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黎明媚態

露出系、羞恥系の18禁小説を書いています。関連の同人・版権作品のレビューも書きます。18歳以下の閲覧禁止。

今日はおやすみ

姉妹ブログ・黄昏睡蓮の方の作品をピクシブに公開しました。
明日はこちらの短編『全裸になっちゃった!』をアップしようと思ってます。
[ 2013/11/30 23:29 ] 連絡 | TB(0) | CM(0)

全裸になっちゃった!5

(見られた……っ!)
 私は猛烈な恥ずかしさで心臓が激しく跳ねまわるのを感じつつ、いまさら止まるわけにもいかず、全力でその道を走り去ろうとした。
 けれど、もう一人の彼女はそう出来なかった。
「いや……っ!」
 思わず、の行動だったんだろうと思う。彼女はその場にしゃがみ込んで、身体を出来る限り隠そうとする。
 けれど、それは何の遮蔽もない道のど真ん中でやるのには自滅的な行為だった。
(……!)
 私は咄嗟に、自分の身体を隠していた手を彼女に向けて伸ばし、上腕を掴んで無理矢理立たせる。
「止まっちゃダメっ! 走るわよ!」
「……ッ!」
 泣きそうな顔をしながらも、私の切羽詰まった声に応じてくれたのか、彼女が立ち上がって走り出す。
 私と彼女はなんとか公園の中に飛び込むことが出来た。幸い公園の中には茂みも多く、隠れる場所には事欠かなかった。
 さらに運のいいことに、子供の姿も公園内には見当たらなかった。
 彼女を茂みに隠してから、私は恐る恐る背後を確認し、さきほど止まっていた車の運転手がどういう行動をしているかを見た。
 運転手は何事もなかったかのように車庫の扉を開け、車庫入れの準備をしていた。どうやら、私達がその背後を通った時には、バックミラーもサイドミラーも見ていなかったようだ。
 気付かれていない、ということは、見られていないということ。
「ふぅ……良かったぁ……」
 私は急に気が抜けて、その場に尻もちを突いて座りこんでしまう。
 しゃがみこんでいた彼女は、申し訳なさそうに私に近づいて来た。
「あ、あの……ごめんなさい……ありがとうございます……」
 さっき私が彼女を連れて来ずに道の真ん中に放置していたら、さすがにあの運転手も彼女に気付いただろう。
 そしたら、少なくとも彼女は裸を思いっきり見られていたことになる。
 謝罪と感謝を述べる彼女に対し、私は笑顔を向ける。
「謝らなくてもいいわよ。こんな状況だもの。持ちつ持たれつ、でしょ?」
 さて、警察に電話をして、助けてもらうことにしよう。
 私はもう少し頑張るべく、立ち上がった。


 少しトラブルはあったけど、私達は警察に連絡して何とか保護してもらうことに成功した。
 本当のことを喋っても信じてもらえないと思ったので、「変な集団に無理矢理全裸にされた後、放置された」というでっちあげの話で乗り切った。不審に思われたかもしれないけど、とりあえずそれで何とかなった。
 結局、急に全裸になってしまったのがどういう理由だったのかはわからなかった。無くなった服や持ち物は携帯の逆探知などで探してもらったら、裸にされた場所から少し離れた場所で発見された。彼女の物も一緒になって発見されたおかげで、そういう目的を持った集団に襲われたのだということに信憑性が増したのは不幸中の幸いだった。
 お金や装飾品にも全く手が付けられていなかった。全ては謎に包まれたまま、迷宮入りしてしまったのだ。
 わけのわからない事件の被害者同士、私と彼女は連絡先を交換し合い、誰にも相談できないあの事件の話をするうちに仲良くなっていった。
 そして、その内、私達はあの体験の衝撃が忘れられず、二人揃って自分から露出するようになってしまい、二人組の露出っ子として色んなところで露出するようになってしまうのだけど。

 それはまた別の話だ。
  
 
 
 
~全裸になっちゃった! 終わり~

全裸になっちゃった!4

 裸の女が二人、まだ明るい時間帯に町中を歩いている。
 その異常な光景を感じつつ、私と彼女は町中を慎重に進んでいた。
 見られたくないから人気のない道を進んでいるのだけど、だからこそもしも変な人に出会ってしまった時が怖かった。
 逃げられればいいけど、逃げられなかった時のことを考えると、体が勝手に震えてくる。それはきっと前を歩く彼女も同じだろう。
 彼女がこの辺りに詳しくて助かったと思う。私一人だったら、覚えている限り公衆電話は人気の多いところのものしか記憶にない。
 こそこそと移動して行く内に、不意に目の前の彼女が足を止めた。ぶつかりそうになって慌てて止まる。
「どうしたの?」
「……しっ。ここが一番危ないんです」
 人差し指を立てて、静かにするようにジェスチャーをしてくる彼女の前を覗きこむと、どうやら大きな道に差し掛かったみたいだった。
 その道を渡った先に、公園が見える。
 公園に辿り着くためにはその道を渡らないといけない。車が通り過ぎて行くのが見えた。
「……交通量は結構あるの?」
「……割と、ですね。そんなに凄く多いってわけじゃないんですけど……」
 このままここで立ち止まっていても、誰かが通りかかる可能性は零じゃない。
 意を決して行くしかなさそうだった。
「……行きましょう。ここまで来たら仕方ないわ」
「……はい」
 ここまで誘導してくれた彼女に報いるため、私はあえて自分から彼女の前に立った。彼女が背後で驚きの視線を向けてくるのがわかる。
 身体に視線が当たるのを感じて、急に恥ずかしくなったけど、いままで彼女はこれを我慢してくれていたのだ。私が嫌がるわけにもいかない。
「……いま向こうから車が来てるから……それが通り過ぎたら、行きましょう」
 右の方向から車が迫って来ていた。それが通り過ぎたら行こうと決め、私は呼吸を整える。背後の彼女も息を呑むのがわかった。
 車が私達の潜んでいる道を通りすぎる。
「いまよっ!」
 私は一気に駆け出した。もう一方からは何も来ていないことは確認済み、だった。
 そして実際、通りかかった車はいなかった。
 けれど。
 なんとも運の悪いことに。
 さっき通り過ぎた車が、減速して結構近い位置で止まってしまった。その辺りの車庫か何かに停める予定だったのだろう。明らかに車体が道の端に寄っていた。そのことに気付いていれば、飛び出さずにいられたかもしれないのに。来るか来ないかに集中し過ぎて、その事まで意識がいっていなかった。
 車が止まったのは、バックミラーでもはっきりと私達のことが見える位置。
 飛び出してしまっていた私達は、その視線から逃れることなど出来なかった。
 私達は、その車の運転手に、裸を見られてしまった。

