FC2ブログ

黎明媚態

露出系、羞恥系の18禁小説を書いています。関連の同人・版権作品のレビューも書きます。18歳以下の閲覧禁止。

バスタオル一枚で異世界転移 第八章 2

 私が中庭に入るや否や、リューさんが突進して来ました。
 そして私が反応できないうちに、その首を伸ばして、私を掬い上げるようにしてその鼻先に乗せてくれました。

「げっっふっっ!!!」

 女性らしからぬ潰れた声をあげてしまいました。
 何度も言いますがリューさんの体躯は巨大で、頭部だけで熊並の大きさなのです。そんなものが勢いよくぶつかってくればどうなるか。
 私は交通事故に遭ったかのような衝撃に全身を貫かれ、バスタオルの加護がなければ確実に内蔵が潰れて死んでいたところでした。

「だっ、かっ、らっ……! 加減してくださいって言ってるじゃないですか!!」

 リューさんの鼻先に掴まり、落ちないように体を支えながら、なんとか言葉を絞り出します。
 言葉の意味は通じずとも、怒られたことはわかったのでしょう。
 リューさんは弱々しく「きゅるる……」と鳴きました。
 わかってはいるのです。これでもリューさんにしてみればかなり加減したつもりの一撃だったと。
 私の言葉の意味が正確にわかるイージェルドさんに翻訳してもらい、「人間は脆いのだから、ふれ合う時には十分注意して欲しい」ことはリューさんに伝えられています。
 しかし、狩りの直後など、リューさんのテンションが上がっている時には、手加減を忘れて突っ込んで来ます。
 普通なら死んでいる衝撃を、何度受けたかわかりません。

(まったくもう……はしゃいで力加減を誤る子供じゃあるまいし……)

 私はため息を吐きつつ、もう怒っていないことを示すため、乗っかっているリューさんの鼻先を、手のひらでぽんぽんと軽くたたきました。
 足が地面に着かず、空中に浮いていた私を、リューさんがゆっくり下ろしてくれます。そして、地面に降り立った私に、今度はちゃんと手加減してすり寄ってくれました。
 いや、体格の差が圧倒的なので、十分加減されていても思わずよろけてしまうレベルなんですけどね。
 これが存在するだけで戦争を止め、世界を震撼させる魔物であるというのが信じられません。

(……ほんと、大変な存在に好かれてしまったものです)

 死告龍。敵対した者がことごとく葬り去られたことからついた呼び名。
 元々ドラゴン自体が最強種族のひとつに数えられる存在だそうですが、リューさん以外のドラゴンは国でなんとか対処可能なレベルだそうです。
 確かに強大な魔力や強靱な体躯は有しているものの、魔法を用いるこの世界の人々とて負けてはいません。練度の高い魔法騎士隊ならば、魔物が用いない魔法の道具を駆使して元々の力の差を埋めうることができるのだとか。
 できるなら敵に回したくないのは普通のドラゴンでも変わらないそうですが、犠牲を覚悟で戦えば決して対処不可能な脅威ではないのだと。
 では、なぜリューさんだけが、相手をすれば国が滅ぶとまで恐れられているのかといえば、リューさんが吐くブレスの属性に問題がありました。

(魔王が最期に言い残した『耐性持ち』……ほんと、バスタオルの加護様々です)

 ドラゴンは生まれつき決まった属性のブレスを吐くことができるそうです。
 わかりやすいところだと炎とか毒とかですね。珍しいものだと、雷のブレスだとか氷のブレスとかを吐くドラゴンもいるそうです。
 そしてリューさんの吐くそれは、『即死のブレス』というべきものでした。
 なんでそんな属性がリューさんに宿ったのかは、リューさん自身が語ろうとしないので不明ですが、とにかくその効果がえげつないものでした。

