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黎明媚態

露出系、羞恥系の18禁小説を書いています。関連の同人・版権作品のレビューも書きます。18歳以下の閲覧禁止。

バスタオル一枚で異世界転移 第二部 第5章 2


 清澄聖羅は、リューらしき小さなドラゴンを抱えて困惑していた。
 不可思議な森の中を模した魔界から脱出するべく、隠されていた扉を発見したまではよかったものの、その扉が開くと同時に小さなリューが飛び出して来たのだから、彼女が困惑するのも無理はない。
 普段のリューは人外のドラゴンらしい恐ろしげな相貌をしているが、その小さなリューは大きさによる威圧感の差もあるのか、どことなくあどけない印象を受ける風貌をしていた。

「あの、リューさん? これはいったいどういう……」

「きゅるるる~」

 聖羅の問いかけに答えず、リューは長い首を伸ばして聖羅の首筋にすり寄る。飼い主に懐いている大型犬がするような動きだった。
 本来、リューの体表面は鱗によって覆われており、もしも普通の人間の柔肌に対し、いまのようにすり寄れば、大変グロテスクな光景になっていただろう。目の粗いヤスリを擦りつけられるようなものだ。
 幸い聖羅にはバスタオルの加護がある。彼女の体はあらゆるものから守られていた。
 ゆえに、本来なら怪我をするような行為をリューにされても、くすぐったいだけで済んでいた。

「あ、あの、くすぐった……ひゃぁ! な、舐めないでください! ちょっ、そこはダメです!」
 
 首筋にすり寄るだけでは満足出来なかったのか、リューは聖羅の頬や首筋を舐め始めた。
 本来のドラゴンの舌は、鱗ほどではないにせよ、ざらざらとした感触のものだが、加護による影響のために、聖羅には普通の人間の舌に舐められているような感覚になっていた。
 いかにも動物的な動きをするリューに『そういう』つもりはないのだろう。
 とはいえ、聖羅がくすぐったいことに変わりはなかった上、危険なところを舐めそうになったため、聖羅は泡を食ってリューを抱き上げていた腕を伸ばし、その場所を舐められないようにしていた。
 一方、そんな聖羅とリューの様子を傍で見ていたルレンティアとアーミアは、困惑気味の顔を見合わせている。

「うーん、あーみん、これは、どうしたことかにゃあ?」

「……わからない。けど、そのドラゴンが死告龍であることは間違いない……と思う」

「ボクもこのドラゴンが死告龍だとは思っているにゃ。でも、それにしては気配も魔力も小さすぎないかにゃ? まるで……幼くなったみたいだにゃ」

 強大な魔力を持つ死告龍。
 その前に立つだけで気分を悪くしてしまっていたルレンティアだったが、いまは特にそういったことは感じないのか、余裕を持って――聖羅の体越しではあったが――小さな死告龍を眺めていた。
 そんなルレンティアの言葉に、アーミアは同意して深く頷く。

「魔界を生んだ魔物が、それによって弱体化……いや、幼体化するなんて話は聞いたことがない」

 魔界は魔物の影響を受けて自然にできるもので、魔物が作ろうとして作るものではない。
 その仕組みを考えれば、魔物が魔界のために力を使っているわけではない以上、魔界が生まれたからといって魔物が弱体化するわけがない。
 しかし現実として、死告龍らしきドラゴンは幼体と化している。

「……聞いたことはないけど、これだけ規格外の魔界を生み出したことから考えると、あり得なくはない。もしかすると、魔物が肉体を基礎に用いることで、ここまでの規模の魔界を短期間で、人工物の中にでも生み出すことができるようになるのかも」

「あり得そうな話にゃけど……それを魔物がやる意味があるのかにゃあ? 人間にしてみれば脅威だけど、そこまでして魔界を生み出す理由は、魔物にはないと思うんにゃけど」

 ルレンティアはそう呟きつつ、アーミアに意味ありげな視線を送った。

「うーん。結論を出すのは早すぎるかにゃ?」

 その言外に含まれた意味に、アーミアは頷く。

「早すぎると思う。まずはこの魔界のことをもっと調べるべき」

 魔界化への基本的な対処法は、その魔界を生み出した魔物を倒すというものだ。
 幼体化している死告龍であれば、あるいは倒すことも可能かもしれない。人類にとっては不倶戴天の敵である死告龍を倒す好機ではあるのだ。
 それを考慮に入れたふたりのやり取りであった。
 しかし同時にふたりは、様々な面で規格外な魔界であるため、その主である死告龍を倒してしまうことでより事態が深刻化することも考えていた。
 死告龍を倒す千載一遇の好機なのは間違いないが、その結果起こるかもしれない悲劇を考えると、ふたりの姫は慎重にならざるを得なかったのだ。