全裸になっちゃった!3

 なんとか大人しくなってくれたその人と一緒に、とりあえず物陰に身を潜める。
 お互い顔を向けあっていることは出来ず、背中を向けあっていた。
「……落ち着いた?」
「……うん。まあ……あの……なにが、起きてるんですか?」
 彼女は私に対してそう聞いてきたけど、それは私が聞きたい。
「……わからないわ。私も歩いてたらいきなり裸になってて……原因らしきものは何もなかったし」
「……ですね」
 状況的に私が何かしら疑惑をもたれてもおかしくはなかったけど、幸い彼女は私が原因であるとは考えていないようだった。その事実に少しだけほっとする。
 こう言ってはなんだけど、仲間が出来たことで少し落ち着くことは出来た。
「とにかく、なんとかしてこの状況をどうにかしないとね……」
「誰か通りかかるのを待ちます?」
 彼女からの消極的な提案を受け、私は思わず唸る。
「……正直、また同じことになりそうな気がするのよね。声をかけようとしたらその人がまた裸になっちゃって……どんどん騒ぎが大きくなるだけじゃないかなって」
「確かに……じゃあ、警察か何かに保護を求めます?」
 それでも変わらない気はしたけど、とにかく何かしら動かなければならないのは変わらない。それなら、公的権力に頼る方がまだしもマシなような気がしてきた。
「……そうしてみましょうか。とりあえず、そのためにはどこかの公衆電話を使わなければならないけど」
「私、この辺りには詳しいです。人気の少ない公園に心当たりがあります」
 地元民が仲間になったのは凄く心強かった。
「案内、お願い出来る?」
「……はい、出来ます」
 一拍の間があったけど、彼女はそう応えてくれた。
 どうしてそんな間が生まれたのか、一瞬不思議に思ったけど、すぐにその理由を把握した。
「それ、じゃあ……着いて来てください」
 そう言って動き出す彼女に合わせ、私も動き出す。
 つまり、彼女はこちらを見ていないけれど、私は思いっきり彼女を見てしまうということだった。
 私と同じように裸で、恥ずかしそうに自分の身体を隠しながら彼女は進む。私はまだ誰かに見られるまでは見られないけど、彼女は私と言う存在に常に見られているということになる。
「ごめん……なんか、ごめんね……」
「い、いえ……気にしないでください」
 耳まで真っ赤にしながらも、彼女は気丈にそう言ってくれた。
 いまどき珍しい、本当にいい子だ。……そういえばまだ名前も名乗っていなかったし、歳も明かしていなかった。実際どちらが年上かもわからない。
 あとで落ち着いたら聞こう。
 そう考えて、いまは静かに移動することに気持ちを集中させた。

全裸になっちゃった!2

 私が固唾を呑んで待ち構えている中、現れたのは私と同じか、少し年上の女の人だった。
 たぶん近くの大学に通っているんだろう。携帯電話を弄りながら歩いている。
(た、助かった……!)
 そう思ってすぐに声をかけようとしたけど、私にとっては最悪なことに、その人はイヤホンをして音楽を聞いているみたいだった。
 物陰から呼び掛ければいいと思ったけど、もし大音量で音楽を聴いていたら呼び掛けが聞こえないかもしれない。
(……っ、仕方ないっ)
 幸いその人以外に人影はない。思いっきりその人には見られてしまうけど、同性に見られるならまだマシだ。
 私は意を決して物陰から出て、急いでその人に駆け寄った。手で体を隠し、大事なところは見えないようにしながら、その人へと近付く。
 手元に集中しているのか、中々気付く様子がなかった。
「す、スミマセン!」
 恥ずかしさを堪えながらその人に呼び掛ける。聞こえてないのか、目を上げもしなかった。私が横合いから近づいていることに気付かず、その人は私を通りすぎて歩いていってしまう。
 ただでさえ恥ずかしいのに、声をあげなくてはいけなくなって、さらに恥ずかしい思いだった。けど、このチャンスを逃すわけにはいかない。
「ちょっ、待って! 助けてください!」
 私はそう呼び掛けながら、歩くその人の肩に手を伸ばした。
 手が、彼女の肩に触れる。

 私は彼女の素肌の感触を捉えた。

「「え……?」」
 一瞬、二人の声が被る。何が起こったのか、経験済みの私ですらわからなかった。それはもちろん、彼女にもわからなかったに違いない。
 彼女は足を止めて、呆然と自分の体を見下ろしていた。その手に持っていたはずの携帯がなくなっていて、てぶらになっている。
 私の目も彼女の体に釘づけになっていた。
 なぜなら、私が触れる一瞬前まで服を着ていたはずの彼女は、私と同じように全裸になっていたからだ。
 その状況を認識するまで、二人とも一拍の間があった。
 そして、彼女の喉がヒュウ、と音をたてる。その瞬間、私は次の彼女の行動が予想できたため、慌てて両手を伸ばす。
「きゃああっ、むぐっ!?」
 大音声の悲鳴が上がりそうになったのを、瀬戸際で何とか阻止する。
 本来自然なことだけど、そんな大音声で叫んだら人がたくさん集まってしまう。
 そうしたら、私たちはその人たちに裸を晒すことになってしまう。それは絶対に嫌だった。
 もがこうとする彼女にしがみつくようにして、耳元で落ち着かせようと囁く。
「さ、叫んじゃダメ! お願い、落ち着いて……っ!」
 我ながら無茶なことをいっていると理解はしていた。けど、何がなんでも落ち着いてもらわないと、大変なことになってしまう。
 落ち着けといって落ち着けるものでもなかっただろうけど、私の声が本気で焦っていたこともあってか、彼女は悲鳴をあげるのを止めてくれた。
 状況は少しも良くなっていないけど、ちょっと安心した。