 確率で、死ぬんです。

 その身に宿す魔力の多い者――イージェルドさんがいうところの勇者や魔王であれば、その確率は大きく下がるそうですが、普通の兵士レベルではまず耐えられないようです。
 そして致命的なことに、この世界には「無効化魔法」というものが存在していないのだそうです。
 一応『耐火魔法』のようなものはあるようですが、例えば、防火服を着ていたとしてもある程度の炎に耐えられるだけで、炎を無効化できるわけではありませんよね。すこしは影響が出てしまいます。
 そして、炎相手なら、表面が焦げる程度の影響ですみますが、即死相手にちょっとの影響でも受けるというのは致命的なことらしいです。

 要はどんなに備え、どれほど確率を小さくしても、死ぬときは死ぬのだとか。

 そしてリューさんは体力や魔力が保つ限り、そのブレスを連発できるそうです。当たれば死ぬかもしれないブレスを連発できちゃうわけです。
 当然、二発、三発と繰り返せばその分相手が死ぬかもしれない確率はあがります。
 イージェルドさんにそういう話を聞いた時、私はリューさんこそ「チート」持ちの転生者なんじゃないかと疑いました。
 だってズルすぎじゃないですか。そりゃ軍隊が意味をなさないわけです。
 リューさんにあっさりやられてしまったあの魔王も、一発目で運悪く死ぬ確率を引いてしまったんでしょう。
 どのくらいの確率だったかはわかりませんが、即座に撤退しようとしたあの魔王の判断は的確といえます。下手に相手したら負けなわけですから。

(あの街で逃げていった人たちの怯えようも納得です)

 リューさんの力を知るにつれ、あれだけ人々に恐れられていた理由がわかりました。大妖精という魔物の中では上位に存在するヨウさんたちが怯えるのも無理はありません。
 森を管理するという性質上、逃げるわけにもいきませんから、リューさんは天敵以外の何者でもないわけです。
 私にバスタオルがなければ、最初の一撃で終わってましたね。
 しかし、そうなると気になってくるのは、バスタオルの加護はリューさんのブレスを無効化しているのかどうか、ということです。
 いまの状態でそうそうブレスを吐かれることはそうないと思いますが、私が平気だと判断してブレスを放ってくることがあるかもしれません。
 最初にブレスを無効化できたのは単に運がよかっただけで、次は運悪く死ぬかもしれないのです。

(神々の加護、っていうくらいですから無効化されてると嬉しいんですが……せめて、どれくらい耐性があるのか知れれば……)

 イージェルドさんの【探査】の魔法を弾いてしまうので、それもわからないのが厳しいところです。
 最高の防御力が、かえってその把握を妨げているというのは、実に皮肉でした。
 ともあれ、わからないならわからないなりに、凌いでいくしかないでしょう。
 私はリューさんが満足するまで戯れた後――弄ばれたというべきかもですか――私は城内に戻ることにしました。

「それでは、また夕方に会いにきますので……」

 すこし離れてそう言うと、リューさんは目に見えてがっかりしたような態度を取ります。肩を落とし、寂しげに「ぐるる……」と唸るのです。
 ここだけを見れば、しゅんとしている大型犬みたいで、可愛いのですが。
 私はリューさんが寄せてきた鼻先を、最後にもう一度撫で、中庭から城内へと戻ります。 振り返って見ると、リューさんはとぐろを巻いて体を休める体勢になっていました。
 一見隙だらけのように見えますが、あれで周囲の警戒は怠っていないというのだから最強種族は伊達ではありません。

(そうでなければ、奇襲や不意打ちなどが有効なのでしょうけど……ドラゴンを一撃で斃すというのも難しいみたいですし)

 まあ、いずれにしても攻撃力皆無の私には無理な話ですが。
 自分にあてがわれた部屋に向かって歩いていると、目の前の廊下の角からオルフィルドさんが歩いて来るのが見えました。
 思わず身体を硬直させてしまう私に対し、オルフィルドさんはフレンドリーに片手を挙げて挨拶して下さいます。

