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黎明媚態

露出系、羞恥系の18禁小説を書いています。関連の同人・版権作品のレビューも書きます。18歳以下の閲覧禁止。

バスタオル一枚で異世界転移 第四章 おわり

 頭のいい人であれば、ここからでも起死回生の一打を放てるのかもしれませんが、一般人の私にはどうすればいいのか見当もつきません。

(何か……翻訳機とか、都合よく落ちてないでしょうか……)

 出来る人ならその辺に転がっている本を回収し、それを解読してこの世界の文字を学ぶのかもしれません。
 私はたまたま近くに落ちていた一冊の本を手に取って中の文字を見てみました。
 たぶん、元の世界にはなかった文字でしょう。少なくとも英語でも漢字でもありませんでした。
 世界を探せば似たような文字はあったかもしれませんが、いずれにせよ解読の糸口すら掴めない類の言語です。

(単語単位で区切れてすらいない……これは解読できませんね)

 単語ごとに分かれていればまだ推測も付いたかもしれませんが、文章ごとになるともはやお手上げです。
 ぱっと見ではミミズがのたくったような文字にしか見えないのです。ある程度の規則性はあるようですが。
 崩し字のような文字から解読するのは、とてもではありませんが無理でした。

(語学堪能な仲間がいれば…………いえ、なにも、仲間にいる必要はないのでは?)

 要は、私の意思が伝わればいいわけです。
 異世界の言葉をリアルタイムで翻訳出来る魔法があるのですから、こちらの書き文字を理解できるようになる魔法があってもおかしくありません。
 必ずしも、私が向こうの言葉を理解する必要はないんです。

(置き手紙! これです!)

 ドラゴンが恐れられていようとも、置き手紙なら向こうはじっくり確認することができます。
 書いてある文字が日本語だったとしても、魔法でなら解読してくれるかも。
 私は急いで周囲を見渡し、紙とペンを探します。
 いま見ていた本に書く事も考えましたが、もっと目立つ方がいいでしょう。

(地面に書くのは風で消えてしまいそうですし、ちゃんと残るものに書かないと……)

 何かないかと探していると、どこかから剥がれたらしい木の板を見つけました。
 ペンも見つかりましたが、書けませんでした。
 恐らくインクをペン先につけて書くタイプなのだと思いますが、インクが見当たりません。
 ボールペンやマジックペンが当たり前にある現代とは違うので仕方ありません。
 それに木の板に書くのなら、小石などを使って傷をつけた方が早そうですね。

(なんて書きましょうか……えーと、『お騒がせして申し』……いえ、無駄なことを書くべきではないですね)

 シンプルに行きましょう。

『 私は 日本から 来ました 清澄 聖羅 です 』
『 言葉が 通じなくて 困っています 助けて ください 』

 これでよし。
 私はその言葉を刻んだ板を、わかりやすいところに立てかけておきました。
 万が一にも誤解されないよう、極力マイナスイメージのある言葉は避けました。
 つまり『戦』とか『殺』とか『死』とかですね。
 敵対する気はありません、とか。殺さないでください、とか。死にたくないです、とか。
 よくある話ではありますが、漢字の意味だけ解読され、「この者は我々と敵対する意思がある」なんて誤解されるのを避けるためです。
 文章で残すのですから、ないとは思いますが……大抵のお話ではそのはずだった物が後々の火種になってしまっていました。

(そう考えるとこの置き手紙も思わぬ形で伝わるかもしれませんが……何も残さないのはそれこそ最悪の結果になりそうですし)

 いまのままだと、突然街に現れてドラゴンをけしかけて破壊を振りまき、去って行っただけの存在ですからね。
 置手紙が吉と出るか凶と出るか。
 この世界の良識と、私の運命にかけるしかありません。
 向こうの人たちも解読が出来ずに読まれないという可能性もありますが、少なくとも意思を伝えたいという意図だけは伝わることでしょう。
 それさえ理解してもらえば、まずは交渉から入ろうとしてくれるはず……だと信じます。

(他に街で出来ることは……)