全裸になっちゃった!1

 道を歩いていたら、突然全裸になっていた。
 わけのわからないことを言っていると思われるだろうけど、私の方がわけがわからなかった。
「ひゃぅ!?」
 思わずその場にしゃがみ込み、身体を出来る限り縮ませながら周囲を見る。周囲に人影はない。
 そのことに少しホッとすると共に、私はとにかく物影に移動する。何が起きているのかはわからないけど、とにかく誰かに見られるのだけは避けたかった。
 真昼間、凄く明るい場所で全裸になっているという事実に、顔が赤くなる。恥ずかしさで死ねそうだ。
 下着どころか靴やピアスに至るまで、身に着けていたいた全てのものがなくなっている。冷たいコンクリートの感触が足の裏から伝わって来て、おかしな気分だった。
 そもそも野外で裸になるなんていう趣味がない私にとって、その感覚は新鮮過ぎた。
 とりえあえず近くの建物の壁に身体を寄せて安全を確保した私は、どうしてこうなってしまったのかを考える。
 明らかに突然服を奪われたとしか思えない状況だけど、さっき周囲を見渡した時には周りに誰もいなかった。となると、原因がわからない。
 白昼夢でも見ているのかと思ったけど、それにしては感覚がはっきりしすぎている。
 私は混乱する頭を抱えつつ、なんとかこの状況を打破する方法がないかどうか考えてみた。
 いま私の手元にあるものは何もない。鞄も持っていたはずなのに、それもなくなっている。
 携帯電話があれば警察を呼ぶなり、友達を呼ぶなり何か方法はあるけど、それが出来ない。
 家までは遠く、そもそも電車に乗らないといけないから家に帰るという選択肢も無い。
 通り掛かった人に助けを求めるか、公衆電話まで行って警察を呼ぶというのが現実的な選択肢だろう。
 けれど、通り掛かった人が良心的な人かどうかはわからない。最悪襲われる可能性だってある。
 公衆電話まで行こうにも、最近の携帯電話の普及のせいで、結構離れたところにしか公衆電話はない。
 そもそも、公衆電話は目立つところにあって、それを使おうとしたら誰かに見られることを覚悟しなければならないだろう。
 素足で移動するのはかなり危険だったけど、背に腹は代えられない。
(……よ、よし!)
 心臓が痛いほど跳ねまわっている。こんなところを見られたら変態扱いされてしまう。なるべく見られないように、行かなければならない。
 私は覚悟を決めて動き出そうとした。
 その時、遠くから人が歩いてくる音が聞こえて来た。
 思わず物影に戻りながら、その人を見極める。
(女の人だったら……警察を呼んでもらおう)
 私は息を殺しながら、その誰かが見えるのを待った。

今日はおやすみ

明日からまた作品を書き始めます。
三つの系統作品を同時執筆はキツイ気もしますが、とりあえずチャレンジです。
[ 2013/11/24 10:37 ] 連絡 | TB(0) | CM(0)

大体作業は済みました

『白日陰影』関係の作業ですが、とりあえず一段落付けました。
ぼちぼちこちらの運営も再開させていきたいと思います。

ただ、それとは別に現在やらなければならないことが累積していますので、ちょっと途切れ途切れになるかもしれません。
500文字だけの更新日とかも結構起こり得るので、気長に見守ってくだされば幸いです。
[ 2013/11/23 10:58 ] 連絡 | TB(0) | CM(0)

今週はおやすみ

色々としなければならないことが多いので、今週は作品を書くのはお休みします。
主にするのは『白日陰影』関連の登録作業だとか、『白日陰影』開設に伴う『黎明媚態』と『黄昏睡蓮』の調整などです。

来週からはいつも通りの感じで作品を書けるよう、色々と急いで調整いたします。
[ 2013/11/18 20:00 ] 連絡 | TB(0) | CM(0)

別ジャンルのためのブログを立ち上げました

箱詰・拘束系の話を書くためのスペースが欲しいと思い、そのジャンル専門のブログを立ち上げました。
「三つもブログを作ってどうするんだ」という気は若干しないでもないんですが、とりあえずやりたいようにやってみることにしました。

hakuziineibannr.jpg


『黎明媚態』、『黄昏睡蓮』、『白日陰影』。
それぞれのジャンルでそれぞれの面白さを追求出来ればいいかなと考えていますので、よければお付き合いくださいませ。
[ 2013/11/17 20:00 ] 連絡 | TB(0) | CM(0)

PIXIVの方で作品公開しました

ピクシブの方に長編・『露出への兆し』を公開しておきました。
なお、多少加筆修正はしていますが、大した変更はありません。
[ 2013/11/17 18:37 ] 連絡 | TB(0) | CM(0)

露出への兆し6

 その声が部屋の外から聞こえて来た時、私は心臓が口から飛び出そうになるくらい動揺した。
「なっ、なにっ?」
 クローゼットの扉の影に隠れながら声を張ると、声が裏返って明らかに不自然だった。
 幸い、お母さんは閉めていたドアを開けたりはせず、ただその場から言葉を続ける。
「リンゴを剥いたけど、食べる?」
 時々そういうことはよくあることだった。
 そういえば、夕食の席でたくさんリンゴをもらったという話をしていたような気がする。
「わ、わかった! すぐ行くからちょっと待ってて」
「はいはい」
 そう言って、お母さんは去っていく。
 私は暫く硬直したまま動けなかったけど、大丈夫だと悟った段階で大きく息を吐いた。
「……心臓が止まるかと思った」
 こんな格好をしているところを見られたら、大変だ。
 私は急いでコートを脱ぐ。部屋の中で裸になって、いまさらながら、すごく馬鹿なことをしていることに気付いて、益々赤面した。
(どうかしてる……)
 バカバカしい衝動に負けてひどく馬鹿なことをしてしまった。
 私は自己嫌悪に浸りつつ、脱ぎ捨てたショーツやパジャマを手に取った。
 そしてそれを一つずつ身に着けようとした時。

