところでした。
 もし転倒していたら……と考えると血の気が引く感覚がさらに強くなります。
 目印を作れそうな石はぜひとも欲しいものでしたが、そんなことは言ってられません。
 とにかく逃げるだけで精一杯です。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」

 けれど、緊張と恐怖で早くも息が上がってきてしまいました。
 ただでさえ走るのに向かないバスタオル一枚の格好で神経を削られているのに。
 その上、捕まったら一巻の終わりな襲撃者との追いかけっこ。
 長く走り続けられるわけがないのです。
 そもそも、私は陸上部出身でも何でもないんです。
 走るのが得意というわけでもありません。
 助けを呼びたかったのですが、ダンジョンで意味があるとは思えませんでした。
 とにかく走る。それしか出来ない私は、がむしゃらに走った結果――

「ひっ……!」

 またあの目玉の通路に差し掛かってしまいました。周囲の壁や天井から目が出現します。
 思わず足が竦みかけましたが目玉は無害なので、ためらっている場合ではありません。
 目を合わせないようにしつつ、私はその通路を駆け抜けます。
 偶然戻ってきてしまっただけでしたが、ある意味これは幸運でした。
 さすがのゴブリンたちもあの目玉の通路には驚くはずです。
 追いかけるのを諦めてくれれば最高ですが、追う足が鈍るだけでも十分です。
 石像の地帯も抜け、角をいくつか曲がったところでようやく立ち止まります。
 ぜえぜえと肩で息をしながら後ろを振り返りますが、追ってきている気配はしません。
 足音もしません。どうやら逃げ切ることに成功したようです。

「ふー……こ、怖かったです……」

 ゲームでは序盤の雑魚敵であるゴブリンが、あんなに恐ろしいとは思いませんでした。
 追いかけてくる醜悪な顔が、しばらく忘れられそうにありません。
 これからはもっと慎重に行動しなければなりません。
 部屋を物色したかったのですが、なるべく入らない方がいいのかもしれませんね。
 私は走ったことで乱れていたバスタオルを、改めてしっかり巻き直します。
 これを失ったら全裸でダンジョン内を歩かないといけなくなります。
 それだけはごめんでした。

「よし……いきましょう……!」

 気合いを入れ直した私は、もうあんな危険な目に遭いませんようにと願って歩き出し。
 突然踏みしめるべき床がなくなったことに気づきました。
 声をあげる暇もありません。
 いつのまに開いたのか、足下が奈落へと開いていました。
 とっさに床の縁を掴むとか、そんなことすら考えられず。
 私は奈落の底へと落ちて行ってしまったのです。

つづく 
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Author:夜空さくら (旧HN:黒い月)

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