 出来れば、様々な物資を持っていきたいところでした。
 また森の中に戻るとしても、何もないと色々試すこともできません。
 もう完全に火事場泥棒でしかありませんでしたが、袋のようなものを見つけたので、その中に手当たり次第に目に付いた物を放り込んでいきます。
 ペンや本、皿や布など、とりあえず入れるだけ入れました。
 とはいえ、片手で持てるくらいの量にしないといけなかったため、持って行ける量はそれほどありませんでしたが。
 ひとまず、これ以上この街で出来ることはなさそうです。
 あまり長居すると危険なことになりそうですし、ここから離れましょう。

(そういえば、ヨウさんは……?)

 私が家に入った時は、ドラゴンと一緒に残っていたので、ブレスに巻き込まれたということはないはずです。
 辺りを見渡して見ると、瓦礫の影に特徴的な光が見えました。
 その瓦礫の傍に近付いて見ると、身体を極限まで小さく丸めたヨウさんが、瓦礫の影に隠れて震えていました。
 どうやらドラゴンが放ったブレスに怯えているようです。
 無理もありません。私はバスタオルの加護があるから大丈夫ですけど、普通なら容赦なく消滅させられそうな威力ですからね。

(すみません……私に付いてきてもらったばっかりに)

 私はヨウさんの傍にしゃがみ、その背中にそっと手を当てます。
 触れたヨウさんの背中は震えていました。触れると、ヨウさんも私に気づいて、こちらを涙目で見てきます。その表情が少し安堵したような気がしました。
 慰めることには成功したようです。
 ドラゴンに気遣われている私が傍に居る限りは安全だと思っているのかもしれません。
 これから、ヨウさんにはドラゴンへの通訳をしてもらわないといけないのが心苦しかったですが。
 ヨウさんが落ち着いたのを見てから、私は地面に伝えて欲しいメッセージを描きます。

(えーと、元いた森を同じように示して……と。で、いま私たちがいるところを示して……矢印で繋いで……)

 『元いた森に帰ろう』という意図が通じると良いのですが。
 何度かやっているだけに、その絵からヨウさんは私の意図を理解してくれたようでした。
 しかし、その目を見開くと、私の肩を掴み、激しく首を横に振ります。
 戻りたくない、という意味であると推測できます。
 どうして元いた森に戻りたくないのか、というのは愚問ですね。
 ヨウさんは恐怖に満ちた様子でドラゴンをちらちら見ていましたから。

(なるほど……ヨウさんが私に同行してくれた目的は、私に対する親切というよりは、むしろ、森からドラゴンを引き離すことにあったわけですね)

 森の管理者の彼女たちにしてみれば、このドラゴンは最大の脅威です。
 ゆえに、三人いる内のひとりが犠牲となってでも、森からドラゴンを引き離す。そういう判断をしたのでしょう。
 だからこそ、いまの私の提案は受け入れられないのです。
 迷惑しかかけていないのですから当然かもしれませんが、ヨウさんが親切心などの好意で同行を申し出てくれたわけではないことに、私はショックを受けていました。
 そして、ショックを受けているということを、自嘲します。

(私は、何を勝手にショック受けてるんでしょうね……当たり前じゃないですか)

 ヨウさんたちにしてみれば、私という存在はドラゴンが森にやってくる原因となった、諸悪の根源です。
 そんな私に対して、ヨウさんたちが好印象なんて持つわけがないのです。
 実際、私はドラゴンに対して怯えきっているヨウさんに、まだ通訳をしてもらおうとしているのですから。
 本当にヨウさんのことを思うのであれば、森に帰ってもらうべきでしょう。
 そうできないのは、ヨウさんに甘えているからです。

(いまヨウさんに離れてもらうわけにはいきませんから……)

 私は地面に描いた絵から、ヨウさんが元いた森を示す絵を消します。
 矢印も消し、明後日の方向に矢印を書き直しました。
 とにかくこの街からは移動しなければなりません。
 出来ればこの近くの、人がいない場所がいいのですが、果たしてそれが伝わるかどうか。
 少なくとも元いた森じゃなくてもいいことは伝わったようで、ヨウさんがドラゴンを見上げて、通訳をしてくれました。
 私はなるべくヨウさんの傍から離れないように立ちます。