 私は、股間に冷たい感触を感じて思わず悲鳴をあげそうになった。

「え……?」
 着かけていたショーツを慌てて降ろし、茫然とそこを見る。
 私の股間は、いままで見たことがないような状態になっていた。
「なに……? これ……」
 ねちゃり、と指先にそれはこびり付くようにして糸を引いた。
 意識せずに呟いていたけど、それが何なのか、私は知っていた。
 けれど、それが現実に起きていることだと理解出来なくて、私はショーツを脱ぎかけたような、半裸の間抜けな格好のまま、暫く自分の指先を見詰めていた。

 認めたくなかった。
 私のあそこがいままで見たことがないくらいに濡れている、なんて。
 
 
~続く~
 
 

露出への兆し5

 ハンガーから取り外したコートは持ち帰った時よりも遥かに重く感じられた。
 エミリさんの匂いだろうか、微かに女性特有の化粧品の香りがした。
 決して鼻を突くような量ではなく、気付けば香っている程度の微かな匂い。
(あの時……エミリさん化粧してたんだ……)
 大人の女性が完全にすっぴんなわけがないのだけど、思わず女性としての嗜みを感じてどくんと心臓が跳ねる。
 あのエミリさんの存在を感じてしまったことで、私はますますこれを見に着けた時の感覚が気になった。
 コートを広げ、私はそれをじっと見つめる。何か、これ以上先に進んだら戻って来れないような……そんな気がした。
 けど、好奇心が止められなかった。
 そのコートに腕を通して行く。柔らかな裏地と私の腕が、擦れながら触れあう。
 手の甲、二の腕、そして、肘。
 いくらコートの裏地が多少柔らかな素材で出来ているとはいえ、素肌に当たることは想定していないのだろう。思った以上にその刺激は強い。
 剥きだしの肩にコートが被さる。その時の感覚をなんといえばいいのだろうか。知らない誰かに肩に手を置かれているような、そんな違和感。
「……っ……」
 その違和感を噛み殺し、私はもう片方の腕にコートに通そうとして、コートの裾にお尻を撫でられた。
「ひゃわ!?」
 思わず小さな悲鳴を上げてしまう。かあっ、と顔が赤くなるのを自覚した。
 微かに身じろぎするたびに、裸のお尻にコートの裾が触れ、まるで痴漢にお尻を撫でまわされているみたいだった。単なる勘違いだというのに、私の身体は変な風にその感触を受け取ってしまっていた。
「……ッ」
 寒いわけではないのに、足が震える。跳ねまわる心臓が痛い。
 指先まで震える中、私はどうにかコートを羽織ることに成功した。
 前を合わせて、乳首にコートが触れて、また小さく悲鳴が出てしまう。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
 ただコートを着ているだけなのに、なぜなのだろう。すごく、恥ずかしい。
 何度も失敗しながらコートの前ボタンを止めた。
 そして、クローゼットの扉の裏に設置されている姿見で、全身を眺めてみた。
「う、うわぁ……っ」
 エミリさんと、同じ格好をした自分が、そこにいた。
 素足をコートの裾から覗き、サイズが大きいせいで、胸元の鎖骨が丸見えになっている。
 私の顔は、いままで自分でも見たことがないくらい真っ赤に染まっていて、その目は微かに潤んでいた。
 それは自分なのに自分じゃないように見えて、私は酷く動揺した。
 動揺して、けれど目が離せなくて。
 だから、気付けなかった。

「るみなー。ちょっといい?」

 部屋の外まで、お母さんがやってきていることに。

露出への兆し4

 お風呂で暖まり、火照った首筋をタオルで拭いながら、私は自分の部屋に戻った。
 結局お風呂に入っている間中、自分の体を見る度にエミリさんの体が脳裏にちらついて、落ち着いた入浴とはいかなかった。
「はぁ……」
 私は深くため息を吐いて、ドアをきちんと閉める。もう夕食も全て済んでいるから、あとはもう寝るだけだ。早く寝てしまいたかった。
 そこでふと、憂鬱なことを思い出した。
「あ、宿題……しないと……」
 とても落ち着いて宿題が出来るような気はしなかったけれど、それでも私の中で宿題をしないでおく選択はなかった。真面目というよりは融通が利かないというか、やらずにサボるということが出来ない普通から外れるのが嫌な、私はそんなつまらない人間なのだった。
 どちらにしても、ふわふわした気持ちではとてもまともに宿題が出来るとはお思えなかったけど。
 私はもう一度ため息をはきながら、とりあえずお風呂に入る際に脱いだ部屋着をクローゼットに片づけることにする。
 何気なくクローゼットの扉を開けてしまった私は、目の前にあのコートがあるのに気づいて心臓が跳ね上がった。
(そうだ……ここにかけてたんだった)
 奥に入れるのも嫌だったからこそこの場所にかけておいたのに、それをすっかり忘れていた。
 これを着ていたエミリさんのことを思い出して、その連想であの人の裸も思い出してしまった。
 顔が赤くなるのが自分でもわかる。
(あんな格好をするなんて……私には、理解できない……)
 はずだった。
 けれどそのとき、私はなぜか不思議な行動に出てしまった。
 部屋着をしまったあと、すぐにクローゼットの扉を閉めればよかったのに、なぜか私は扉を開けたまま、パジャマのボタンを外し始めていた。
(ど、どうせ、大したことないし……ちょっと……大げさに意識しちゃってるだけで……)
 もやもやとした意識を祓い、勉強に集中するためには、私はそうするべきだと考えた。
 実際に、エミリさんの格好を真似てみる。
 そうしてしまえば、私の想像よりずっとつまらないことだということがわかるはずだった。はっきりしない気持ちを晴れやかにすることが出来る。
 そんな風に私は考えていた。
 パジャマの上を脱ぐと、上半身裸になる。さらに、ショーツとパジャマのズボンを一気に引き下ろした。
 部屋の中で全裸になっている。
 普通ならほとんどあり得ないようなシチュエーションだ。服を脱いだだけなのに、もう心臓がバクバクいって、口から飛び出してしまいそうなほどだった。
 ごくり、と生唾を飲み込んで私はクローゼットの中にかかっているコートに手を伸ばす。