「あ、あのっ! おふたりで話してないで、助けてくれませんかっ!」

 ふたりがそんな話をしていることに気づいていない、正確にはリューにじゃれつかれていて余裕のない聖羅は、二人に向けて助けを求める。
 そんな聖羅の救難信号に対し、ルレンティアとアーミアは苦笑いで応じた。

「ごめんにゃ~。ボクたちが引き離そうとしたら、たぶん噛まれるから無理にゃ~」

「死告龍様はセイラさんにしか懐いてないから……がんばって」

 もし普通の犬猫であったなら、ルレンティアとアーミアも多少の怪我は覚悟の上で聖羅を助けられたかもしれないが、相手はドラゴン、それも死告龍である。
 幼体化しているとはいえ、死告龍に噛まれれば痛いでは済まない。手の先がなくなるような危険は冒せなかった。
 その理由は聖羅にもわかるため、それ以上強く求めることは出来なかった。

「そんなぁ……わひゃっ! リューさん、だめですってば!」

 また頬を舐めようとするリューを、聖羅はキッと睨み付けることで牽制する。
 滅多に聖羅が浮かべないその表情に驚いたのか、リューは振り回していた尾を力なく垂らし、首を竦めて、翼が力無く項垂れた。
 しょぼーん、という擬音が耳に聞こえてきそうなほど明瞭な感情表現に、聖羅は罪悪感を覚えて呻く。

(私は悪くない……はずなんですけど、なんでしょうこれ……なんだか、私の方が悪いことをしているような気に……)

 叱った子供が想定以上に落ち込んでしまって、子供に非があったとしても気まずく感じるような、そんな気持ちに聖羅はなっていた。
 そんな聖羅の背後に、ルレンティアとアーミアが立ち、そっと肩を叩く。

「せいらんせいらん、子供を叱ったときはその後が大事にゃ」

「もう怒ってないよ、と行動で示してあげるべき」

 さりげなく聖羅を盾にしつつではあったが、その助言に聖羅は感謝した。
 力無く尻尾を揺らすリューを、聖羅は抱きしめる。

「もう、怒ってないですから、ね? ちょっと静かに、大人しくしていてください」

「きゅるる……」

 相変わらずすり寄っては来るものの、必要以上に舐めることはなくなった。
 ひとまずリューが落ちついたことを感じ、聖羅は改めてルレンティアとアーミアに向き直った。

「それで、あの、おふたりはどうお考えですか?」

「そのドラゴンの幼体が死告龍様であることは、ほぼ間違いない、と思う」

「弱くなっているとはいえ、魔力の気配は死告龍様のままだしにゃ」

「……私はこの格好の時、リューさんやヨウさんの声は聞こえなくなってしまうのですが、いまのリューさんの声はおふたりにも聞こえませんか?」

「いや、完全に声が聞こえないわけじゃないにゃ。ただ、話すことはできなさそうなんだにゃ」

「どういうことですか?」

「死告龍様はずっと『せいら、せいら』と言っているの」

「まさに、言葉を覚えたての子供って感じだにゃ。性格や記憶はそのままに、知能だけ幼体化した……ってことなのですかにゃ?」

 ルレンティアが小首を傾げて問いかけるものの、リューは相変わらず聖羅に夢中で反応しなかった。

「うーん。確かに、言葉がわかっている様子はありませんね」

「しかし、困ったにゃあ。死告龍様と会えればなんとかなると思ったんだけどにゃ」

「これでは、どうしようもならない。とにかく、この魔界から出ないと」

 三人はそう結論を出し、改めて魔界からの脱出を目指して行動し始める。
 まずは、リューの飛びだしてきた扉の先を確かめる。
 リューが飛びだしてきたその扉の先は、広々とした石造りの廊下だった。まるで城の廊下のようにも見えたが、明らかに広さが違う。
 道の先が霞むほど遠くまで続いていた。