「やあ、キヨズミ嬢。ちょうどよかった。いまから貴女の部屋を訪れるところだったんだ」

 相変わらず眼光は鋭いですが、オルフィルドさんは和やかにそう告げます。
 しかし、私は言われたその内容に少し戸惑いました。

「何か御用でしたか?」

「なるべく多く話した方が翻訳が早くなるからな。ちょうどいい時間だったし、共に食事でもどうかと思って」

 そういえばもうそんな時間でしたか。リューさんと戯れている間に、時間が経っていたようです。
 できれば遠慮させていただきたいところです、が――私は喉元まで出かかった否定の言葉を飲み込みました。
 いくら本人がいいと言っているとはいえ、相手は会社で例えるなら副社長とか常務とかのいわばお偉いさんです。貴族社会のようですから、実際はもっと偉いでしょう。
 そんな人がわざわざ時間を割いてくれているのに断る、というのは日本の庶民感覚で生きてきた私にとって、心苦しいことでした。

「……喜んでご一緒させていただきます」

 本当はご飯の時くらいはゆっくりしたいのですが、これは自分のためになることですから。そう自分を納得させ、営業スマイルを浮かべます。
 オルフィルドさんはそんな私の笑顔をどう思ったのか、嬉しげに頷きました。

「では、案内しよう。こちらだ」

 そういって、オルフィルドさんは私があまりいかない方向へと誘導し始めました。
 流されつつ、どこに連れて行かれるのかと焦りました。

「あ、あの」

「大丈夫だ。ちゃんと承知しているとも。人払いは済ませてある」

 それなら、まあいいかと思ってしまった私は、忘れていました。
 オルフィルドさんが生粋の王族であり、その感覚はどうしても私のような庶民とずれているのだということを。
 案内されるがままたどり着いたのは、やたらと豪華で広く、ばかでかい食卓が鎮座している一室でした。
 ドラマでしか見たことのないその部屋の豪華さに圧倒されてしまいます。

「キヨズミ嬢。こちらに」

 そういって促された席に座ると、その対面にオルフィルドさんが座ります。
 さすがに声を張り上げないと会話もできなさそうな距離の誕生日席同士に座る、みたいなギャグみたいなことにはなりませんでしたが、普通の感覚で言えば十分以上に距離がありました。
 私の場合、かえってそれくらい離れてくれた方がありがたいので、すこしほっとします。
 しかしきちんと整えられた部屋、食器やフォーク・ナイフが並べられた食卓に、バスタオル一枚というのは落差が激しすぎて、恥ずかしさも倍増です。
 この一週間、自分にあてがわれた部屋で食事は取っていたので、これだけ広く豪勢な部屋での食事は、羞恥心が改めて沸き上がってきます。

「キヨズミ嬢はお酒は飲めるのか?」

 状況を意識しないようにしようと、私はオルフィルドさんの問いに答えます。

「一応、飲める年齢ではありますね。ただ、さほど強くはありませんので……嗜む程度です」

 そういえばバスタオルにとってお酒による酔いはどういう扱いになるのでしょうか。
 この一週間、バスタオルをつけたまま食べたり飲んだりしていますが、いまのところ体に異常はありません。
 もしバスタオルの加護が食事によって得られる栄養なども『外部からの影響』として弾いてしまうのであれば、とっくに影響が出ているはずですし、少なくとも栄養は問題なく取れているはずです。
 そうなると毒物はどうなのか。アルコールのように毒のようだけど毒とは言い切れないものはどうなのか。
 いろいろと試そうにも試せないものが多く、いまだ加護の全容は把握できていませんでした。