露出への兆し3

 私の家の脱衣所には、それなりに大きな鏡がある。
 家を建てる時にお母さんが望んだらしい。それは「毎日自分の体型を意識していれば、自然と食習慣なり運動なりを心がけるようになるのよ」という意図あってのことだった。もっとも、実際にはお母さんは特に太っているわけではないから、その手の話がでる度に、気にしすぎだとお父さんは笑うのだけど。
 それはさておき、そういうわけで脱衣所には大きな鏡がある。それは全身が写るようになっていて、私は幼いときからそれがあるのが当たり前だったから、それについて何かを思うことはなかったのだけど、今日は妙にその鏡が気になってしまった。
 自分の裸を、いつも以上に意識してしまう。
(……お、お風呂に入るんだから……裸になって当たり前じゃない)
 変な意識になってしまっていると、私は頭を振って意識を切り返る。
 それでも、服を脱いで下着姿になるだけでも異様に恥ずかしかった。その下着も脱いでしまうと、いよいよ今日見たばかりのエミリさんの裸が脳裏によぎる。これまでの人生で、同姓の裸を見る機会はたくさんあった。あったけど、あんなに堂々と見てほしいといわれたことは一度もない。というか、自分の裸だってそんなに意識したことはない。
 自然に早くなる鼓動を実感しつつ、私は何気なく自分の身体をその鏡で見た。
(……うわ、なにこれ)
 自分の身体が、なんだか普段と全然違うものに見える。
 控えめな発育をしている胸も、さほど余計な肉がついていないことが自慢の腰も、少し大きいかと気にしていたお尻も。あからさまに性的感覚を覚えるそれらの箇所だけじゃなくて、二の腕とかふくらはぎとか、そういう普通に見えるところすら、変に見えた。
 エミリさんの裸を見てしまったからだろうか。なんだか意識していなかった自分の体のパーツを、エミリさんのそれを見てしまったことで意識するようになってしまったというか……もちろん、完成された美しさを有する綺麗なエミリさんの体と、平々凡々な私の体とでは天と地ほどの差があるのだけど、それでも意識してしまう。
(…………)
 私は、自分の体の形を確かめるように手を動かしかけて……はっ、と我に帰った。
 慌ててお風呂場に飛び込み、頭からお湯を被る。
 そうしてしまえばいつもの入浴と同じだ。タオルにボディシャンプーをかけて泡立てて自分の体を擦る。
(な、なにを考えてるのわたしは!)
 あの人と私は違う。
 今日の印象が強すぎて影響をうけてしまっただけだと、私は自分自身に言い聞かせた。

露出への兆し2

 内ポケットの中から引き出したそれには、エミリさんが書いたと思われるメッセージが書かれていた。
『今日は私の露出に付き合ってくれてありがとう。このコートは先輩からのプレゼントだと思って大事にしてちょうだい。またね』
 優しく綺麗な筆跡で書かれているけど、これをあの店の店員さんの前で堂々と書いていたのかと考えると気が気でなかった。後半はともかく、前半を見られていたら確実に変な目で見られていたことだろう。
 メモの内容はともかく、とりあえず現在の消息不明は本人の意図することだとわかって少しほっとする。こんなメッセージを残すということは、きっとなにかしら別の着る物を用意していたとか、あるいはそのままでも家に帰れるという自身があってのものだろう。
 安心すると、今度はそのコートの始末に困ってしまう。正直、これはエミリさんに返せばいいと思っていたのに、そのエミリさんがいなくなってしまった。そうなると、捨てるか持って帰るかの選択肢か出来ない。
 かといって、一応真面目にこれまで普通に生きてきた私にとって、公園にゴミを不法投棄するのははばかられた。ゴミ箱に捨てればいいのかもしれないけど、こんなコートが公園のごみ箱に捨てられていたら、それはひどく浮いてしまう。それで何か問題になるわけじゃないと思うけど、私自身が気になる。
(……仕方、ないよね)
 私はそのコートをなるべく小さく丸めて、抱き抱えるようにして手に持ち、一見なにを持っているかわからないようにしてから、帰路を急いだのだった。


 そうして持って帰ってきてしまったコートは、いま私の部屋の中で異彩を放っている。
 明らかに私の部屋にあるのはおかしなものだ。
 クローゼットの奥にでも押し込んでおけばいいのかもしれないけど、自分の部屋の一番奥にこれを納めるのは、それはそれで嫌だ。
 かといってこのまま部屋にかけていたら、何かの拍子で家族が部屋に入ってきたら説明が面倒くさくなる。
 私は仕方なく、そのコートを部屋に入っただけじゃ見えないようにクローゼットの中の一番出しやすいところにおいた。
(次のゴミの日に捨てよう)
 プレゼントとはいえ、一方的に押しつけられたものをそんなに大事にするつもりはない。ましてや、露出狂が身に付けていたものなんて、色々と問題だ。
 ひとまずコートが目に付かないところに収まったことで、私はほっと一息を吐く。
 それとほぼ同時に、お母さんが私を呼ぶ声が聞こえた。
「るみちゃんー、お風呂入っちゃってー」
「はーい」
 この家ではだいたいお風呂に入る順番が決まっている。それを乱すことはそれなりの事情がないとしない。別になにかしらまずいことが起きるわけじゃないけど、何となく気が落ち着かないのだ。
 だから、私は急いで着替えをまとめて、お風呂に向かった。

露出への兆し1

 私の部屋に似つかわしくない男物のコートは、まるでその部分だげ切り取っているかのように異様な存在感を持ってそこにあった。とりあえずハンガーにかけてみたけど、違和感しかない。
 私は改めてそれを感じて、ついつい深く溜息をはく。
「どうしろって言うのよ……」
 なんだか全てがエミリさんの目論見通りに進んでいる気がして、私はなんとも落ち着かない気分だった。
 ベッドの上に体を投げ出して寝ながら、私は一枚のメモを取り出す。
 そこには綺麗な筆跡で、私に対するメッセージが書かれていた。
「いつの間に書いたんだろ……レジでお会計してた時?」
 よくよく見ればあの喫茶店の名前がメモの端に印刷されている。そう考えるのが普通だった。
 そういえば店を出る時、お金を支払う以外にも何かしていたような気がする。私は店員さんにエミリさんの格好が気付かれるんじゃないかと気が気でなくてそれに対して考える余裕がなかったけど。
 私はそのメモを見ながら、もう一度溜息を吐く。
 もう、これが何度目の溜息かわからなくなってしまった。