「グルル……」

 不思議そうに首を捻りつつも、ドラゴンは移動に了承してくれたのか、再び私とヨウさんをその手に掴みます。
 その際、手に提げている袋の中身が潰れやしないかとひやひやしましたが、上手くヨウさんと私の間に挟まったらしく、潰れたり落としたりする心配はなさそうです。
 ドラゴンが翼を広げ、その場から飛び立ちます。
 徐々に高度があがっていきます。
 だいぶ慣れたのか、余裕を持って周りを見ることが出来ていたので、私はそれに気づくことが出来ました。

 私たち目掛けて、ドラゴンと同じくらい巨大な火球が飛んで来ていました。

 私はそれに反応して声をあげることすらできませんでした。
 その火球はロケットランチャー並の早さで飛んできていたからです。
 不意の銃撃を避けられる人間などいません。
 人間の反射速度には限界があり、だからこそ奇襲や強襲といった作戦行動は意味を成すのです。
 そしてその火球は、私の反応を完全に上回った攻撃でした。

 しかし、それでもドラゴンには通じませんでした。

 ドラゴンとて、火球に気づいたのは私と同じタイミングだったはずです。
 もしかすると何か私にはわからない感知能力があるのかもしれませんが、少なくとも私の目には、ドラゴンは火球が飛んできた段階で反応したように見えました。
 視線を火球に向けると同時に、その火球を遮るように幾何学模様の紋章が空中に浮かび上がり、火球の爆発を完全に防いでしまったのです。
 さらに、ドラゴンは間髪入れず、その火球が飛んできた方向に向けて、ブレスを一閃。
 吐息というにはあまりにもビーム的な黒い閃光が虚空を走り、町の一角を吹き飛ばしてしまいました。

(……うわぁお)

 内心思わずそう呟いたのも仕方ないと思います。あまりのことに呆然とせざるを得なかったのです。
 攻撃されたから反撃しただけ、というにはあまりにも一方的でした。
 このドラゴンが強すぎるのか、それとも元々人とドラゴンの間にはこれだけの力の差があるのか。
 それはわかりませんが、このドラゴンを力でどうにかするのは無理だというのがはっきりとわかりました。
 このドラゴンの機嫌は極力損ねないようにしなければなりません。

(言葉すら通じないのに、機嫌取りも何もないですけど……)

 ドラゴンは満足げに一声啼くと、翼をはためかせて移動を開始しました。
 どこに連れて行ってくれるのかはわかりませんが、誰の迷惑にもならないところならいいのですが。
 ドラゴンの意思に任せたまま、空中を移動すること数分。
 数分とはいえ、また結構な距離を移動してしまいました。
 置き手紙を残してきたわけですし、あの街から離れすぎたくはなかったのですが、仕方ありません。
 まずはドラゴンがどこに連れてきてくれたのかを確認しなければ。
 見たところ、人の街とかではないようですし、ヨウさんの森でもありません。
 険しい山がいくつも連なった山脈、でしょうか。
 風景を見極めていた私は、ヨウさんが震え出したことに気づきました。

(よ、ヨウさん……?)

 元々人形みたいに白く透き通った肌をしていたヨウさんですが、その顔色が死人のようになっていました。
 恐怖を通りこし、絶望しているようです。目に光がまったくありません。
 もし現代日本でこんな顔をしている人がいたら、即救急車を呼ぶでしょう。
 それくらい、ヨウさんに生気が感じられませんでした。

(ヨウさんがこんなになってしまうような理由が、この山にあるのでしょ……う、か……ッ!?)

 推測する必要もありませんでした。
 なぜなら、ドラゴンが高度を下げ始め、山の一角に降りて行ったためです。
 そして、その降りようとしている一角を見れば、ヨウさんがどうして絶望しているのかの理由もはっきりとわかりました。
 ドラゴンの降りていく先には――

 多種多様なドラゴンが、数多集まっていたからです。


第五章につづく

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