「ならば、食前酒くらいなら問題なさそうだな。我が国自慢の酒がある」

 オルフィルドさんが言いながら手を叩きます。
 嫌な予感、と私が思う暇もなく。

 続々と給仕の方々が現れました。

 男性女性、それぞれ満遍なく存在し、彼ら彼女らは一様にオルフィルドさんを見て、そして私を見て――ひと瞬き。
 非常に訓練された方々なのか、表だっては何も言わず、何も表さず、淡々と食事を並べたりお酒をついでくれたりしましたが、明らかに視線が向けられていました。
 硬直した私をどう判断したのか、オルフィルドさんは安心させるように言います。

「ああ、この者たちは昔から我が王家に仕えてくれている信頼のおける者たちだ。キヨズミ嬢のことや、ここで交わされる会話を外にだすようなことはないから安心してくれ」

(そこじゃないんです!!!)

 哀れみというべきか、好奇というべきか。
 そういった視線がこの格好でいる私に集中することが、どれほど恥ずかしいことか。
 そのことを訴えるべきかと思いましたが、裸同然の格好でいなければならないという話に持って行ったのは私自身です。
 すべてを暴露して、いっそバスタオルを手放してでも、保護してもらう形にしていれば、こんな羞恥を受けることはなかったでしょう。
 耐えるしかないのです。
 私は努めて料理に集中して、周りのことを気にしないようにしましたが、皿を下げられるとき、水を注いでもらうとき、給仕の方が接近してくるので、とても無視し切れるものではありませんでした。

「本当に酒に弱いのだな。顔が真っ赤ではないか」

 そっちじゃないです。
 ツッコミたかったですが、これは私とオルフィルドさんの感覚の違いなので無闇に指摘しても理解は難しいでしょう。
 オルフィルドさんにとって、給仕の人たちというのは空気と同じ感覚なのでしょうから。
 庶民と王族には感覚の違いがあるということを、私との会話でオルフィルドさんが早めに学んでくれることを祈りつつ、私は羞恥の中で食事を続けるのでした。

つづく
更新キタ━(゚∀゚)━!
しかし聖羅成人だったとは...てっきり18くらいかと思ってました。そしてリューさん...大仰な名前に違わずヤバい能力持ってたんですね。
それでは次回も楽しみにしております。
[ 2018/10/13 13:27 ] [ 編集 ]
Re: タイトルなし
> 更新キタ━(゚∀゚)━!
> しかし聖羅成人だったとは...てっきり18くらいかと思ってました。そしてリューさん...大仰な名前に違わずヤバい能力持ってたんですね。
> それでは次回も楽しみにしております。

コメントありがとうございます!
……ここだけの話、19歳の大学生と設定しておきながら、普通に間違えました!-w-; 
20歳になったばかりということでひとつーwー
聖羅は語っている言葉ほど実感していませんが、この世界の人間にとってリューさんは文字通りの死神です。
軍規にさえ「敵前逃亡は死罪。ただし死告龍が相手の時は除く」みたいなことが平然と書かれていたりします^w^
[ 2018/10/14 09:04 ] [ 編集 ]
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
この記事のトラックバックURL

カウンター
プロフィール

夜空さくら (旧HN:黒い月)

Author:夜空さくら (旧HN:黒い月)

はじめに
当ブログは露出・羞恥系の18禁小説ブログです。関連の同人誌・版権物のレビュー、個人的な語りなども書きます。18歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。

『このブログについて』
・当ブログについてです。

『twitter』
・管理人のツイッターです。取りとめのないことを呟いています。

管理人運営の姉妹ブログ一覧
『黄昏睡蓮』(猟奇・グロ系)
『白日陰影』(箱詰・拘束系)
『夕刻限界』(時間制御系)
『極夜天蓋』(催眠・改変系)
『東雲水域』(性転換交換系)
『星霜雪形』(状態変化系)
『異種祭祀』(異種姦系)

『pixiv』
・イラストは全て3Dカスタム少女を使用し作成して投稿しています。基本は小説の投稿です。

『ノクターンノベルズ』
・一部の小説をこちらでも掲載しております。
カテゴリ