 公園のトイレでエミリさんを待っていた私は、さすがに一時間が過ぎた辺りで何かがおかしいということに気付いた。
 いくらなんでも時間がかかりすぎている。運動公園というだけあってこの公園は広いけど、一周するのに一時間もかかるような大きさはしていない。
 と、なると何かトラブルがあったのかもしれない。なにせあんな格好なのだ。警察に捕まったのかもしれない。あるいは、もっと最悪な事態になっている可能性もある。柄の悪い人たちに捕まってしまったのかもしれない。最悪、レイプされている……なんてことも十分ありえる可能性だ。
 半ば自業自得とはいえ、そんな事態になっていたら大変だった。
 いてもたってもいられず、私はトイレを出て公園内を歩き始めた。エミリさんの姿を探して公園内を一周する。
 けど、公園内はのどかなもので、何か騒ぎになっている様子は全くなかった。それについては少し安心する。
 公園内を見て回ってから、もしかしたらすれ違いでトイレに来ているのかもしれないと、トイレに戻ってみたけど、エミリさんの姿はなかった。
(ど、どうしよう……)
 トイレが視界に入る位置にあったベンチに腰掛け、私は途方に暮れる。
 エミリさんがどこにいったかはわからないけど、私があの人のコートを持っている以上、帰るわけにはいかなかった。
 いまも全裸のエミリさんがどこかを歩いているのかと思うと、心臓がドキドキと高鳴る。
 悶々と悩む間にも時間は過ぎていき、気付けば夕暮れが迫っていた。
(ど、どうしよう、そろそろ帰らないと……)
 夜までこんなところにいたら、私の方も危ない。
 私は途方に暮れ過ぎてちょっと泣きそうになりながら、手にしていたコートを見る。
 その時、思いついた。
(そ、そうだ)
 エミリさんのコートを広げて、何か手がかりがないかどうかを調べる。この状況を打破できるものなら何でもよかった。両手を入れるところには何も入っていない。
 そうやってコートを調べていると、内ポケットの存在に気付く。上からその部分を撫でてみると、中に何かが入っているような感触があった。
(こんなところに……?)
 そこに入れた指先が、紙の質感に触れた。

PIXIVの方で作品を公開しました。

ピクシブの方に長編・『露出への協力』を公開しておきました。
なお、多少加筆修正はしていますが、大した変更はありません。

先週は更新出来ない日がありました。
今週も色々と忙しいので、まともに更新出来ない日があるかもしれません。
[ 2013/11/10 23:03 ] 連絡 | TB(0) | CM(0)

露出への協力5


 エミリさんとすれ違った人から、ひそひそという話し声が聞こえてくる。
「なにかしら……あれ……」
「頭おかしいのよ……見ちゃダメ……」
 微かに漏れ聞こえた声によると、そんな感じの話をしているみたいだった。
 そのあまりにあけすけな侮蔑の言葉に、私の心臓が跳ねる。
 実際に言われているのはエミリさんなのに、それに自分が関わっているせいで、自分が言われたような気分になってしまうのだ。
(この位置って、まずいかな……)
 30mも空ければ大丈夫だと思っていたけど、ずっと同じ方向に進み続けていたら不自然かもしれない。
 進行方向がたまたま一緒だと思ってくれればいいけど、私の手にはエミリさんに渡されたコートがある。
 最悪、そのコートとエミリさんを結び付けて考える人がいたら……私までエミリさんの同類として扱われてしまうかもしれない。
 そう考えると、エミリさんとすれ違って私ともすれ違う人の目が急に気になってきた。私に視線を向けてくる人は、ひょっとしたら私とエミリさんを結び付けて考えるかもしれない。
 私はエミリさんと違って肌を全然晒していないのに、恥ずかしくなって来てしまった。
 可能だったならすぐにでも道を曲がってこの通りから離れたことだろう。
 けれど、それを手の中のコートが許さない。もしもこのまま私が姿をくらませてしまったら、エミリさんは全裸のままでいなければならない。いくらエミリさんでも、こんな場所で全裸で放置されたら捕まってしまうだろう。そんなことになったら、さすがに目覚めが悪い。
(うう……早く歩いてよ……)
 一刻も早く運動公園に辿りついて、服を受け取って欲しいと思った。
 けど、エミリさんはあくまでもマイペースに歩き続ける。
 途中、裸で歩くエミリさんを面白がったのか、通行人達がエミリさんを写真に収めていた。
 さすがに物として残るのは嫌だろうと思ったけど、エミリさんは全くそれを気にせずに一定の速度で歩き続けていた。
 エミリさん本人よりもこっちの方がと恥ずかしい思いをしている内に、ようやく運動公園に辿り着く。
 私は少しほっとして、急いで公園のトイレに向かった。その辺の公園のトイレは汚くて、とても入れるようなところではないけど、この運動公園のトイレは綺麗に清掃されているので、入ることに問題はない。
 一番奥の個室に入って、とりあえず中で待つことにした。
 いまエミリさんは公園を一周しているところなのだろう。その姿を想像して、私はこっそり顔を赤くしていた。
 これでエミリさんとの関わりも終わり、そんな風に考えながら、私はエミリさんがやってくるのを待った。

 けれど、結論から言うと。
 何時間待っても、エミリさんは来なかった。


~続く~

露出への協力4

 エミリさんは堂々と歩いていた。
 こちらからはエミリさんの表情こそ見えないけど、その堂々とした歩みはまさに誰に憚ることない、自信を持った人の歩みだった。
(……見てるこっちが恥ずかしくなっちゃう)
 この辺りはまだ人通りが多くないとはいえ、皆無じゃない。
 時々エミリさんとすれ違う人もいて、そういう人達は例外なく驚きの表情を浮かべていた。
 エミリさんとそういう人達がすれ違う度、こっちの方が恥ずかしくなってしまう。
(どんな、気分なんだろう)
 本来服の下に隠しておくべきものを全て曝け出して、道を歩く気持ちは私にはわからない。
 試しにちょっとだけ想像してみたりもしたけど。
 想像するだけで、人をすれ違いざまに視線を向けられる想像をしただけで、顔から火が出るくらいに恥ずかしくなってしまう。
 手に持ったエミリさんのコートが、急に重く感じられた。
 エミリさんの身体を隠すためのものはここにある。エミリさんは例え途中で恥ずかしくなって身体を隠そうとしても、隠すことも出来ない。
 そんなエミリさんの気持ちを想像すると、益々私は心臓が大きく高鳴るのを感じる。
(いけない……)
 私は勤めて冷静になろうとして、深呼吸を繰り返す。
 エミリさんに流されてはいけない。今回限りのお手伝いで、これが終わればエミリさんとの関わりもなくなる。
 そうすれば、忘れてしまえばいい。
 私はエミリさんにはなれないし、なりたくない。