「こりゃまた広い空間だにゃあ……」

 もはや呆れるしかないといった様子で、ルレンティアは深々と溜息を吐く。
 それは聖羅やアーミアも同感で、疲れた様子の顔を見合わせた。

「これも結界術の一種のようだけど……こんなに広げられるなんて」

「境界線にさしかかったら、またさっきみたいにぶつかってしまうのでしょうか」

 先ほど急に頭をぶつけたことを思い出したのか、聖羅は手を恐る恐る前に出す。
 怯んでいる聖羅の様子に、アーミアは「大丈夫」と声をかけた。

「さっきは油断していたから見逃したけど、今度はそんな見逃しはしない。境界線にさしかかったらちゃんと教えるから、セイラさんは心配しなくていい」

「その辺りはあーみんにお願いするにゃ。ボクも気をつけるけど、ボクはアーミンほど結界術に長けてないからにゃあ」

「ルーさんの得意な魔法はどういったものになるのでしょうか?」

 何気なく、聖羅はそうルレンティアに尋ねた。
 アーミアが結界術というものに長けているというのは、会話の流れで把握したが、ルレンティアの得意な魔法については聞いていなかった。
 その聖羅の問いに対し、ルレンティアは少し考えるような間を置く。

「そうだにゃあ……一通り覚えてはいるし、身体強化系の魔法は意識して習熟したけど……一番得意となると、感知系ってことになるのかにゃ」

「ルレンティアのそれは、魔法なのか種族としての性質なのか、判断に困るところがある」

 獣人であるルレンティアはそもそもが勘働きの優れた存在だ。
 ゆえに、例えば感知系の魔法を使って得た情報から閃きを得て、その閃きに沿って効率的に感知魔法を使用する、と言ったことも出来る。
 感知系の魔法が得意、といえばその通りなのだが、そうだと断言するには少々種族としての特性が大きいこともあり、一概にはいえないというのが実際のところだった。

「テーナルクさんやバラノさんはどうなのでしょう?」

 魔界に飲まれているであろう、代表的なふたりについて、聖羅は口にする。
 その疑問に、ルレンティアとアーミアは揃って唸った。

「バラノについては……ボクもよくしらないにゃあ」

「策略家であり謀略家であるとは聞いている。セイラさんみたいに全く魔法が使えないというわけじゃないけど、あまり得意ではないみたい」

「てーなるんに関しては……ボクたちから言ってもいいのかにゃ?」

「構わないと思う。本当にダメなことはわたしたちには言わない」

 聖羅からすると気の置かないやり取りで仲の良い印象の三人だが、国を背負う立場の者同士、互いに言えないことや隠していることも多いのだ。

「じゃあ話しちゃうにゃ! てーなるんもボクと同じで、一国の姫という立場だから、一通りの魔法は覚えているにゃ。じゃないと魔法による暗殺とか怖いからにゃ」

「わたしは同じ姫でもちょっと違うけど、王族であるアーミアが優先しているのは、なによりも生き残ること。不意の襲撃にはもちろん、毒物などへの対策も万全なはず」

「対策、ですか?」

「わたしやルレンティアも活用してるけど、負傷したら自動的に回復魔法を唱えてくれるマジックアイテムを身につけたり、毒物をあらかじめ摂取して体を慣らしておいたりとか」

「致死性の猛毒であっても、ある程度なら耐えられるんじゃないかにゃ? ボクもそういう訓練は積んでるしにゃあ」

 平然と交わされる会話の内容に、普通の一般人でしかない聖羅は唖然としていた。
 そんな聖羅の反応を楽しむように、ルレンティアは締め括る。

「だから――麻痺毒程度なら、全然利かないにゃ」




 天井近くに展開された、蜘蛛の巣にかかった哀れな犠牲者たち。
 巨大な蜘蛛の糸によって全身をぐるぐる巻きにされ、身動き一つ取れない状態で巣に引っかけられている者達。
 微かに呻き声はするものの、体を動かす余力はないのか、蜘蛛の巣が揺れすらしない。
 その数は十とも二十とも見え、巣の主たる大蜘蛛が、新たな犠牲者をふたつ追加する。
 蜘蛛は巣を埋め尽くす犠牲者たちの塊を満足そうに確認したあと、さらなる獲物を探して再び巣の外へと出て行く。
 後には身動ぎひとつできない犠牲者たちが、かすかに呻く声だけが残り――

 そのうちのひとつが、内側から引き裂かれる。

 白く細い腕が糸によって作られた繭を突き破り、その掌に炎を灯した。
 炎はその腕の突き出した繭だけに燃え広がり、その者の体を覆っていた糸をあっという間に焼き尽くす。
 繭の中から姿を現したのは、背中に穴が開き、引き裂かれたのか、至るところがボロボロになったドレスを身に纏った女性。

 ルィテ王国第一王女、テーナルク・ルィテその人であった。
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