 私は普通なのだから。

 エミリさんが異常とまでは言わないけど、普通じゃないことは間違いない。それと同じになってはいけない。
 そんな風に、常識で私は考えた。
 それでもやっぱりエミリさんの様子は気になって、ついつい目でエミリさんの姿を見てしまう。
 素っ裸なのに、堂々と歩くエミリさんは、不思議と綺麗に見えた。
 その堂々とした姿には、ほんの少しだけ、憧れざるを得ない。周りに流され、周りと一緒であることが求められる現代っ子の私としては、やっぱりエミリさんのように誰とも違う道を、いや、普通じゃない道を歩ける人には憧れてしまう。
 エミリさんのように露出をしたいというわけではなく、単純にその精神性に憧れた。
 私はそうだと思っていたし、実際そうだったと思う。
 少なくとも、この時は。
 エミリさんはさらに進んで行く。運動公園に向かう道を曲がった。私も道を跨いで、エミリさんの30mくらいの距離を保って追いかけた。
 この道は人通りが多い。当然、エミリさんはたくさんの人にその裸を見られていた。

露出への協力3

「じゃあ改めて流れを説明するわね」
 エミリさんは何がそんなに楽しいのか、歩道橋の手すりから身を乗り出しながら説明を始める。
 下から見たらエミリさんが何も履いてないってことがばれてしまうんじゃないだろうか。私はドキドキしていた。
「まず、ここで私がコートを脱ぐから、ルミナちゃんはそれを持って、あっち側から歩道橋を降りて」
 そういってエミリさんは歩道橋の一方を指差す。
「私は反対側の階段から降りて、そのまま運動公園に向かって歩くわ。ルミナちゃんはちょっと遅れ気味に歩いてくれれば、通り越しになっちゃうけど、私が露出しているところがよく見えると思う」
 そのままエミリさんは指を遠くへと剥ける。
「50メートルくらい行った先に信号があるから、そこを渡って私のいる側に来て頂戴。タイミングは見計らうから、私を背後から追いかけて来て。あまり近付きすぎると不自然に思われるから、それなりの距離は置いてね」
 そしてそのまま運動公園に行く、とエミリさんは言う。
「運動公園についたら、私は公園内を一周するわ。その間にルミナちゃんは女子トイレに入っておいて。場所は一番奥の個室にしましょう。そこでコートを渡してもらって、私はすぐに去るわ」
 そうすれば、自分との関わりは誰にもわからない、とエミリさんは笑う。
「わかった? 大丈夫?」
 そうエミリさんが聴いて来たので、私は慌てて頷いた。反論や疑問を差し挟む隙がなかった。
 エミリさんは満足そうに頷き、コートのボタンに手をかけた。
「それじゃあ、始めましょうか」
 いきなり、と思う間もなく、エミリさんはコートのボタンを外し始める。とっさに周囲を見渡したけど、幸い人影は一つもない。
 喫茶店内で散々目にした、エミリさんの身体が露わになっていく。つくづく同性ですら見取れるほどの、均整の取れた身体だった。
 白日の下でそれを見ると、また別の感想を抱いてしまう。ただ服を脱いだだけなのに、凄くいやらしく見えてしまうのだ。
「さ、これを持って」
 エミリさんが一瞬前まで着ていた服が私の手に渡される。
 微かに残ったエミリさんの体温が、なんとも生々しく感じられた。
「じゃあ、公園でね」
 エミリさんは察そうと、身体を隠そうと言う素振りなく、歩き出す。
 私は茫然とそれを見送りかけて、慌ててコートを腕にかけて歩き出した。
 エミリさんとは反対側から階段を降り、通り越しにエミリさんの様子を観察する。

露出への協力2

 エミリさんが目的の場所に着いたと言ったところは、なんと歩道橋の上だった。すぐ下を早いスピードで車が通り抜けて行く。
 人通りはあまりなく、地元民しか使わないような歩道橋だ。
「こ、こんなところで脱ぐんですか……?」
 いくら車がスピードを出しているとはいえ、次から次へと人に見られてしまう位置だ。手すりはあるけど、それなりに隙間があいているから、障害にはならないだろう。
「うーん、ここ、じゃないのよね。舞台は」
「?」
「ねえ、ルミナちゃん。ここから少し歩いたところにある運動公園ってわかる?」
「え、ええ。一応……」
 子供の頃よく遊んでいた公園だ。
 私の家からはちょっと遠かったけど、遊びがいのある遊具が多かったのと広いのとで、子供の時はよく自転車に乗っていったものだった。
 さすがに大人になった今では、ほとんど行くこともなくなったけど。
「これからそこまで歩こうと思うの」
 ここから普通に歩けば、十分はかかる距離だ。そこまで、エミリさんは裸になっていくという。
 私はごくりと喉を鳴らした。
「ほ、ほんき……ですか? ここはともかく、そこまでの道は……人通り、結構多い、ですよ?」
「大丈夫よ。ルミナちゃんには迷惑はかけないから。……けど、一つだけお願いがあるの」
「お願い?」
 エミリさんは優しく頷いて、言葉を続けた。
「私がいまから脱ぐコートを持って、公園まで来てくれる?」
 思いがけない協力の依頼に、私は戸惑った。
「実は、露出の時のルールでね。脱いだ服は手に持たないことになってるの」
「る、ルール……?」
「ええ。マイルールって奴だけどね」
 にっこりと笑い、エミリさんは言う。
「本来だったら、脱いだ服をこの近くに隠しておいて、公園に行って、そこからまた戻ることになるんだけど……さすがに同じ場所を二度歩くのは危ないから。前からやってみたかったんだけど、中々出来なかったのよね」
「そ、そうなんですか……」
「協力、してくれる?」
 見るだけのはずだったのに、自分までその当事者にさせられようとしていることはぼんやりと理解していた。
 けれど、ここで断れるほど意思が強ければ、そもそも私はここに来ていない。
「……わかり、ました」
 服を持って行くだけならいいか、なんて。
 この時の私はそんな風に考えていた。

露出への協力1

 極々普通の一般人でしかない私、垣滝るみなは困惑していた。

 水沼エミリさんという露出狂……エミリさん曰く、露出ッ子と呼んで欲しいそうだけど、とにかくその人とたまたま偶然出会ってしまった私は、エミリさんに誘われるまま、なぜかエミリさんの露出行為を見ることになってしまった。
 本当は「一緒に露出しましょうと誘われたのだけど……もちろん凡人足る私は露出癖など一切持ち合わせていなかった。
 だから、当然断ったら、「私の露出するところを見て欲しい」と頼まれてしまった。
 正直、隙を見て逃げようかとも思ったのだけど、普通に話している時のエミリさんは極々普通で、むしろ綺麗なお姉さんという感じで、むやみに逃げるのも躊躇われた。
 エミリさんは男物のコートを身につけていて、その事実だけを見ればちぐはぐな存在なのに、元々の綺麗な容姿のせいで、それすら着こなしているように見えるのだから不思議なものだ。
「ルミナちゃんは勉強とか得意?」
 美しいエミリさんは、周りの視線を否応なく集める。
 けれどそれに対して何か感じている様子はなく、自然な表情と口調で道中私に話しかけて来た。
「……苦手、です。赤点を取ったことはないですけど、逆に九十点以上も取ったことないです」
 真面目に授業は受けるし、テスト勉強だってする。
 だから赤点を取ったことはない。けど、それほど熱心に勉強をしているわけじゃないから、高得点を取ったこともない。
 つくづく、自分は普通に普通だと思う。
 いかにも頭の良さそうなエミリさんは、私の話に優しく頷いた。
「運動は?」
「……得意じゃないです。部活にも入ってないですし」
 病気らしい病気をしない、健康であることは割と自慢なのだけど、地味だった。
 本当に私には誇れるところがほとんどないことに改めて気付いて、溜息を吐く。
 そんな私を、エミリさんは優しい目で見つめていた。
「……なんですか?」
「ん? 可愛いなぁ、って」
 いきなりそんなことを超絶美人に言われて、私はそれをどう捉えていいのかわからなくなる。
「だって、自分が普通であることに悩めるなんて、いかにも若者って感じでいいじゃない?」
「……エミリさん、おいくつなんですか?」
 思わずそう聴くと、エミリさんは誤魔化すように楽しそうに笑った。
「野暮な質問よ、それは。……さあ、着いたわ」
 いつの間にか、目的地に辿りついていたらしい。
 私の心臓がドキン、と大きな音を立てる。

PIXIVの方で作品公開しました

ピクシブの方に短編『奪衣術』を公開しておきました。
なお、多少加筆修正はしていますが、大した変更はありません。
[ 2013/11/03 19:57 ] 連絡 | TB(0) | CM(0)

今日はおやすみ

姉妹ブログ・黄昏睡蓮の方の作品をピクシブに公開しました。
明日はこちらの短編『奪衣術』をアップしようと思ってます。
[ 2013/11/02 23:12 ] 連絡 | TB(0) | CM(0)

奪衣術5

 焦りを滲ませる彼女の様子は把握しつつ、俺はそれを無視して刺激を与え続ける。
 さすがに感じる余裕もなく、彼女は必死に解決策を模索しているようだった。だが、そんな都合のいい物がその辺に転がってるわけもない。
 俺はさりげなく刺激するのを止め、手をひっこめた。
 恐慌状態にある彼女は俺の手が離れたことにも気付かず、何も出来ないまま、電車が駅に到着する。
 この駅で周りの人間が一切降りないおいうことなどあるわけもなく、彼女の周りも動き始める。そして、いままで気付いていなかった彼女の格好に気付いた乗客が目を見開いて驚くのがわかった。
 まだ騒ぎにはなっていない。見ている物も、目の前にある光景が理解出来ないのだろう。彼女は自分の腕で出来る限り自分の身体を隠そうとしていたが、そんなものは焼け石に水だ。
 電車のドアが開き、乗客が一気に減る。その時だ。
「ええっ!?」
 彼女の格好に気付いた誰かが大きな声を上げた。
 彼女が息を呑み、周囲の視線が彼女に集中する寸前。
 俺の手が閃いた。
 ふわり、と柔らかな風が吹き、彼女はちゃんとしたスーツ姿になっていた。
「え、あれ?」
 声をあげた男性は、緊縛された女性が、いきなり服を着ている状態になって、即座にトーンダウンした。
 女性は自分の格好が戻ったことに気付き、慌てて顔を伏せながら、電車を降りていった。
 ざわめく車内から、俺はのんびりと降り、人ごみで溢れかえる駅構内を進む。彼女から一定の距離を取っていた。彼女はおぼつかない足取りで人ゴミをよけながら歩いている。
 おぼつかない足取りになるのも仕方ない。なぜなら現在彼女の服の下に隠されている身体は、いまだ緊縛されているからだ。
 俺の技術なら服を着せると同時に脱がせることも可能だったが、あえて縄はそのままにしておいた。むしろ股間部分に結び目を作って刺激を強めるおまけつきだ。
 しかもその仕掛けは歩けば歩くほど食い込むような仕組みになっており、いまこうして駅構内を歩くだけでも、彼女はどんどん縄が股間に食い込んでいっているということになる。
 そのまま限界がくればいいと思ったが、彼女は女子トイレまで無事辿りついてしまった。こうなっては、時間はかかっても縄を解いてしまうだろう。
 もっと楽しみたかったのだが、仕方ない。
 いくらでも楽しませてくれそうな状況にある女性はいくらでもいる。
 俺は駅から出て、次の獲物を探して町を歩き始めた。


~奪衣術 終わり~

[ 2013/11/01 20:00 ] 小説・短編 奪衣術 | TB(0) | CM(0)
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